免疫とは、体の調子を整える機能で、代表的な働きに、ウイルスや細菌からからだを守る働きがあります。たとえば同じ学校の同じような環境で生活していても、風邪をひく人とひかない人がいるのは、この免疫力の違いと考えることができます。免疫力が高ければウイルスや細菌による感染症を防げますし、病気を未然に防ぐこともできます。ところが免疫力が低いと、感染症や風邪にかかりやすくなったり疲れやすくなったり花粉に敏感になったりと、健康面での不都合を生じやすくなります。
免疫力は血液でもある程度チェックできるので、ここではどのような検査項目があるのか、正常といわれる基準値はどのくらいなのかを解説します。
この記事の目次
免疫に関わる血液検査の項目①白血球数
免疫機能は血液に含まれる成分から測ることができます。血液や尿の成分を調べる検査を生化学検査といいますが、白血球数はこの生化学検査でも頻出の項目です。
白血球には、体内に細菌や異物が侵入すると、これらと戦って追い出そうと働くなどの免疫機能が備わっています。基準値は30~90×10²/μLですが、基準値から外れている場合は、炎症を起こしていたり、感染症にかかったりしている可能性があります。
さらに細かく検査結果が見られる場合は、「リンパ球」「単球」にも注目しましょう。これらは白血球を構成する成分で、リンパ球には異物と戦う抗体を作る働きがあり、単球にはリンパ球に異物の情報を伝える働きがあります。
基準値は性別によって異なりますが、リンパ球は男性30~41%・女性32~43%、単球は男性3.4~9.0%・女性3.0~6.0%です。リンパ球も単球も特定の病気で増加することがわかっているので、リンパ球の数値が高い場合は感染症の可能性が疑われ、単球の数値が高い場合は感染症や膠原病などが疑われます。このようにどの項目に異常があるかを調べることで病気の原因を推測することも可能です。
免疫に関わる血液検査の項目②免疫グロブリン
免疫グロブリンは、ウイルスや細菌などが体内に侵入してきたときに攻撃して、異物を排除しようとする抗体のことです。たんぱく質でできており、異物と抗体が結合する免疫反応を応用した免疫血清検査で値を調べることができます。
免疫グロブリンにはIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5つの種類がありますが、ここではそのうちの主な3種類について解説します。
IgG
IgGは、血液中に含まれる免疫グロブリンのなかで、最も多く含まれている(約80%)免疫グロブリンです。体内に侵入したウイルスや細菌と結合して、その働きを止めることでからだを守る働きをしています。
免疫血清検査のなかでも抗体を調べる検査としては代表的な項目であり、基準値は861~1747mg/dLです。
体に異常が起こっていても、検査結果に反映されるまでに時間がかかるため、高い数値を示した場合は慢性肝炎や膠原病などの慢性的な炎症を起こす病気が疑われます。
IgA
腸や喉の内側にある粘膜に存在する免疫グロブリンです。また、分娩直後から分泌される初乳にも含まれることがわかっています。ウイルスなどの異物の侵入を妨ぐ働きがあるため、感染症の予防に役立ちます。基準値は93~393mg/dL。数値が高い場合は慢性肝炎やIgA腎症、多クローン性肝疾患など、低い場合は自己免疫疾患などが疑われます。
IgM
病原体と結びついてウイルスなどを破壊する点はIgGと似ていますが、Y字が1つしかないIgGより効率よく病原体と結合できると考えられています。基準値は男性は33~183mg/dL、女性は50~269mg/dLです。
ウイルスや細菌に感染したときに最初に作られる抗体のため、感染から間もない病気の発見に役立ちます。数値が高い場合は何かしらの感染症など、低い場合は原発性免疫不全症候群などが疑われます。
免疫に関わる血液検査の項目③補体
補体とは、抗体の働きを助けるたんぱく質のことです。抗体だけでは侵入物を完全に排除することはできませんが、補体がウイルスや細菌に結び付いて、破壊したり餌となったりすることで異物を死滅に導き、抗体の働きを補助します。補体にはC1~C9までの9つの種類がありますが、ここでは主な3項目について解説します。
C3補体
病原体と結びつくことも、病原体の餌となることもあるたんぱく質です。基準値は86~160mg/dLですが、数値が高い場合は炎症や感染症、悪性腫瘍などが疑われ、数値が低い場合は補体を産生する機能の低下や慢性的な炎症が疑われます。
C4補体
病原体と結びつくことで活性化するたんぱく質です。基準値は17~45mg/dLで、数値が低い場合は悪性関節リウマチや肝臓の炎症などの病気が疑われます。
血清補体価(CH50)
C1~C9までは補体の成分の量を調べる検査ですが、CH50は補体そのものの量を調べる検査です。基準値は30~46U/mLとされています。
高値を示した場合よりも低値を示した場合に注意が必要で、数値が低かった場合はC3やC4などの成分の量を調べる検査をさらに行う必要があります。
免疫力に関わる血液検査の項目④自己免疫疾患にかかわる項目
自己免疫疾患とは、からだの中にある免疫機能が正常に機能しなくなり、自分で自分の体の組織を攻撃・破壊してしまう病気で、膠原病やリウマチなどがこれにあたります。花粉症などのアレルギー疾患は外部の異物に対するアレルギー反応ですが、自己免疫疾患は自分の体内にあるものを異物と間違えてしまうことが原因です。
自己免疫疾患かどうかは「自己抗体検査」でわかります。さきほど解説したC3、C4、CH50などの検査も自己免疫疾患のひとつであるリウマチの診断に役立ちます。自己免疫疾患が疑われる場合には、次のような検査が行われます。
検査内容 | 基準値 | 基準値から外れる場合 | |
抗核抗体 | 膠原病が疑われるときに、抗体がどのくらいあるかを調べる検査 | 陰性(80倍未満) | 陽性の場合は膠原病の可能性が高い |
抗RNP抗体 | 3.5U/mL未満 | 高値を示す場合は、全身性エリテマトーデス(SLE)や強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎などが疑われる | |
抗Sm抗体 | 主に全身性エリテマトーデス(SLE)の識別のために行われる検査 (膠原病患者が異常数値を示す率は低いため、膠原病が疑われる場合にはあまり行われない) |
7.0U/mL未満 | |
抗SS-A抗体 | 7.0U/mL未満 | 高値を示す場合は、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、オーバーラップ症候群などが疑われる | |
抗SS-B/La抗体 | 7.0U/mL未満 | 同上 | |
抗Scl-70抗体 | 7.0U/mL未満 | 高値を示す場合は、強皮症やオーバーラップ症候群などが疑われる | |
RF(リウマチ因子) | 15IU/mL以下 | 高値を示す場合は、関節リウマチや全身性エリテマトーデス、肝硬変、慢性的な感染症などが疑われる | |
クームス試験 | 赤血球の抗体を調べる検査 | (-) | 陽性の場合は自己免疫性溶血性貧血、新生児溶血性貧血、薬剤性溶血性貧血、輸血副作用などが疑われる |
CRP(C反応性蛋白) | 炎症が起こった時に増加するたんぱく質を調べる検査 | 0.00~0.14mg/dL | 高値を示す場合は肺炎などの炎症性疾患が疑われる |
RA-テスト | リウマチ因子の有無を調べる検査 | (-) | 陽性の場合は慢性関節リウマチや悪性関節リウマチが疑われる |
抗CCP抗体 | 4.5U/mL未満 | 高値を示す場合は関節リウマチが疑われる(早期診断にも有用) | |
抗核抗体(蛍光抗体法)半定量 | 蛍光色素を使って抗原の分布を調べる検査 | 80倍未満 | 高値を示す場合は膠原病が疑われる |
MMP-3 | リウマチなどによる関節の破壊の程度を調べる検査 | 男性36.9~121ng/mL 女性17.3~59.7ng/mL |
高値を示す場合は、関節リウマチ以外にも乾癬性関節炎や全身性エリテマトーデス、強皮症、糸球体腎炎などが疑われる |
免疫力に関わる血液検査の項目⑤免疫不全にかかわる項目
免疫不全とは、免疫に欠かせないT細胞やB細胞が機能しなくなったり、機能が低下したりした状態のことをいいます。T細胞は、私たちのからだにウイルスなどの異物が侵入したときに戦って排除するように命令を出す司令官のようなもの。そして司令官の命令によって派遣される兵士がB細胞です。つまり、免疫不全に陥ると感染症にかかっても回復が難しくなってしまうのです。
その代表的な病気が「後天性免疫不全症候群(=AIDS)」です。後天性免疫不全症候群は免疫細胞がヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染することで発症します。免疫細胞を破壊してしまうので細菌やウイルスに対する抵抗力が低くなり、ときには死に至ることすらあります。
このような免疫不全を調べるには、「HIV-1,2抗体」という検査が代表的です。AIDSの原因となるウイルスには1型と2型の2種類があるため、HIV-1とHIV-2の両方の抗体を検出します。いずれも陰性(-)であれば基準内です。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。