免疫力アップに期待されるLPSは、グラム陰性細菌の細胞壁を構成する主成分です。グラム陰性細菌にもさまざまな種類があり、それだけLPSにも種類があるということなのですが、そのうちのひとつ、酢酸菌由来のLPSには花粉症予防効果が期待できると注目されています。
そこでここでは、酢酸菌由来のLPSの特徴や、花粉症予防のメカニズムをわかりやすく解説します。酢酸菌由来のLPSを摂取できる食材も紹介するので、参考にしてください。
LPSにはさまざまな種類が存在する!
LPSはグラム陰性細菌の外膜を構成する成分なので、グラム陰性細菌の一部であるLPSも、分類するときはグラム陰性細菌の分類方法に準じます。ただ、ひとくちにLPSといっても、グラム陰性細菌には多くの種類があります。まず、グラム陰性細菌は上の図のようにプロテオバクテリア門とバクテロイデス門をはじめとするいくつかの門に分類されます。そしてプロテオバクテリア門はそこからさらにγ-プロテオバクテリア綱とα-プロテオバクテリア綱に別れます。
γ-プロテオバクテリア綱には大腸菌、サルモネラ菌、コレラ菌など、メジャーな細菌(たくさんの研究が行われている細菌)が多く属しているため、研究試薬としての「LPS」になっているものも多いです。
一方で今回のテーマである酢酸菌はα-プロテオバクテリア綱に分類されるものです。では、この酢酸菌由来のLPSにはどのような特徴やメカニズムがあるのでしょうか。くわしく見ていきます。
酢酸菌のLPSの特徴
酢酸菌は日本人の食生活にかかわりの深い「酢」を作る時に使われる細菌です。アルコールを酢酸に変化させるので、酢酸菌と呼ばれています。
さて、この酢酸菌由来のLPSは他の菌由来のLPSと違う点があります。それは、外部から侵入した異物を食べたり異物の情報を伝達したりする「マクロファージ」の「レセプター(受容体)」への結合力や、免疫を活性化させるシグナルが、大腸菌由来などのLPSと比べて弱い可能性があるということです。その一方で、花粉症予防効果が期待できるという点から大きく注目されています。
酢酸菌のLPSが花粉症を予防するメカニズム
花粉症になる人とならない人がいるのはなぜなのでしょうか?その違いは「免疫の反応の仕方」にあります。通常、花粉などの外部の異物は、免疫細胞のマクロファージが食べて排除してくれます。そして免疫の司令官であるヘルパーT細胞に情報を伝達して終わるので、実害はありません。
ところがマクロファージから情報をもらったヘルパーT細胞が、まれに情報を勘違いして、有害物質が侵入したと判断してしまうことがあります。すると司令官であるヘルパーT細胞は、異物と戦うIgE抗体をたくさん作らせます。しかし、戦うはずの敵(花粉)はすでにマクロファージが食べてしまっているので、見つけることができません。
そこでIgE抗体は代わりにマスト細胞(肥満細胞)に攻め入ることになります。攻撃を受けたマスト細胞はヒスタミンやセロトニンといった炎症を起こす物質を放出して応戦し、これがアレルギー症状となります。酢酸菌由来のLPSには、このような免疫細胞の過剰な働きを抑える作用があります。そのため、花粉症の予防に役立つのではないかと期待されているのです。
酢酸菌のLPSを摂取する方法
酢酸菌は食べ物から摂取できます。代表的な食品はにごり酢や黒酢、バルサミコ酢などの長期熟成で作られる酢です。酢酸菌はもともとアルコールを醸造する時に使われるので、酢酸菌が含まれているのも納得ですね。
また、デザートにも人気のカスピ海ヨーグルトやナタデココにも酢酸菌が含まれています。このほかハチミツや米ぬか、干しぶどう、リンゴや柿の皮にも含まれており、私たちにとって身近な食品が多いので、積極的に摂取していきたいものです。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。