「LPSは炎症を起こす成分なの?」という疑問を耳にすることがあります。しかし、これは誤解です。LPSは炎症を起こすどころか、炎症を抑える働きがある成分です。
この記事では、LPSの炎症を抑える効果について紹介しましょう。
この記事の目次
LPSは炎症を抑える効果がある
LPSは炎症を抑える働きがありますが、「LPSは炎症を起こす」というのはまったく間違いというわけではありません。細菌などの異物が体に侵入してきたとき、LPSの反応によって一時的に炎症反応が起こるからです。
LPSについて記載している書物には、この点を捉えて「LPSは炎症を起こす」と解説しているものもあります。
しかし、炎症を起こすのは異物が侵入してきた初期段階のこと。そもそも炎症は体を守るための防御反応で、体に侵入した細菌やウイルスと免疫細胞が戦っている時の状態です。
LPSが免疫細胞を活性化させることで免疫反応が起こるため、炎症が起こるのはむしろ当然のことといえるでしょう。しかし、LPSはそれだけではなく、もう一つ大事な働きとしてそのあとで炎症を抑えて修復させるという重要な役割を担っているのです。
LPSが炎症を抑えるしくみ
LPSが炎症を抑えるしくみには、制御性T細胞と呼ばれる細胞が関わっています。
制御性T細胞 | ・免疫細胞が暴走し、異物だけでなく正常な細胞まで攻撃してしまうのを防ぐ ・免疫機能が正常に機能するためにコントロールの役割をしている |
制御性T細胞は、LPSと結びつく「TLR4」というレセプター(受容体)を持っています。
LPSがそのTLR4に結合することで制御性T細胞が活性化され、「IL-10」という炎症を抑えるサイトカイン(タンパク質の一種)を分泌。これにより炎症が治ってくるというしくみです。
LPSは炎症を抑える働きで傷の治りを早めたり、肌荒れを改善したりします。
この素晴らしいしくみは研究でも解明されています。LPSは肌荒れに悩む女性には救世主のような存在ともいえるでしょう。
次の項目で、肌荒れが改善していくしくみについても紹介します。
LPSは肌荒れを抑え、スキンケア効果を高める
LPSが肌の炎症を鎮める作用は3つあります。
- 一酸化窒素を出す
- 炎症を起こす物質が出るのを抑える
- 制御性T細胞が活性化される
それぞれについて、もう少し詳しく説明しましょう。
①一酸化窒素を出して炎症を抑える
肌の表面にはケラチノサイトという細胞があり、このケラチノサイトがLPSの刺激を受けて一酸化窒素を出します。
この一酸化窒素は、紫外線の影響で細胞が壊れるのを抑えたり、傷の治りを早めたりする効果が研究で確認されているもの。
この効果で、肌の炎症を鎮めていきます。
②炎症を起こす物質が出るのを抑える
肌の表面にはランゲルハンス細胞という細胞もあります。
ランゲルハンス細胞では「ケモカイン」という物質が分泌されることが肌荒れの炎症を起こす原因になっていますが、研究では、LPSの刺激によってケモカインの発生が低下することが確認されています。
③制御性T細胞が活性化される
また、前項で説明したように、LPSは制御性T細胞を活性化させることで炎症を抑えるもの。LPSを肌の表皮に投与することで制御性T細胞が活性化され、肌荒れの炎症を鎮めることができます。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。