LPS(リポポリサッカライド・Lipopolysaccharide)とは、グラム陰性細菌の細胞壁の物質で、糖と脂質が結合した構造をしています。細菌由来の成分というとマイナスイメージがあるかもしれませんが、実は免疫細胞を活性化する役割があり、注目されています。
私たちの体には感染症などから体を守る免疫機能がありますが、これは免疫細胞である「マクロファージ」などが異物を食べてくれる働きのおかげであり、LPSはマクロファージを活性化することがわかっています。一方で、LPSは肌荒れや炎症などの改善に効果が期待できるともわかっています。
では、なぜ、LPSで肌荒れや炎症を防ぐことができるのでしょうか。わかりやすく解説していきます。
この記事の目次
LPSには肌荒れや炎症を改善する効果が期待できる!
肌は免疫機能に密接なかかわりがあります。たとえば新しい細胞が生まれて、古い細胞が自然に落ちていくターンオーバーも免疫の働きによるものです。また、日焼けをしてもいずれ治癒するのも免疫が働いているからです。このように肌には免疫機能があり、正常に機能してはじめて、美しい肌を維持できるのです。
さて、LPSは皮脂になじみやすい脂質を持っており、肌の表面にある角質層に浸透しやすいため、肌の免疫機能に働きかけることができます。
角質層の下には「タイトジャンクション」というシャッターのような機能があって、肌の水分が蒸発しないようにしたり、外部から異物が侵入しないように守ったりしています。私たちが使っている化粧品も、このタイトジャンクションがあるため、浸透できるのは角質層までです。たとえLPS配合化粧品であっても、それより奥まで届くことはありません。
しかし、肌を構成する「ケラチノサイト」、炎症を抑える「制御性T細胞」、異物の侵入を察知する「ランゲルハンス細胞」などはいずれもLPSに反応することが実験でわかっています。そのため、LPSは肌の免疫機能に働きかけることができると期待されているのです。
では具体的に肌荒れや炎症に対してどのような効果が期待できるのか見ていきましょう。
LPSが炎症を抑える
LPSには、好中球の働きを抑えることで肌荒れやニキビなどの炎症を鎮める効果が期待できます。そもそも肌に炎症が起こってしまうのは、好中球が増加してしまうことが原因。
好中球は白血球の一種で、けがをしたり感染症に侵されたりしたときに、損傷を受けた部分の組織を溶かして排除する働きを持っています。しかしその際に炎症を起こすため、LPSによって好中球を制御する働きがある制御性T細胞が活性化されると、炎症を鎮めることができるのです。
LPSが炎症の原因物質発生を抑える
LPSは、炎症を起こす物質の発生を抑えることもできます。角質層には、異物の侵入を察知する「ランゲルハンス細胞」があると紹介しましたが、このランゲルハンス細胞がLPSの刺激を受けると、炎症の原因となる物質「ケモカイン」の発現を抑えるので、結果として炎症を抑えることができるのです。
LPSによって一酸化窒素が作られ肌荒れが改善される
ケラチノサイトはLPSの刺激を受けると、一酸化窒素を出しますが、この一酸化窒素には、紫外線による細胞へのダメージを防いだり、傷の修復を助けたりする効果があることが報告されています。そのため、肌荒れの改善にも有効なのではと期待されています。
LPSは肌のバリア機能も高める
肌には本来、外部刺激から守る「バリア機能」があります。敏感肌の人や肌荒れしやすい人は、このバリア機能が乱れていることが考えられますが、LPSはバリア機能に重要な役割を持つ「フィラグリン」というたんぱく質を発現させることができ、さらに保湿力も高めることができます。
LPSの取り入れ方
LPSは食事で摂取することができるので、日ごろからLPSを多く含む食品を摂取するよう心がけていきましょう。
とくにLPSを多く含んでいる食べ物には、次のようなものがあります。
- 玄米
- 皮つきのレンコン
- ほうれん草
- めかぶ
また、LPSは細菌が多く存在する土の中に由来するため、化学肥料を使ったものより、有機栽培されたもののほうがLPSが多いと考えられます。
さらに、スキンケアのためにLPSを取り入れたい場合は、直接肌に塗布できるLPS配合化粧品を選ぶのもいいでしょう。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。