免疫力アップに効果があるとしてLPSが注目されています。LPSとは一体どのような成分で、どのようなはたらきをするのでしょうか?LPSの正式名称、そしてLPSを摂取することで得られる効果を紹介します。
この記事の目次
LPSとは何なのか
LPSはリポポリサッカライドの略称
LPSは「リポポリサッカライド(Lipopolysaccharide)」の略称で、日本語では「糖脂質」や「リポ多糖」と呼ばれます。名前の通り糖と脂質が結合した構造をしており、糖部分は水溶性、脂質部分は脂溶性であることから、水と油の両方に溶ける性質を持っています。ただし通常は、水の方によく溶けます。
LPSはグラム陰性細菌の成分
LPSはグラム陰性細菌という種類の細菌の外膜を構成する成分です。グラム陰性細菌は体の外側を細胞膜、細胞壁、外膜の3層で覆われており、そのもっとも外側にある外膜にLPSの脂質部分が埋め込まれるようにしてくっついています。
細菌は10万種以上存在すると言われており、それらは細胞壁の構造によってグラム陽性細菌とグラム陰性細菌の2種類に大きく分類できます。グラム陰性細菌には多くの種類がいますが、例えばお酢を作る酢酸菌やテキーラを作るザイモモナス菌が、病原菌としてはコレラ菌やサルモネラ菌などが知られています。また、LPSが入ったサプリメントなどの健康食品では、ライ麦パンなどに含まれるパントエア菌のLPSが利用されることが多いです。これらの細菌が持つLPSは口から食べても皮膚に塗っても安全であることが確認されています。
LPSは私たちの身近にある
LPSという単語は多くの人にとって聞き慣れないものであり、日常生活とはかけ離れた存在であると考えてしまいがちです。しかし、LPSは私たちのごく身近にある物質です。
LPSが多く存在する場所として、まず土の中があげられます。土の中には多くのグラム陰性細菌がおり、窒素やリンを植物が栄養として利用しやすい形に変換するなどの役割を担っています。また、土の中のグラム陰性細菌は土に根を下ろして育つ植物にもつきやすく、野菜や穀類、海藻に多く含まれます。これらの食材を調理する過程でグラム陰性細菌は死んでしまいますが、LPSは壊れたりせず、食事によって人間の体内に取り込まれます。
また、人間の身体にもLPSはあります。これは食事によって取り込まれるものだけではありません。腸内や皮膚にはさまざまな細菌が棲んでおり、その中にグラム陰性細菌も少なからずいるのです。腸内細菌や皮膚の細菌は、病原菌が増殖するのを防ぐなど人間にとって有用なはたらきをしています。
LPSは免疫力アップに有効
免疫は私たちの身体を異物から守るシステム
LPSは免疫力アップに有効とされる成分です。では、そもそも免疫とは何なのでしょうか。
免疫は細菌やウイルスなどの異物から私たちの身体を守るシステムです。病原性の細菌やウイルスなどに感染すると、病気を引き起こしたり身体に不調をきたす恐れがあります。それを防ぐため、私たちの身体には異物の侵入を防いだり、侵入した異物が体内で感染を広げるのを防ぐシステムがもともと備わっています。
私たちの身の回りには多くの細菌やウイルスがいますが、それらの大部分に感染せずに済んでいるのは免疫がうまくはたらいているからです。ストレスや食事の偏り、睡眠不足などで身体のバランスが崩れると、免疫機能が低下して風邪をひきやすくなることはよく知られています。健康を維持するためには免疫がしっかりと機能することが重要なのです。
免疫には2種類ある
自然免疫 |
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獲得免疫 |
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体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物が感染を広げるのを防ぐため、私たちの身体には2種類の免疫システムが備わっています。
1つは自然免疫です。これは生まれつき身体に備わっているしくみで、異物を食べる等して排除するものです。自然免疫は幅広い異物に対してすばやく反応できることが特徴です。
もう1つは獲得免疫です。これは異物に応じた攻撃方法を記憶する後天的なしくみで、体内への侵入が2回目以降の異物に対して高い効果を発揮します。獲得免疫では、異物に合わせてオーダーメイドで作られた抗体という武器などを利用して異物を攻撃します。予防接種に利用されるワクチンも獲得免疫のしくみを利用しており、あらかじめ病原体の情報を記憶させておくことで実際に感染するのを防いでいます。
獲得免疫は優れた効果を発揮しますが、それ単体で機能することはできません。自然免疫ではたらく細胞が異物の存在を認識し、その情報を獲得免疫の細胞に伝えることで、初めて獲得免疫の細胞がはたらき出します。そのため、自然免疫と獲得免疫の両方がはたらくことが重要となります。
免疫細胞マクロファージのはたらき
免疫細胞の中でもマクロファージのはたらきは重要です。マクロファージは自然免疫で活躍する細胞であり、体内に侵入した異物を見つけ出し、食べてしまう能力を持っています。食べられた異物はマクロファージに取り込まれ、やがて分解されます。
マクロファージの表面にはレセプター(受容体)と呼ばれる手のようなものが何種類もついています。レセプターはそれぞれ異なるグループの物質をキャッチできるようになっており、細菌に対応するレセプター、ウイルスに対応するレセプター、酵母や乳酸菌に対応するレセプターなどがあります。マクロファージはこれらのレセプターによって幅広い異物を認識し、その種類に応じた的確な対処をしています。
LPSはマクロファージを活性化させる
LPSにはマクロファージを活性化させるはたらきがあることが知られています。LPSは、マクロファージが持つレセプターのうちTLR4という種類のものと結合します。マクロファージがTLR4でLPSをキャッチすると、細胞核にシグナルが伝達されてマクロファージが活性化するのです。
活性化したマクロファージは異物をキャッチして食べる能力が向上します。それによって、体内に侵入した細菌やウイルスが感染を拡大して病気になるのを防ぐ効果が得られます。
このようにして、LPSによってマクロファージを活性化させ免疫機能を高められることから、LPSは免疫力アップに有効な成分として期待されているのです。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。