健康な身体を維持するためには、正常な免疫反応がおこなわれていることが大切です。免疫反応に異常が起きると、身体にさまざまな症状が現れたり、病気にかかりやすくなったりします。そもそも、免疫反応とはいったいどういうものなのでしょうか?詳しく解説します。
この記事の目次
正常な免疫反応とは
免疫とは、外部から身体に侵入したウイルスや細菌などの病原体から身体を守り、また身体の中の老廃物や死んだ細胞や発生したがん細胞を処分し、あるいは傷ついた組織があればそれを修復するという、身体全体の調子を整えるシステムのことです。わたしたちの身体の中には、生まれつきさまざまな免疫細胞が備わっています。
免疫反応を引き起こす物質は「抗原」と呼ばれ、ウイルスや細菌、カビなどのことを指します。アレルギー反応を引き起こす抗原のことは「アレルゲン」と呼ぶこともあります。
免疫細胞の一つであるマクロファージは体内に異物(抗原)を見つけると、その異物の情報を集めて免疫の司令塔であるヘルパーT細胞に伝えます。そうするとヘルパーT細胞は異物を撃退するキラーT細胞や、異物に対する免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質(抗体)を作るはたらきのあるB細胞に攻撃の指令を出します。
そして作り出された抗体とキラーT細胞が異物を破壊することによって、病気が治ります。このような免疫反応が正常に起こることで、わたしたちの身体は守られているのです。
血清免疫反応とは
血清内の免疫細胞のはたらきを血清免疫反応と言い、抗体が病原菌を退治するためにさまざまな役割を果たしています。
B細胞によって生産された抗体は、免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質であり、分子構造によってIgG、IgM、IgA、IgD、IgEに分けられます。感染初期に生産される抗体はIgMで、感染抑制作用や補体やマクロファージ、好中球などの貪食細胞を活性化させて異物を排除するはたらきがあります。
また、B細胞は抗原の情報を記憶することができるため、感染後期や再感染時には免疫グロブリンの75%を占めるIgGが迅速かつ大量に産生され、抗原を排除します。
IgAは粘液などの外分泌液に豊富に含まれており、外部から病原体が侵入するのを防ぎます。IgEは好塩基球や肥満細胞、好酸球などに結合することでⅠ型アレルギーを引き起こすと言われ、アトピー性皮膚炎の原因としてIgEの過剰生産が考えられています。
補体は血清中に含まれるタンパク質で、主にC1からC9の9種類の成分に分けられます。抗原と反応したIgGやIgMにC1が結合すると補体の活性化が次々と起こり、最終的には病原体や感染細胞に穴を開けて溶菌が起きます。
異常な免疫反応が起こることもある
免疫反応は、わたしたちの身体を守るための大切な機能です。しかし、何らかの原因によって免疫反応に異常が起こると、感染症やガンにかかりやすくなったり、アレルギーやリウマチなどさまざまな病気が生じやすくなります。ここでは、異常な免疫反応の例をご紹介します。
免疫反応が過敏になるとアレルギーが起こる
免疫反応に異常が起こることにより、本来は身体にとって無害な成分に対しても免疫が過剰に反応し、自分自身の身体を傷つけてしまうことをアレルギー反応と呼びます。
アレルギーの原因となる物質をアレルゲンといい、花粉、ダニ、ハウスダスト、食物、動物、薬などがあり、アレルギー反応を起こすかどうかは人によって異なります。
サイトカインストームによる感染症の重症化
ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入すると体内のマクロファージや白血球などが活性化しますが、このような免疫細胞の活性化や抑制をコントロールしている物質をサイトカインと呼びます。
感染症などによって、このサイトカインが過剰に発生してしまうサイトカインストームが起こると、免疫細胞が過剰に活性化されて正常な細胞にもダメージを与えてしまいます。現在流行しているコロナウイルスの重症化も、サイトカインストームが原因の一つとして考えられています。
サイトカインストームは感染者全員に起こるわけではありませんが、高齢者や基礎疾患のある人に起こりやすいことがわかっています。そのためサイトカインストームを起こさないためには、健全な免疫力を維持していることが重要だと言えるでしょう。
自己免疫疾患
免疫には、自分の体内の成分と異物を見分けるしくみ(自己寛容)があります。これによって免疫細胞は外部から侵入してきたウイルスや細菌などの異物のみを攻撃することができています。
しかし免疫反応に異常が起きると、自分の身体を構成している成分を異物と誤認して、組織や細胞を攻撃してしまうことがあります。その結果、身体のさまざまな部位に病気を発症してしまう疾患を自己免疫疾患と呼んでいます。
自己免疫疾患には関節リウマチ、バセドウ病、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、血管炎などがあります。現在、自己免疫疾患の原因は完全には明らかにされていませんが、体内で変質したタンパク質や異物と似た構造のタンパク質に反応してしまうこと、免疫機能そのものに障害が起きていることなどが原因として考えられています。
免疫不全疾患
免疫反応の異常によって免疫が正常に機能せず、抗原を排除できなくなる疾患を免疫不全疾患と呼びます。細菌やウイルスから身体を防御できないため、通常に比べて感染症にかかりやすくなり、再発を繰り返して回復まで時間がかかるほか、合併症を引き起こして重症化しやすくなります。
免疫不全症は、遺伝的に免疫遂行因子が欠如している原発性免疫不全症と、後天的に免疫力が低下する続発性免疫不全症の2つに分けられます。
原発性免疫不全症は、一般的には乳児期や小児期に発症し、感染に対する抵抗力が極度に弱いことが特徴です。感染が重症化しやすいため、重篤な肺炎や中耳炎、髄膜炎、膿瘍などを繰り返します。
続発性免疫不全症は通常、白血病や悪性リンパ腫、糖尿病、HIV感染症などの長期におよぶ重篤な病気や、免疫抑制効果のある抗ガン薬やステロイドなどの薬、放射線治療によって発症すると言われています。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。