ひげ博士の最新免疫講座
目次
- 第40回 小脳の話
- 第39回 肌とHSPの話
- 第38回 運動の話
- 第37回 傷の治りの話
- 第36回 筋肉の話
- 第35回 腸内フローラの話
- 第34回 歯周病菌の話
- 第33回 抗生物質とアトピーの話
- 第32回 抗炎症の仕組みの話
- 第31回 人工甘味料と腸内細菌叢の話
- 第30回 食事と抗菌作用の話
- 第29回 抗生物質の話
- 第28回 ステロイドの話
- 第27回 高血圧の話
- 第26回 iPS細胞の話
- 第25回 受精卵の話
- 第24回 腸内細菌の話
- 第23回 神経細胞の話
- 第22回 アルツハイマーの話
- 第21回 発熱の話
- 第20回 がん免疫の話
- 第19回 衛生仮説の話
- 第18回 乳酸菌との話
- 第17回 ノーベル賞の話
- 第16回 放射線の話
- 第15回 肝臓の話
- 第14回 火傷の話
- 第13回 抗菌物質の話
- 第12回 植物の話
- 第11回 腸の話
- 第10回 骨粗しょう症の話
- 第9回 テロメアの話
- 第8回 免疫進化の話
- 第7回 貪食の話
- 第6回 耐性菌の話
- 第5回 マクロファージの話
- 第4回 メタボの話
- 第3回 アレルギーの話
- 第2回 風邪予防の話
- 第1回 自然免疫の話
第20回 がん免疫の話(2012年9月 No.20より)
皆さん。ひげ博士じゃ。がんを体から排除するには最強の免疫細胞である細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導できればしめたものじゃ。CTLは特異的にがん細胞を殺す事が出来るのじゃが、そのためには、いわゆるがん免疫を誘導する必要がある。がん免疫の原点はといえば、自然免疫が、がんを異物として認識して処理することにある。そこから異物情報がT細胞やB細胞に渡され、がん免疫が誘導されるのじゃ。そこの詳しいメカニズムがわかっていなかったが、最近の論文*で、ナチュラルキラー細胞とマクロファージの共同作業が重要なことが示されたので、皆さんに紹介しよう。
T細胞もB細胞もいない免疫不全マウス(RAG欠損)と、さらにNK細胞もいない重度免疫不全マウス(RAGとIL-2γ鎖欠損)にがん細胞(メチルコラントレン誘導)を移植することでNK細胞の役割が見えて来たのじゃ。NK細胞がインターフェロン-γでマクロファージを活性化し、がんを攻撃するマクロファージ(M1型)とがん抗原提示マクロファージを誘導するということじゃ。NK細胞とマクロファージが強力な自然免疫の共同戦線を作ることで、がん免疫を誘導することが出来る、いわば戦友ということじゃな。
*: Journal of Experimental Medicine, 2012, Aug 27 PMID 22927549
出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター