ニュースリリース

─2009年4月16日 日経産業新聞記事─

新生命医療
第3部 免疫活かす技術(下)

アトピー根治に道
自然免疫応用技研 病原体食う細胞応用

自然免疫応用技研は小麦などに共生するパントエア・アグロメランスと呼ぶ菌が持つ糖脂質を貪食細胞の活性化に使う。パントエア菌を培養してから抽出した糖脂質を食品などに混ぜて摂取。すると糖脂質は口や胃の粘膜にある貪食細胞の表面にあるセンサー「To11様受容体(TLR)」と結びつき、貪食細胞の働きを活発にする。

「総合的な免疫システムを築き上げれば、がんにとどまらず幅広い病気に効果が期待できる」。河内代表はこう話し、医療品への応用も視野に研究を急ぐ。実際、ある病院でアトピー患者にパントエア菌由来の糖脂質を摂取してもらったところ、ほぼ八割で症状改善が確かめられたという。

動物実験では高脂血症や胃潰瘍(かいよう)といった症状にも一定の効果があった。総合力を持つ医薬品の開発に先立ち、糖脂質を食品、化粧品会社などに供給する事業に着手した。

感染経験のある病原体を覚え、再感染を防ぐ「獲得免疫」はワクチンや抗体医薬で使われている。ただ、自分と異物の違いを見つける仕組みで、正常細胞が変異したがんの認識が難しいといった課題を抱える。

一方、自然治癒力を高める試みは大手製薬会社の間でも始まった。大日本住友製薬は気管支ぜんそくやアレルギー性鼻炎などの新薬候補物資について、安全性を確かめる第一相臨床試験(治験)を開始した。

現代社会では衛生環境が整い、病原体に触れる機会は減った。センサーが攻撃対象を見失い、本来は標的にならない相手を攻撃してしまう──。これがアレルギー性疾患につながると考えられる。

大日本住友は新薬候補物質で微生物などの擬似感染状態を作れば、TLRに免疫反応を起こさせる効果があり、偏った免疫バランスを正して症状を緩和できるとみる。免疫機能が本来の力を取り戻せば、薬剤投与を続けなくても症状が抑えられると期待する。

三重大学の珠玖洋教授らの研究グループとタカラバイオは共同で、白血球の一種であるリンパ球の仲間、T細胞を使ったがん免疫療法の研究開発に取り組んでいる。遺伝子組み換え技術が生んだ“改造白血球”を治療のため患部に送り込むというコンセプトだ。

患者のT細胞に、がん細胞の表面にある特定のたんぱく質に反応する「T細胞受容体」と呼ぶ別のたんぱく質を作り出す遺伝子を組み込む。受容体が発現すると、がん特有のたんぱく質だけに強く反応するため、T細胞ががん細胞を狙い撃ちできるようになる。

安全性と効果については動物実験を終えた。ヒト対象の臨床研究に乗り出すため、厚生労働省に実施許可も申請している。

臨床研究の先には、遠隔地の医療機関でも治療が受けられるような体制を作る壮大な構想がある。がん患者の血液を50〜100ミリリットル採取、三重大やタカラバイオに送ると、血中のT細胞にT細胞受容体の遺伝子が組み込まれて返送される。がん攻撃の性質を持ったT細胞を含む患者の血液を体に戻すところから「治療」が始まるというわけだ。

免疫機能を自在に操る治療法を確立する研究開発に終わりはない。

=おわり

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第3部は村松進、銀木晃、吉野真由美、林さや香、新沼大が担当しました。

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