さまざまな感染症や病気から身を守るには、免疫力を高めることが重要です。免疫力が高ければ外部から侵入する細菌やウイルスなどをいち早く認識し、異物からからだを守ることが可能となります。
では、どうしたら免疫力を上げることができるのでしょうか?その答えは食べ物にあります。私たちが普段口にしている食べ物には多くの栄養素が含まれていますが、そのなかには免疫力アップに役立つ栄養素がいっぱい。
この記事では、感染症が気になるときこそ摂取したい、免疫力を高める栄養素を含む食材と、そのメカニズムを詳しく解説していきます。
この記事の目次
そもそも免疫とは
よく「免疫力を上げよう」などと言いますが、免疫は健康を保持するために欠かせない機能です。からだの調子を整え、病原体からからだを守り、損傷を受けた場合には正常に戻すのが免疫の役割です。
たとえばウイルスに感染しそうになっても、免疫がからだに侵入しようとする異物を攻撃して排除してくれます。「はしかに一度かかると二度とかからない」といわれるのも、この免疫機能のおかげです。
このほかにも、体内の老廃物や異常な細胞を排出したり、死んだ細胞をリサイクルしたり、傷ついた組織を修復したりと、免疫の役割は多岐にわたります。そしてこれらの免疫機能は、食事で適切な栄養を摂取して高めることが可能です。
免疫力を高めるには腸内環境を整えることが大切
免疫力と腸内環境は密接な関係にあります。なぜなら、腸は口から摂取した食べ物が通って排出していくところ。外から取り入れたものが通過するので異物にさらされる機会が多く、その分からだを守る免疫機能が備わっているのです。
人体にある免疫にかかわる細胞のうち、6割以上は腸にあるって知っていますか?つまり、腸内環境を整えることこそ、免疫力アップのカギとなるのです。
私たちの腸内には「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類の細菌が存在します。理想的なバランスは善玉菌が2割、悪玉菌が1割。残りの7割は日和見菌といって、善玉菌と悪玉菌、どちらか優位な方の菌の味方をします。
免疫力を高めたい方は、これらの腸内細菌がバランスよく共存できるように食生活を見直していきましょう。
免疫力を高める栄養素
免疫力を高めるには、免疫力をサポートできる栄養素を積極的に摂っていくことが大切です。ただ、栄養はバランスも大事です。免疫を高める食材だけを摂取するのではなく、いろいろな栄養素をバランスよく摂取しましょう。
ビタミン
ビタミンには免疫力を高めるものがたくさんあります。美容にも健康にも大切な栄養素なので、それぞれの効果を意識して積極的に摂りたい栄養素です。
ビタミンA
ビタミンAは皮膚や粘膜を正常に保つ栄養素です。とくに喉や鼻は粘膜で菌やウイルスの侵入を防いでいます。粘膜を強化し、異物を侵入させないからだづくりをしましょう。
◆おすすめの食材
- レバー
- うなぎ
- にんじん
- 卵
- かぼちゃ
- 春菊
ビタミンB6
ビタミンB6はからだに異物が侵入したときに戦う力を高める栄養素です。
私たちのからだには異物を発見する「マクロファージ」という細胞がありますが、マクロファージは異物への攻撃の司令官の役目をする「T細胞」に侵入者の報告をします。するとT細胞は「B細胞」に、兵士のように戦う「免疫抗体」をたくさん作らせます。この免疫抗体のもとになるのがビタミンB6です。
◆おすすめの食材
- かつお
- まぐろ
- ヒレ肉
- 赤ピーマン
- にんにく
- バナナ
ビタミンC
血液中の白血球には、からだに入り込んだ細菌やウイルスなどを死滅させる免疫機能があります。ビタミンCはこの白血球の働きを助けて、ウイルスの排除し、増殖を阻止するたんぱく質「インターフェロン」の生成を促す働きがあります。
◆おすすめの食材
- レンコン
- 芽キャベツ
- ジャガイモ
- ほうれん草
- キウイフルーツ
- いちご
- 柑橘類
ビタミンE
私たちは毎日呼吸によって酸素を体内に取り入れていますが、一部の酸素は「活性酸素」となって体内の細胞を酸化させます。酸化は「サビ」とも表現されますが、免疫細胞をサビさせてダメージを与え、免疫機能が低下してしまうことも。
ビタミンEには抗酸化作用があり、細胞や組織を酸化から守ることができます。このことから、免疫細胞の機能低下を抑える効果が期待されています。
◆おすすめの食材
- うなぎ
- かぼちゃ
- アーモンド
- アボカド
- ブルーベリー
- 植物油
ミネラル
ミネラルは五大栄養素のうちのひとつ。体内で合成することができないので、食事から必ず摂る必要があります。亜鉛はビタミンAと同様、皮膚や粘膜を助ける働きをし、銅はたんぱく質とともに免疫細胞を助ける役目を持っています。
◆おすすめの食材
- 牡蠣
- 卵
- 牛肉
- ナッツ
- レバー
- 大豆
タンパク質
タンパク質は私たちの皮膚や骨、筋肉、血液などを作る材料です。そして体内に異物が侵入したときに撃退して、からだを守ってくれる「キラーT細胞」を作るもとでもあります。いわば「守り」ではなく「攻め」をサポートします。
◆おすすめの食材
- 魚
- 肉
- 卵
- 大豆
- 乳製品
脂質
脂質は免疫細胞の構造や機能に欠かせない栄養素であり、免疫細胞が働くためのエネルギー源ともなっています。さらに、異物の侵入を伝達したり、キラーT細胞を作るタンパク質の働きを助けたり、抗体を作る指令を伝達したりと、縁の下の力持ちのような存在も担っています。
◆おすすめの食材
- 牛・豚バラ肉
- さば
- バター
- マカダミアナッツ
- ベーコン
- クリームチーズ
食物繊維
食物繊維はお通じを助ける栄養素として知られていますが、善玉菌の餌にもなります。すこやかな腸内環境は善玉菌が優位となっていることが求められるため、食物繊維によって善玉菌を増やして腸内環境を整えることで免疫機能を助けます。
◆おすすめの食材
- ごぼう
- さつまいも
- きのこ
- れんこん
- ブロッコリー
- 海藻類
ポリフェノール
ポリフェノールは活性酸素を取り除いて、からだの酸化を防ぐ働きがあります。活性酸素が大量に生成されてしまうと体内の免疫細胞が傷つき、免疫力が低下するので、近年注目されている栄養成分のひとつです。
◆おすすめの食材
- ブルーベリー
- ぶどう
- なす
- 緑茶
- 玄米
- 玉ねぎ
- ココア
LPS
栄養素とは異なりますが、「免疫ビタミン」とも呼ばれ、免疫力アップ効果が注目されている成分です。土の中などに存在するグラム陰性細菌を構成する成分ですが、異物の存在を免疫細胞に伝達したり、病原体などを食べたりするマクロファージを活性化することから、免疫力を高める働きが期待されています。
◆おすすめの食材
- ゴボウ
- れんこん
- ほうれん草
- 玄米
- 海藻類
過剰栄養が免疫に悪影響を及ぼすこともある
栄養はたくさん摂ればいい、というものではありません。栄養を摂りすぎてしまうと肥満になりやすいことは知られていますが、肥満は免疫力をも低下させてしまいます。なぜなら、肥満となったからだでは、脂肪組織にマクロファージが入り込んでしまい、免疫機能をつかさどるT細胞が減少してしまうからです。
栄養は少なすぎても多すぎてもいけません。免疫力を高めるためには、ここで紹介したような栄養素、食品のほかにも、さまざまな食品をまんべんなく摂取し、栄養バランスの良い食事を摂ることが不可欠なのです。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。