免疫グロブリンは、抗体としての機能と構造をもつタンパク質で、血液中や体液中に存在しています。また、感染に有効な免疫として働く種類もあるため、治療薬としても使われています。
ここでは、免疫グロブリンについて、種類や基準値、さらに、免疫グロブリン製剤を使用する場面や安全性などを詳しく解説いたします。
この記事の目次
免疫グロブリンとは
免疫グロブリンとは、異物が体内に入った時に排除するように働く「抗体」の機能を持つタンパク質のこと。血液や体液の中に存在し、病原体の働きを止める大きな役割を担っています。
免疫グロブリンには5つの種類があり、分子量が重い2本の「重鎖」と、分子量が軽い2本の「軽鎖」から構成され、基本的にY字型の構造をしています。 それぞれに異なる役割を担い、検査で異常値を示した場合にはさまざまな疾患が考えられます。
免疫グロブリンの種類
免疫グロブリンには、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5つの種類があります。それぞれの機能や効果などを見ていきましょう。
IgG
IgGは、5種類の中で血液中に最も多く含まれている、Y字型の構造の免疫グロブリンです。免疫グロブリン全体の80%を占め、細菌やウイルスを防御する役目を担っており、体内に侵入してきた病原体やウイルスなどと結合して、病原体やウイルスの働きを止めたり、白血球の働きをサポートしています。また、胎盤を通過して胎児に移行するため、生まれてから数ヶ月の間、赤ちゃんの身体を守る働きもします。
IgA
IgAは、喉の表面、腸の内側、気管支の内側の壁などの粘膜の表面や、分娩後に数日間分泌される「初乳」に存在している免疫グロブリンです。血液中ではY字型の構造をしていますが、粘膜の表面や初乳の中ではY字型が2つ結合した構造をしています。病原体やウイルスが侵入してくるのを防ぐ働きに関わっています。
IgM
IgMは、病原菌やウイルスに感染した時に最初に作られる免疫グロブリンです。5つのY字型が互いに結合した構造をしているため、Y字型が1つの構造のIgGよりも、効果的に病原体と結合すると考えられています。抗体の働きを補う「補体」と呼ばれるタンパク質と共同して、病原菌やウイルスなどを破壊したり、白血球が破壊した菌を食べるのをサポートします。
IgD
IgDは、Y字型の構造をしていますが量が少なく、今のところ役割がよくわかっていませんが、リンパ球の成長や分裂に、何らかの役割を果たしていると考えられています。
IgE
IgEは最も量が少ないY字型の構造の免疫グロブリンで、身体の中に入ってきたアレルゲン(アレルギーの原因となる物質:花粉やハウスダストなど)に反応してヒスタミンやロイコトリエンを産生させ、アレルゲンから身体を守る働きがあります。
ただ、ヒスタミンやロイコトリエンが過剰に産生されてしまうといわゆるアレルギー反応が引き起こされることもあります。
また、アレルギー性疾患や寄生虫感染症など、アレルギー反応が関係した疾患にかかるとIgE値が増加するという特徴もあります。
免疫グロブリンの基準値
免疫グロブリンにはそれぞれ基準値があり、高値や低値などの異常値を示した場合には、さまざまな疾患があることが考えられます。
基準値 | 高値 | 低値 | |
IgG | 870〜1,700mg/dL | IgG型骨髄腫 本態性M蛋白血症 H鎖病(γ鎖病) パイログロブリン血症 クリオグロブリン血症 |
原発性免疫不全症 無γグロブリン血症 IgG欠乏症・欠損症 IgG型以外の骨髄腫 原発性マクログロブリン |
IgA | 110~410mg/dL | IgA型骨髄腫 本態性M蛋白血症(IgA型) H鎖病(α鎖病) パイログロブリン血症 クリオグロブリン血症 |
原発性免疫不全症 無γグロブリン血症 IgA欠乏症・欠損症 ネフローゼ症候群 蛋白漏出性胃腸症 IgA型以外の骨髄腫 |
IgM | 35~220mg/dL | 本態性M蛋白血症 原発性マクログロブリン血症 H鎖病(μ鎖病) シュニッツラー症候群 |
原発性免疫不全症候群 無γグロブリン血症 選択的IgM欠損症 ウィスコット・オルドリッチ症候群 蛋白漏出性胃腸炎 |
IgD | 13.0mg/dL以下 | IgD型骨髄腫 形質細胞性白血病 |
無γグロブリン血症 |
IgE | 358IU/mL以下 | アレルギー性疾患 気管支喘息 蕁麻疹 食物アレルギー 寄生虫感染 アナフィラキシーショック |
IgE型以外の骨髄腫 慢性リンパ性白血病 サルコイドーシス 無γグロブリン血症 |
上記で、高値を示した場合に考えられる疾患は、一つの免疫グロブリンの分子が増加する「単クローン性」のものですが、多種類の免疫グロブリンの分子が増加する「多クローン性」の疾患もあります。多クローン性の疾患には、炎症性疾患、関節リウマチ、SLE、慢性肝炎、肝硬変、悪性腫瘍などが挙げられます。
免疫グロブリンは薬としても使われている
免疫グロブリン製剤とは、血液の中にある免疫グロブリンを薬にしたもので、国内の健康な人の献血血液から作られています。その効果や使用場面を見ていきましょう。
免疫グロブリン製剤の効果
免疫グロブリン製剤には、感染に対して有益なさまざまな抗体が含まれており、体内で病原菌やウイルスと結合し、細胞内に侵入して増殖するのを防いでくれる効果があるため、さまざまな感染症や免疫に関する病気の治療薬として使用されています。
免疫グロブリン製剤を使う場面
アレルギー疾患などの治療には、炎症や免疫を抑制する作用があるステロイドが用いられることがありますが、 ステロイドを服用しても症状が抑えられない時は、免疫グロブリン製剤が使用される場合があります。例えば、強い病気の症状をすぐに抑えたい時、症状が再発した時、さらに、ステロイドを減らすと症状が出てしまう時などです。そのほか、他の治療薬の副作用や高齢といった理由でステロイドが使用できない場合、感染の心配がある場合などにも使用されます。
また、アレルギー疾患以外にも、川崎病、ギラン・バレー症候群、血小板減少症など、重い感染症の治療にも用いられています。
免疫グロブリン製剤の安全性
血液から作られている免疫グロブリン製剤は、ウイルスなどに感染する可能性が全くないとは言えません。そのようなこともあり、薬を製造する過程で、ウイルスの働きを失わせる液状化熱処理や酸性処理、ウイルスを取り除くためのウイルス除去膜処理などの安全対策を行っています。十分な対策を取って製造されている免疫グロブリン製剤は、現在までに、薬が原因と判断されたウイルス感染の報告は確認されていません。
ただ、ショック、アナフィラキシー、肝臓障害、腎臓障害、血小板減少、肺水腫、血栓塞栓症、心不全などの副作用があることは覚えておきましょう。 また、点滴をした際に、発熱や身体のむくみ、だるさ、発疹、かゆみ、めまい、頭痛、意識障害、動悸、呼吸困難、吐き気、食欲不振、手足の麻痺、尿量の減少など、気になる症状を感じた場合は、すぐに主治医に相談することが大切です。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。