LPSはあまり聞き慣れない言葉という人も多いのではないでしょうか?しかし、LPSは人が健康に生きていくうえでとても大切なもの。これからの時代にますます必要になる成分です。この記事では、LPSとはどのようなものかわかりやすく説明しましょう。
この記事の目次
LPSは細菌の成分
LPSは細菌の一部として存在する成分で、「グラム陰性細菌」と呼ばれる細菌の外側に毛が生えたように埋め込まれています。
LPSは糖質と脂質で構成されている物質です。
LPSという呼び方以外に「糖脂質」や「リポ多糖」とも呼ばれていて、英語では「Lipopolysaccharide(リポポリサッカライド)」と表記。LPSはこれを略した呼び方です。
糖質は水に溶け、脂質は油に溶けるため、両方の性質を持つLPSは水と油の両方に溶けます。特に水には溶けやすいのが特徴です。
LPSは人の体の中でどのようにはたらく?
LPSは人の体に入ると、体内の働きを活発にする作用があります。特に有名なのがマクロファージの働きを高めることです。
マクロファージとは血液中や組織など体中に存在する細胞です。体に侵入した細菌やウイルスといった異物から体を守るために働きます。さらに傷を治したり病気の回復を早めたりなど、免疫力を高めるために欠かせない存在です。
LPSは、そんな体にとって大切なマクロファージの働きを活性化させます。マクロファージの表面にはさまざまな物質を受け止めるレセプター(受容体)があり、そこにLPSが結びつくことで活性化が起こります。レセプターはたくさんの種類があり、LPSを受け止めるのは「TLR4」というレセプターです。
LPSがTLR4と結びつくことでマクロファージの細胞の奥に信号を送り、核の中にある遺伝子がそれに反応して細胞が活性化するという仕組みです。
このメカニズムを解明した科学者は、2011年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
マクロファージの活性化で健康な体になる
体の免疫力のために働くマクロファージが活性化することで、体は健康になります。ここでは、マクロファージが免疫力を発揮するメカニズムを簡単に説明しましょう。
マクロファージと一緒にはたらく細胞は3つ!
免疫力活性のため、マクロファージと一緒にはたらく細胞があります。次の3つの細胞です。
ヘルパーT細胞 | マクロファージから情報を伝えられ、免疫の司令塔としてはたらく |
キラーT細胞 | ヘルパー細胞からの指令を受け、ウィルスに感染した細胞を排除する |
B細胞 | 体内に侵入したウイルスを排除する「抗体」を作る役割をする |
マクロファージとこれらの細胞は、ウイルスなどが体に侵入したとき、次のイラストのようなはたらきをします。
① | 体にウイルスが侵入しようとするとき、侵入を察知したマクロファージがその場所にかけつけ、ウイルスを食べて情報をゲットします。
マクロファージがゲットしたウイルスの情報は、ヘルパーT細胞へと伝えられます。 |
② | 情報をキャッチしたヘルパーT細胞は、キラーT細胞に「ウイルスに感染した細胞を探して排除しなさい」と命令を出します。 |
③ | 同時に、ヘルパーT細胞はB細胞に対し、「ウイルスに対抗する抗体を作りなさい」という指令を発信。指令を受けたB細胞が抗体を大量に作り出します。 |
④ | たくさん作り出された抗体とキラーT細胞が、ウイルスに感染した細胞を攻撃します。 |
このようにマクロファージとともにいくつもの細胞が共同作業で細菌やウイルスに感染した細胞を攻撃・排除することで、病気が治っていくわけです。
このメカニズムがしっかり働けば、負傷や病気など体のトラブルが起きたときも早い回復が期待できます。また、インフルエンザやコロナなどにも感染しにくくなるでしょう。
LPS以外にもマクロファージを活性化する成分がある
前の項目で、マクロファージのレセプターにはたくさん種類があると説明しました。LPSが結びつくのは「TLR4」というレセプターですが、それ以外にも「TLR2」というレセプターがあり、これには酵母やキノコに含まれるβグルカン、乳酸菌に含まれるペプチドグリカンという成分が結びつきます。
そのため、キノコ類やヨーグルト、酵母を含む食品を食べてもマクロファージを活性化できるわけです。
LPSの能力の方がはるかに強い
しかし、これらβグルカンやペプチドグリカンは、LPSと同じくらいにマクロファージを活性化するためにはLPSの1000~10000倍の量を摂らなければなりません。それだけLPSの力は強いということです。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。