傷口からLPSが入ったらどうなる?~危険性はない!&LPSには傷に対する嬉しい効果も~

LPSはグラム陰性細菌の細胞壁に埋め込まれている成分です。「細菌の一部だから、傷口に入ったら良くないことがあるのでは?」と思う人もいるのではないでしょうか。

LPSを食事やスキンケアに取り入れた場合は、免疫機能を活性化したり肌をすこやかに導いたりと、からだに良い効果がたくさん期待できます。一方で、LPSを血液に注入すると、量によっては強い炎症を起こすこともわかっています。

では、皮膚や胃腸が傷ついていた場合はどうなるのでしょうか?もしかしたら炎症を起こしてしまうのでは?という疑問が生じますね。この記事では、傷口からLPSが入った場合に起こることを解説していきます。

傷口からLPSが入っても危険はない!

LPSを含む細菌やウイルスが血液に入ってしまうと、炎症が起こることがあります。

たとえばコレラ菌もLPSを持つグラム陰性細菌ですが、コレラ菌が血液に入った場合、LPSなどの構成成分や菌が作る毒素に反応した免疫細胞が炎症性サイトカインを出し、細菌を退治しようと攻撃を始めます。これによって敗血症(全身に炎症が広がって臓器不全を起こす病気)が起こります。

しかし、LPSを口から取り入れても敗血症にはなりません。なぜなら口~消化器官の中はそもそも常在菌が多く、細菌が存在することが平常だからです。そのため、食事でLPSを摂取しても体内で炎症が起こることはありません

では、傷口に入った場合はどうでしょうか。LPSが傷口に触れたとしても、炎症を起こすほどの影響力を持ったまま血液の中に入ることはありません。なぜなら、LPSは糖と脂質でできており、体や血液の中に入るとこの糖や脂質は、体内の脂肪やコレステロールを運ぶLDLなどに取り込まれて影響力を失ってしまうからです。実際、血液にLPSを混ぜてみたところ、LPSはそれほど検出できなかったという実験結果もあります。

傷口から侵入したLPSが血液や臓器に到達するには、生きたままのグラム陰性細菌とともに運ばれることが不可欠です。生きたグラム陰性細菌が体内に入った場合、いったん増殖し、やがて死滅します。このときLPSが放出されますが、LPSが体内の脂質に結合しきれないほど多量であった場合にはじめて、炎症を起こすほどの影響力を持つことができるのです。

そのため、グラム陰性細菌から分離されたLPS単体が傷口から入ってしまっても、血管などに入って炎症を起こすことはまず考えられないのです。

LPSの傷口に対する効果は?

LPSは、炎症を心配するどころか、皮膚の免疫機能も活性化するため、傷に対しては良い効果がたくさん期待できます

皮膚は乾燥した空気や花粉など、外界の異物や刺激に常に接触しているため、免疫機能が備わっているのです。たとえば、皮膚の新しい細胞が生まれるのを助けたり(ターンオーバー)、古くなった細胞や老廃物を除去する、傷口から病原菌などが侵入したときに排除する、シミや傷などが治るのも、免疫のおかげです。

私たちの肌のもっとも外側には表皮があり、その下に真皮があります。そして表皮は角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4つの層から構成されており、角質層と顆粒層の間には、水分の蒸発や異物の出入りを阻むシールドの役目をしているタイトジャンクションがあります。

LPSもこのタイトジャンクションより下に行くことはできませんが、肌を構成するケラチノサイトや炎症を抑える制御性T細胞は、LPSのシグナルを受け取る受容体を持っています。そのためLPSは、肌の内部に入り込むことはできなくても、シグナルを送って皮膚の免疫系に働きかけ、免疫機能を活性化することができるのです。

では、LPSによって傷口にどのような影響があるのか詳しく見ていきましょう。

マクロファージなどの免疫細胞によって傷の修復が進む

私たちの体の中には、体に侵入した細菌を食べて退治したり、細菌感染を防いだりするマクロファージなどの免疫細胞があります。

皮膚に怪我をしたり目の角膜が傷ついたりすると、LPSへの反応が高まり、細胞を修復するための情報を伝えるサイトカインが産生されます。するとサイトカインがマクロファージなどの免疫細胞を集めて、傷の修復が早くなると言われているのです。

ー酸化窒素によって傷の治りが早まる

表皮を構成する細胞であるケラチノサイトは、LPSの刺激を受けると一酸化窒素を出すことがわかっています。

一酸化窒素には傷の修復を助ける、紫外線ダメージによる細胞の死滅を防ぐ、接触性過敏症(アレルゲンによって湿疹やかゆみなどが起きる病気)を抑えるといった効果が期待できます。

日ごろから「傷の治りが遅い」と感じている人は、LPS配合の化粧品でスキンケアをしてみませんか。

健康維持に欠かせないLPSを補給しよう

LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。

LPS活用事例

この記事の著者
やさしいLPS編集部

食用植物に共生するパントエア菌由来の“免疫ビタミン”LPSを提供する自然免疫応用技研株式会社です。当サイトでは、自然免疫、マクロファージ、LPSに関する情報と、当社の活動をお伝えします。

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