ひげ博士の最新免疫学講座

第19回 衛生仮説の話(2012年6月 No.19より)

皆さん。ひげ博士じゃ。以前に衛生仮説の話をしたのは覚えておるかのう(No. 3)。ミュンヘン大学の研究で、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー性疾患の環境因子としては、糖脂質(LPS、エンドトシキン)がもっとも強く逆相関を示したこと報告したのじゃったな。今日は、その拡張バージョンをお話ししよう。
厚生労働省が特定疾患に指定している炎症性腸疾患(IBD)、クローン病や潰瘍性大腸炎はアレルギー性疾患と同じように年々患者数が増加しておる。じつは、幼児期の細菌の暴露量はIBDの発症とも逆相関があることが報告されている。そのメカニズムを示唆する論文がサイエンスの4月号に発表されておるので紹介するとしようかのう*。
細菌の全くいないマウスは、喘息と潰瘍性大腸炎の発症誘導実験で増悪化するが、これにはアレルギー発症と関連することが知られているT細胞の一種iNKT細胞**が関係しておる。赤ちゃんは母胎の中では無菌状態じゃが、生まれ落ちてすぐに細菌と出会い常在性細菌叢(フローラ)が口、皮膚、腸などで作られていく。しかし、除菌殺菌と、細菌のいない生活環境を作り上げているため、良いフローラがうまくできずiNKTを制御できないと考えられるのじゃ。どんなフローラが良いのかは、まだこれからの課題じゃが、これからは除菌だけでなく、うまく細菌とのつきあい方を学ばないといけないようじゃのう。

*: Torsten Olszak, et al., Science, 336: 489-493, 2012. 気管支や腸管において無菌マウスは通常のマウス(細菌のいる状態)に比べてiNKT細胞が数倍多い。無菌マウスを新生時期に細菌のいる状態に戻すと、iNKTは減少するが、大人になってからでは元に戻らない。 **: インバリアントナチュラルキラーT (iNKT)細胞はCD1d拘束性で、樹状細胞やB細胞を活性化する能力がある。

出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター

 

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