LPSとは、土壌などにも存在する細菌(グラム陰性細菌)の成分であり、体内に侵入した病原菌やウイルスなどを食べて死滅させる免疫細胞の「マクロファージ」を活性化させて、病気に負けない身体作りをサポートしてくれます。さらにLPSには、肌免疫を高めて美肌に導いてくれる効果も期待でき、健康面だけでなく美容面とも密接な関係があります。
ここでは、LPSが美容に関係する理由や期待できる効果、さらにLPSの取り入れ方などを、詳しくご紹介します。
この記事の目次
LPSが美容に関係する理由
皮膚にはさまざまな細胞が存在し、どの細胞も、一定の状態を維持するためのシステムである「免疫」の役割を担っています。免疫には、新しい細胞が生まれるのをサポートしたり、古くなった老廃物の除去、傷ついた肌を治すなどの役割があり、肌の健康や美しさを維持しているのです。そしてLPSには肌の免疫に働きかける作用があり、美容と密接に関係しています。
皮脂に馴染む脂質を持っているLPSは、皮脂のある「角質層」に浸透できます。ただ、角質層の下は、分子が細胞間を通過するのを防ぐ「タイトジャンクション」で結ばれているため、LPSも角質層の下に行くことができません。
しかし、表皮に最も多く存在している「ケラチノサイト(表皮細胞)」や、炎症を抑える働きがある「制御性T細胞」は、LPSを内側に導く受容体を持っているため、LPSに反応をします。それと、外敵を排除する働きがある「ランゲルハンス細胞」もLPSに反応することがわかっています。
つまり、LPSは、多くの細胞が存在している角質層の下に行かなくても、肌免疫に働きかけることができるのです。
美容面でLPSに期待できる効果
では、LPSによって美容面でどのような効果が期待できるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
ターンオーバーを整える
LPSは、肌の生まれ変わりの「ターンオーバー」を促進して、整えてくれる効果が期待できます。
皮膚では、ケラチノサイト(表皮細胞)が上に押し上げられ、古くなった細胞は剥がれ落ちて細胞が生まれ変わります。皮膚細胞が入れ替わることをターンオーバーと呼び、健康な肌の場合は1ヶ月ほどで入れ替わります。
LPSは、免疫細胞を活性化する働きがあり、新陳代謝も活発にしてくれることから、ターンオーバーの促進に繋がるのです。
バリア機能・保湿力を高める
LPSは、角質層がバリアとなって外部の刺激から肌を守ってくれる「バリア機能」や、保湿力を高めてくれる効果が期待できます。
バリア機能が低下する原因として挙げられるのが、「フィラグリン」というタンパク質。フィラグリンは、角質細胞の中で肌が作り出す天然の保湿剤の役割を担い、水分を保持する働きがあります。フィラグリンが少ないと十分に水分を作り出せず、角質層が乾燥して隙間が多くなり、バリア機能が低下してしまうのです。
LPSでケラチノサイト(表皮細胞)を刺激すると、フィラグリンの発生が高まることが報告されています。フィラグリンが代謝されてアミノ酸になると、天然の保湿剤である「NMF(ナチュラルモイスチャリングファクター)になるため、保湿力も増加するのです。
ヒアルロン酸等の増加
LPSは、皮膚のハリや弾力に重要な、ヒアルロン酸やエラスチンなどを作る力を高めてくれる効果が期待できます。
肌の奥の真皮を形成している「線維芽細胞」では、皮膚にハリや弾力を与えてくれるヒアルロン酸やエラスチンなどの成分が作られています。しかし、真皮は加齢と共に痩せてしまいます。皮膚のハリや弾力を高めるためには、真皮の線維芽細胞を増やし、また活発化させる必要があるのです。
LPSは、真皮には直接浸透できませんが、LPSの刺激を受けたケラチノサイト(表皮細胞)が、細胞を活性化するための信号を真皮に伝えてくれます。LPSで刺激したマクロファージの培養液を線維芽細胞に加える実験を行ったところ、マクロファージが活性化して線維芽細胞の増殖が促進されました。ヒアルロン酸やエラスチンも作られて、増加することが報告されています。
肌荒れ改善
LPSには、炎症を抑制したり一酸化窒素を作り出すことによって、肌荒れを改善する作用があることも報告されています。
炎症を抑える
LPSは、炎症を抑える働きがある制御性T細胞を活性化してくれます。活性化した制御性T細胞は、白血球の一つである「好中球」が作り出す「炎症性サイトカイン(炎症を誘導するタンパク質)」の産生を弱めて、「抗炎症性サイトカイン(炎症を抑制するタンパク質)」の産生を高めてくれるのです。好中球が作る、炎症を引き起こす原因となる「活性酸素」の量も減るため、炎症の抑制に繋がります。
また、表皮に存在しているランゲルハンス細胞では、LPSによって「炎症性ケモカイン」の分泌が低下することがわかっています。ケモカインは、炎症している部分で大量に作られるタンパク質で、炎症を誘発させてしまいます。炎症性ケモカインの発生の低下も、炎症の抑制に繋がります。
一酸化窒素が作られる
さらに、ケラチノサイトがLPSの刺激を受けると、一酸化窒素が作られます。一酸化窒素には、紫外線が原因の細胞死や、接触性過敏症の抑制、ケラチノサイトの移動(ターンオーバー)の促進、創傷治癒の促進の作用が報告されており、肌荒れの治りを早めてくれます。
アレルギーをおさえる
LPSは、アレルギー反応を悪化させる物質の産生を抑制して、アレルギーを抑えてくれる効果も期待できます。
LPSによってランゲルハンス細胞が活性化されると、ケモカインの発生が低下します。ケモカインは免疫を調節する作用がある物質で、増加するとアレルギー反応が強くなり、皮膚症状が悪化してしまいます。ケモカインの産生が低下するとアレルギー反応も弱くなるため、アレルギーが抑えられるのです。
育毛・発毛
LPSは、実験結果で、育毛や発毛効果があることが報告されています。
毛髪は、毛乳頭の周りに存在する細胞の「毛乳頭細胞」が増えると太く成長をします。また、血流やホルモンも深く関係しています。LPSによって毛乳頭細胞が活性化されると、毛乳頭で作られている発毛促進成分の「FGF-7」と、頭皮細胞の血流を促進してくれる「VEGF」の産生が高まります。このように毛乳頭細胞が増殖して血流が改善されることで、育毛や発毛が促進されるのです。
LPSの取り入れ方
LPSは、土壌などにも含まれる細菌成分のため、微生物の多い環境で育った食品に多く含まれています。穀類や葉野菜、根菜、海藻類、キノコ類などに豊富に含まれ、普段から野菜メインのバランスが取れた食事をしていれば、自然とLPSが摂取できるでしょう。野菜の皮の部分には特にLPSが豊富なので、皮付きのまま食べましょう。また、LPSは穀類の皮や胚芽部分にも多く含まれているため、玄米などの未精製の物を選ぶと効率よく摂取できます。
調理については、高温の熱を加えると壊れてしまうため、できるだけ生のまま食べるか、軽く火を通す程度にするのがおすすめです。さらに、長時間水にさらすと流出してしまうため、サッと水に潜らせる程度にすることも覚えておきましょう。
LPSの肌に対する効果を期待する場合には、LPSを配合した化粧品を取り入れるのもおすすめです。身体の中と外からLPSを積極的に摂取すれば、健康はもちろん、健やかで美しい肌も手に入れることができるでしょう。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。