ニュースリリース

─1990年8月21日 日本経済新聞夕刊記事─

小麦粉がヘルペスに効果
帝京大・千葉製粉 動物実験などで確認

決定的な薬のないヘルペス感染症の治療に小麦粉のエキスから精製した物質が有効であることが分かり、帝京大学生物工学研究センターと千葉製粉などの共同研究グループが21日、札幌市で開かれた日本薬学会で発表した。患部に塗るだけでヘルペスの症状が消えるという。この物質は人間の体が自身で健康を維持しようとする機構を手助けするとみられ、糖尿病や骨粗鬆(しょう)症などにも有効なことが動物実験などで確認された。疾病の治療薬や、機能性食品などへの応用が期待できるとしている。

小麦粉から精製した物質は、糖と脂肪の分子が結合した糖脂質。研究グループはこの糖脂質が体内のマクロファージという免疫をつかさどる細胞の働きを活性化することを発見した。マクロファージは、炎症を制御したり、ガン細胞やウイルスを攻撃するたんぱく質をつくり、病気の治療に関与していることが知られている。

そこで、この物質の抗ウイルス作用に着目、帝京大学医学部の協力を得てヘルペスウイルスの感染症の治療を試みた。従来の薬を試みても効かなかった人を含む15人の患者の患部に精製物質を塗ったところ、全員症状が消えた。これまで見かけ上治ってもウイルスが潜伏していてすぐに再発するケースが多かったが、半年経た現在再発例はないという。研究グループの杣源一郎帝京大助教授は「完治したかどうかはさらにくわしく調べる必要がある」としている。

ヘルペス感染症はウイルス感染の病気で、赤くはれたりただれたりして激しい痛みをともなう。女性に多く、成人女性の約7%が患者ともいわれており、有効な治療薬が望まれていた。

また、非遺伝性の糖尿病を自然に発症するマウスに精製物質を注射したところ、100%のマウスが糖尿病を発症しなかった。精製物質を注射しないマウスは40%が発症した。二人の糖尿病患者に対し、皮膚吸収性の高いももの内側に精製物質を塗ったところ、血糖値が下がったという。

そのほか、骨粗鬆症やリウマチ、関節炎、胃かいようなどにも効く可能性が示されており、研究グループは「天然のもので副作用が少ないうえ、対症療法でなく体の内側から治療するので、幅広く利用できるのではないか」とみている。

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