「LPSを摂取すると肥満になる」という情報を見たことがあるかもしれませんが、実はこれは誤解。一般的に食品から取り入れるLPS(グラム陰性細菌の外膜に存在する物質)が肥満を引き起こすことはなく、むしろ体重増加を抑えるとも言われています。また、肥満は食べ過ぎや運動不足が主な原因とされていますが、腸内細菌バランスの乱れが引き起こすこともあります。
そこでここでは、LPSや腸内細菌がどのように肥満に関わっているのかを、詳しく解説していきます。
LPS摂取が肥満につながることはない!
LPS摂取が肥満につながるというような誤解がありますが、通常、口から取り入れるLPSで肥満が起こることはありません。
マウスを用いた実験でも、LPSを投与したマウスとしなかったマウスで体重の変化に大きな差はなく、臓器内にも異常がないことが確認されています。
さらに脂肪の多い食事を与えたマウスにLPSを投与すると、動脈硬化や体重増加が抑制されたという実験結果も発表されています。
リーキーガットによって肥満とともにLPS濃度上昇が起こる!
マウスに脂肪の多い食事を与える実験と、マウスの体内にLPSを注射する実験では、血液中のLPS濃度が高まり、体重の増加や体内の炎症がみられました。しかしこれは、経口によるLPS摂取が肥満につながることを示すものではなく、実際は「リーキーガット」によってLPS濃度の上昇と体重の増加、体内の炎症などが起こったと言えます。
リーキーガットとは、腸の上皮細胞を封印している結合(タイトジャンクション)が、何らかの原因で緩んで隙間ができ、その隙間から本来腸内にあるべき細菌や食物成分が腸から出て体内に入ってしまう状態のことです。
※小麦がリーキーガットを引き起こす流れ
リーキーガットの原因となる成分には、小麦タンパク質のグルテンや、アルコール、カフェイン、唐辛子成分などが挙げられますが、食物アレルギー、感染症、腸内環境の乱れによっても引き起こされると考えられています。
つまりこの実験結果は、脂肪が多い食事で腸内細菌バランスの乱れて、リーキーガットが引き起こされ腸内細菌やLPSが体内に侵入することで炎症が起こる、ということを示しており、LPSと肥満を紐付けるものではないのです。また、健康な人の腸内にはLPSが常に存在しており、LPSの経口摂取が原因でリーキーガットが引き起こされることはありません。
一般的な肥満の原因は?
肥満は一般的に、脂肪組織が過剰にあり、BMIが30以上ある状態だと定義されています。肥満は、食べ過ぎや運動不足が主な原因ですが、これは満腹感を促すホルモンや、代謝に関わる因子が正常に働かないという遺伝的な要因で引き起こされる場合もあります。また、腸内細菌バランスの乱れが肥満につながるとも考えられています。
肥満は腸内細菌とも関係あり!?
近年、肥満の人と普通の人の腸内細菌バランスが異なることが多くの研究でわかってきています。
実際に、肥満と痩せ型の双子の腸内細菌をマウスの腸に移植する実験では、肥満の人の腸内細菌が移植されたマウスは太り、痩せた人の腸内細菌が移植されたマウスは痩せるという結果が報告されました。また、肥満には特定の細菌が関わっているのではなく、腸内細菌の多様性が低下していることが原因として考えられています。
肥満には腸内細菌が作り出す「短鎖脂肪酸」という成分が大きく関わっています。腸内細菌が食物繊維などを分解することで作られる、酢酸、酪酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸は、人間のエネルギー源となるだけでなく、以下のような多様な働きを持っています。
・交感神経を刺激することで体温の上昇やエネルギー消費を促す
・脂質や糖の代謝促進
・脂肪蓄積の抑制
・食欲を抑制するホルモンを腸管内分泌細胞に分泌させる
このことから、短鎖脂肪酸を生み出す腸内細菌の割合は、肥満のなりやすさに深く関係していることがわかります。
以上のことから、腸内環境を整えることや、LPSを摂取することは肥満予防につながると考えられます。LPSは野菜や穀物、海藻などに含まれるほか、サプリメントなどもあるので、積極的に摂取するとよいでしょう。また、栄養バランスのよい食事を心がけることも大切です。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。