LPS(リポポリサッカライド:Lipopolysaccharide)は「糖脂質」「リポ多糖」と呼ばれる細菌の成分で、細胞壁の外側に存在して免疫細胞の活性化を促す作用があります。さらに、動脈の壁が厚くなったり、固くなったりして動きが悪くなっている状態である「動脈硬化」の予防にも効果が期待できると言われています。そこで今回は、動脈硬化とLPSの関係について詳しく解説します。
この記事の目次
動脈硬化のメカニズム
動脈硬化は一般的に「アテローム性動脈硬化」のことを指し、お粥状(アテローム性)のコレステロールの塊(プラーク)によって動脈の壁が厚くなったり、固くなったりして動きが悪くなっている状態のことを指します。
血管は内側から内皮+内膜、中膜、外膜の3つの層になっており、内膜にキズがつくとLDL(通称:悪玉コレステロール)が内皮と内膜の間にたまり、酸化するようになります。免疫細胞がそれを処理しきれないと、酸化したLDLをため込んだマクロファージがそのまま死んでしまい、内膜にプラークができます。
動脈硬化自体は病気ではありませんが、このプラークが大きくなることで血管が狭められたり、内皮が破れて血栓ができたりし、狭心症や心筋梗塞、大動脈瘤の原因になります。
動脈硬化予防には免疫細胞「マクロファージ」が関係している!
マクロファージとは、白血球の一種で大食細胞とも呼ばれる免疫細胞です。外部から入ってきたウイルスや細菌、死んだ細胞など体内の不要なものを捕食・消化する働きがあります。
通常は、酸化したLDLはマクロファージが捕食・消化して処理してくれるため、血管をキレイに保つことができています。しかし、マクロファージが処理しきれないほど酸化LDLが増えてしまうと、取り込んだマクロファージがそのまま死んでしまい、プラークと呼ばれるコレステロールの塊が残ります。逆に、マクロファージが活性化すれば処理しきれない酸化LDLが減り、動脈硬化の原因になるプラークの発生を抑えることができると考えられています。
LPSは動脈硬化を予防する!
マウスを使った実験結果から、LPSを摂取することで動脈硬化を予防できることが期待されています。そのメカニズムがどのようなものなのか、詳しくご紹介します。
LPSによるマクロファージの活性化
LPSのもっともよく知られている作用にマクロファージの活性化があります。マクロファージの細胞表面に存在するTLR4というレセプター(受容体)がLPSと結合すると、マクロファージの核の中の遺伝子が刺激されて活性化します。
実際に、マウスを使ったLPSと大動脈血管のプラークの関係を調べた実験では、高脂肪食だけを与えたマウスと高脂肪食とLPSを与えたマウスのコレステロール値を比較すると、LPSを与えたマウスの血清LDLの値が改善され、大動脈血管のプラークの発生が少ないことがわかりました。
このことから、マクロファージを活性化するLPSが動脈硬化の予防につながると考えることが出来ます。
腸内細菌叢の改善
腸内には多種多様な腸内細菌が生存しており、その腸内細菌の群生を腸内細菌叢(腸内フローラ)と言います。腸内細菌叢と様々な疾患との関係性も研究されています。
動脈硬化も腸内細菌叢と関連があり、アテローム性動脈硬化を発症した人はファーミキューテス門の腸内細菌が増加し、バクテロイデス門の腸内細菌は減少していました。
※門とは:細菌は門>綱>目>科>属>種と階層的に分類されており、一番大きな分類が門となっています。
マウスを使ったLPSと大動脈血管のプラークの関係性を調べた実験の結果、プロテオバクテリア門には特に差はみられませんでしたが、ファーミキューテス門が減少し、バクテロイデス門の増加傾向がありました。この「ファーミキューテス門が減少し、バクテロイデス門が増加する」というのはアテローム性動脈硬化の抑制が期待されるサプリメントを摂取した時と同じ腸内細菌叢の変化です。つまり、LPSは腸内細菌叢の改善を通してアテローム性動脈硬化を予防改善することが出来ると期待されています。
LPSは穀物や野菜、海藻などに多く含まれており、細菌自体が殺菌されてもLPSは食材の中に残るので、日々の食事で積極的に摂取することを心がけましょう。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。