LPS(リポポリサッカライド)とは、私たちの腸内や土壌の中に存在する「グラム陰性細菌」の外膜を構成する成分です。LPSは免疫細胞の一つであるマクロファージを活性化させる働きがあることから、身体の免疫力を高める成分としても注目されています。
さらに、LPSは骨の代謝を促進し、骨粗しょう症の予防や改善にも効果が期待されているのです。そこで今回は、骨とLPSの関係について詳しく解説します。
LPSが骨の代謝を促して骨粗しょう症予防につながる!
健康な成人では、1年間に5%~10%の骨組織が新しく生まれ変わるといわれています。これは、破骨細胞が骨の中のカルシウムを溶かすことによって古い骨を破壊し、骨芽細胞によって新しい骨が形成されるためです。この活動がバランスよく繰り返されることで、健康な骨が維持されているのです。
ところが体内のカルシウム量が不足すると、存在量の多い骨から供給しようと、破骨細胞が骨を溶かして血液中のカルシウム濃度を保とうとします。このように骨芽細胞と破骨細胞の活動バランスが崩れ、骨を溶かす働きの方が強くなると、骨密度が減少して骨粗しょう症になります。骨粗しょう症になると骨折しやすくなり、寝たきり状態や認知症を招く恐れもあるため、骨の健康を維持するのはとても重要なことです。
骨の健康を維持するためには、骨芽細胞と破骨細胞がしっかりと機能している必要があります。LPSには、骨の代謝に重要な役割を果たすこれら2つの細胞の活性化を促す働きがあると考えられているため、正常な骨密度の維持に役立ち骨粗しょう症予防や改善の効果も期待できるのです。
LPSが骨の代謝を促す理由
LPSが骨の代謝を促すのは、LPSにマクロファージ系細胞を活性化させる働きがあることが関係しています。LPSによって刺激された骨組織マクロファージは、オンコスタチンMという物質を分泌することにより、間葉系幹細胞を刺激します。間葉系幹細胞は、細胞分裂をしながら神経や筋肉、脂肪、骨などの細胞へと変化する機能を持つため、これにより骨組織では骨芽細胞に分化し増加します。一方で、骨を破壊する破骨細胞はマクロファージ系の細胞であるため、LPSによって活性化されます。
こうして、LPSによって骨芽細胞と破骨細胞が活性化されることにより、骨の代謝が良くなり、健康な骨を維持することができると考えられています。また、LPSを配合した飲料を摂取することによって、骨密度の減少が抑制されたという報告もあります。
LPSは食事・サプリメント・ドリンクから取り入れよう!
LPSを持つグラム陰性細菌は、土壌中に多く存在しています。そのため、土の中で育つ根菜などの野菜、きのこ、海藻などの食品には、多くのLPSが含まれています。
また、LPSを配合した飲料を摂取することで、骨密度の減少が抑制されたという研究結果があることから、ドリンクでの摂取も、骨の健康を維持するために効果的であると考えられます。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。