ニュースリリース

─1993年2月13日 毎日新聞夕刊記事─

小麦粉や土壌細菌から抽出した物質
禁断症状抑え、薬物依存予防

動物実験で効果を確認
帝京大グループ

小麦粉や土壌細菌に含まれる物質にモルヒネ依存症の禁断症状を抑えたりコカインの精神依存を予防する作用があることを、帝京大生物工学研究センターの杣源一郎教授、奥富隆文助手らのグループが動物実験で突き止めた。深刻な社会問題となっている薬物依存症の治療薬や予防薬の開発に手掛かりを与える成果で、3月に大阪で開かれる日本薬学会で発表される。

モルヒネやコカインの依存症になると、体の復元力と関係の深い免疫細胞、マクロファージの活性が下がることが知られている。

杣教授らは、マクロファージの働きを高める物質がさまざまな難病に有効ではないかと考えて各種の食物を調べたところ、小麦粉の中にそのような物質が含まれていることを発見。精製した結果、リポ多糖(脂質と多糖の複合体)の一種でLPSと呼ばれる物質であることを突き止めた。

小麦粉のLPSは微量しか抽出できないため、杣教授らは同様の性質を持つLPSを小麦に寄生する土壌細菌から抽出して精製。薬物依存症に有効かどうかを動物実験で確かめた。

京都大薬学部の佐藤公道教授と協力、モルヒネ依存症に対する効果を調べた。モルヒネをマウスに連続投与して依存症にした後LPSを注射し、モルヒネの禁断症状を誘導するナロキソンを投与。比較のために依存症マウスの別のグループには、LPSを投与せずにナロキソンを投与した。

この結果、LPSを投与していないグループには禁断症状の目安となる過敏な跳躍運動が現れた。LPSを投与したマウスの場合は禁断症状が抑えられた。

次に、星薬科大の鈴木勉講師のグループと協力し、コカインの精神依存症に対する効果を調べた。

白と黒の箱を用意し、一方だけでコカインを投与するという条件付けをラットに実施。コカイン投与をやめるとラットはコカインが与えられた箱のほうにばかり行き、精神依存を示した。

ところが、コカイン投与前に腹こう内にLPSを投与しておくと、ラットはどちらの箱にも行き、精神依存が起きなかった。

杣教授は「モルヒネ依存症の治療やコカインの精神依存の予防にLPSが使える可能性が高い。アルコール依存症に対する効果も期待できる」と話している。

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