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研究レポート化粧品への応用

■皮膚の構造

皮膚は、表皮、真皮、その下の皮下脂肪からなります。表皮は厚さがわずか0.2mm程度。そこに最も多い細胞がケラチノサイトですが、表皮の最下部で分裂したケラチノサイトは、上に押し上げられていきながら、細胞の形態を変えていき、下から基底層、有棘層、顆粒層、角質層と重なっています。一番上の角質層細胞は、すでに死んでいる細胞で、この角質細胞の隙間を皮脂が埋めています。角質細胞と皮脂は、ちょうどレンガとモルタルのような関係で、肌の一番上の大事なバリアとなっています。その角質層は、古くなってバリア機能が悪くなると「垢」となって剥がれ落ちます。表皮の細胞が全て入れ替わることをターンオーバーと呼び、健康な肌では、1カ月程度で入れ替わります。

表皮内には、ケラチノサイトのほか、マクロファージとよく似たランゲルハンス細胞や、免疫・炎症の調節をするT細胞もいます。

ところで、表皮顆粒層の第2層目には、タイトジャンクションという構造があって、隣り合う細胞同士の間隙をぴったりシールしています。皮膚では、このタイトジャンクションがあるおかげで、外部からの異物の侵入が防がれ、内部からの水分の蒸散も防がれています。皮膚というのは、簡単に分子が出入りできる構造にはなっていないのです。

図:表皮の構造
表皮の構造

■肌免疫は肌の美しさと密接に関係

外界と接する皮膚は、腸管と同じく免疫器官といっても差し支えありません。外界からの刺激が最も直接的に入る器官であるがゆえに、恒常性を維持するためのシステム(=免疫)が必要です。ですから皮膚にはいろいろな細胞がいますが、どの細胞も、多かれ少なかれ免疫の一翼を担っています。そしてこれらの皮膚細胞は互いに情報交換しながら、肌の健康を維持しています。

それでは、肌の美しさと免疫は関係するのでしょうか?大いに関係します。まず、古くなった細胞や老廃物を除去するのも免疫の役割です。新しい細胞が生まれるのを助けるのも免疫の役割。紫外線、熱、物理的損傷で傷ついた肌を治していくのも免疫の役割。また傷口から侵入する病原菌を排除するのも免疫の役割です。つまり、皮膚の免疫は、肌のクリアランスを高め、ターンオーバーを促進し、ヒーリングしていく働きがあり、肌の美しさと密接に関係しています。

図:皮膚の健康と自然免疫
皮膚の健康と自然免疫

 

図:皮膚の免疫力をあげるということは・・・
皮膚の免疫力をあげるということは・・・

■LPSと肌免疫

LPSは自然免疫を最も効率的に活性化できる分子です。分子内に、皮脂に馴染む脂質を持っており、そのため表皮の角質層に浸透します。ただし、先に述べたように、角質層の下の顆粒層にはタイトジャンクションがあって、多くの物質はそこから下に通過できません。LPSも例外ではなく、タイトジャンクションの下には行かないと考えられます。けれども、表皮に最も多いケラチノサイト、角質層に樹状突起を伸ばしているランゲルハンス細胞、炎症を抑制的に調節するTreg細胞は、いずれもLPSの受容体を持っていて、LPSに反応します。ですから、LPSはタイトジャンクションの下に行かなくても、皮膚の免疫系に働きかけることができるのです。

図:皮膚細胞に働きかけるLPS
皮膚細胞に働きかけるLPS

■LPSの肌での生理的作用

LPSが皮膚の細胞に働きかけると、皮膚の健康を保つための生理的作用が起こります。例えば、ケラチノサイトでは、バリア機能に重要なフィラグリンや、抗菌物質が誘導されます。またランゲルハンス細胞では、アレルギーに関係するケモカインの抑制が起こり、炎症を抑制的に調節するTreg細胞は炎症を抑制する性格に変化します。さらに、真皮のマクロファージが活性化されると、真皮の繊維芽細胞の増殖およびヒアルロン酸の合成が高まります。これらの生理的作用が活発化することで、肌の免疫力、ひいては肌の美しさが維持されます。また、皮膚の免疫に働きかけるLPSには、アトピー性皮膚炎の改善や火傷の創傷治癒の効果も見られます。

図: 皮膚におけるLPSの生理的作用
皮膚におけるLPSの生理的作用

 

※参考文献

・LPSはランゲルハンス細胞に作用し、アレルギー性ケモカインの発現を抑制
 J invest Dermatol 122: 95-102 (2004)

・LPSが炎症抑制性Tregを増殖させる
 JEM 197:403-411 (2003)

・LPSはTergを介して、好中球の炎症作用を抑制する
 Immnology 218: 455-464 (2013)

・LPSはTergを介して、好中球の活性酸素を抑制する
 J immunol 177: 7155-7163 (2006)

・LPSがケラチノサイトに作用してバリア機能に重要なフィラグリンを誘導する(論文内にデータ)
 J Invest Dermatol 13 : 59-66 (2011)

・LPSはケラチノサイトに作用して、生体内抗菌物質であるβディフェンシンを誘導する
 J dermatol Sci 27: 183-191 (2001)

・LPSは表皮細胞で、皮膚の防御作用を高める一酸化窒素の合成酵素の発現を高める
 Nitrc Oxide 10: 170-193 (2004)

・LPSのシグナルを伝えるTLR4は皮膚の創傷治癒に必須である
 J Invest Dermatol 133: 258-267 (2013)

・LPSのシグナルを伝えるTLR4が欠損したマウスではアレルギー性の皮膚炎が悪化する
 J Immunol 191: 3519-3525 (2013)

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