免疫は、身体にとって有害な物質を攻撃して排除したり、細胞を修復したり、病気が悪化するのを防いだりと、健康を維持するために重要な機能です。ところが、免疫機能に異常が起きると、体内の細胞組織を攻撃する「自己免疫疾患」を引き起こします。
ここでは、免疫が自分を攻撃するようになる理由や、代表的な自己免疫疾患、治療法について、わかりやすく解説します。
この記事の目次
免疫が自分を攻撃することがある
免疫機能に異常が起きると、自身の正常な組織にまで反応して攻撃をすることがあり、その状態を「自己免疫疾患」といいます。
免疫機能が正常に働いていれば、自身の組織と異物を区別し、病気の元である異物(抗原)に対してのみ反応し、攻撃して排除します。ところが免疫機能に異常が起きると、正常な組織を異物だと認識して異常な抗体を作ります。そして、体内の臓器や組織をターゲットにして攻撃し 、炎症を起こしてしまうのです。
免疫が自分を攻撃するようになる理由
免疫が自分を攻撃するようになる要因にはさまざまなものがあります。考えられる理由について見ていきましょう。
変化した物質が異物と認識されてしまう
ウイルスなどの異物が体内に入ると、体内の細胞が変化し、その刺激によって免疫細胞が攻撃をするという仕組みになっています。そのため、体内に存在する正常な物質でも、ウイルスや紫外線、薬などの環境要因によって変化すると、異物と認識されて攻撃されることがあるのです。
入ってきた異物が体内に存在する物質に似ている
体内に存在している物質と似ている異物が入ってくると、それが体内に存在している問題のない物質なのか、異物なのか、見分けがつかなくなる場合があります。こうなると異物のみならず、体内の物質も攻撃の対象になることがあります。
抗体の産生を調節する細胞の異常
抗体の産生を調節する細胞の機能に異常が起きると、体内の細胞をターゲットにして攻撃する、異常な抗体が作られると考えられています。
ウイルスなどの異物が体内に侵入すると、免疫の司令塔であるリンパ球の一種の「T細胞」が、異物を破壊する働きがある「キラーT細胞」に司令を出し、「B細胞」に抗体を大量に作るように命令します。ところが、B細胞の機能に障害が起きると 異常な抗体が作られてしまい、正常な細胞も攻撃のターゲットにしてしまうのです。
体内の別の場所にあるべき物質が血管内に入ってしまう
例えば腸内に存在していても攻撃対象にならない物質も、血管内に入ると攻撃対象になるといったことがあります。このように、本来は別の場所に存在しているべき物質が血管内に入ってしまうと、血管内に存在している免疫細胞が刺激されて、攻撃を引き起こすことがあります。
遺伝
病気そのものではなく、自己免疫疾患を発症しやすい体質が遺伝することがあります。また、体質的に異物に対する感受性が強い場合、一般的なウイルス感染が、自己免疫疾患発症の引き金となることもあります。さらに、自己免疫疾患を発症するのは女性のほうが多いことから、ホルモンと関わりがあるとも考えられています。
代表的な自己免疫疾患
自己免疫疾患に分類される病気には実に多くの種類があり、攻撃を受ける場所によって症状が異なります。ここでは、代表的な自己免疫疾患についてご説明します。
バセドウ病
パセドウ病は、甲状腺が攻撃され、機能が活発になりすぎて甲状腺ホルモン値が高くなる「甲状腺機能亢進症」 です。自分の細胞を傷つける異常な抗体によって甲状腺が刺激され、甲状腺ホルモンが過剰に作られて発症します。
甲状腺ホルモンは、脳や心臓、胃腸の働きの活性化、新陳代謝の促進、体温の調節をする役割があるため、過剰に作られることで、過剰な発汗や不安、睡眠障害、体重の減少などのさまざまな症状につながります。
橋本甲状腺炎
橋本甲状腺炎は、甲状腺が攻撃され、機能が低下して甲状腺ホルモン値が低くなる「甲状腺機能低下症」です 。パセドウ病とは正反対で、甲状腺ホルモン量が不足して新陳代謝が悪くなります。疲労感があり、寒さに耐えられないといった症状が見られ、生涯にわたって甲状腺ホルモン補充の治療が必要です。
原因は不明ですが、甲状腺を攻撃する抗体が作られて徐々に破壊され、甲状腺ホルモンの分泌ができなくなり発症すると言われています。
膠原病
膠原病は一つの病気の名前ではなく、全身の血管や皮膚、関節、筋肉、内臓などが炎症や変形を起こす病気の総称で、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、血管炎、強皮症などが含まれます。
症状は多彩で、発熱、湿疹、関節痛、筋肉痛、筋力低下、こわばりなどのほか、全身の倦怠感が見られる場合もあります。
原因は不明ですが、遺伝的な要因と、紫外線、感染症、ストレスなどの環境による要因が絡み合い、免疫機能に異常をきたして発症すると考えられています。
関節リウマチ
関節リウマチは、関節が攻撃されて炎症を起こして腫れや痛みが生じる「炎症性関節炎」の一つです。炎症による痛み、起床直後や長時間動かさない場合のこわばりが見られ、疲れや脱力感を感じる人もいます。
正確な原因は不明ですが、免疫機能の異常により、関節の内側を包んでいる組織が攻撃され、次第に関節の軟骨や骨がすり減って変形が生じます。
全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデスは、関節、神経系、血管、皮膚、腎臓、消化管などの臓器が攻撃されて炎症を起こす病気です。発熱、全身の倦怠感、攻撃された臓器の腫れや痛みなど、さまざまな臓器の障害が一度に、または次々に起こります。
根本的な原因は不明ですが、遺伝的な要因、紫外線、感染症、特定の薬剤の使用などによる免疫異常が原因で発症すると言われています。
血管炎
血管炎は、動脈、毛細血管、静脈などの血管が攻撃されて炎症や血流の不具合が起き、さまざまな組織や臓器が攻撃される病気です。
はっきりとした原因はわかっていませんが、血管や血管の一部を異物と認識し、免疫細胞が血管の中に入り込んで発症すると考えられています。血管が傷つくと、血液が漏れやすくなったり詰まったりして、組織への血流が滞ります。傷ついた血管の太さや位置によって攻撃される臓器も異なり、症状もけいれん、腹痛、心臓発作、脳卒中、腎機能障害など、多岐にわたります。
1型糖尿病
1型糖尿病は、インスリン(血糖を下げる働きがあるホルモン)を作るβ細胞が攻撃により破壊されて、インスリンがほとんど出なくなる病気です。常に血糖値が高い状態が続き、強い喉の乾き、尿量の増加、強い空腹感などの症状が現れます。
小児期や青年期のウイルス感染や栄養状態など、環境要素がもとで発症するほか、遺伝によりかかりやすくなる場合もあると言われています。 インスリンをほとんど作れない、または、全く作れなくなるため、生涯にわたってインスリン治療が必要です。
自己免疫疾患の治療法
自己免疫疾患の治療では、主に免疫抑制剤(免疫機能の働きを抑える薬)を使った免疫抑制療法が行われます。ただ、免疫抑制剤は、問題が発生している免疫機能だけでなく、正常な免疫機能も抑えてしまうため、感染症やがんにかかる可能性が高まります。
慢性の自己免疫疾患を治療するためには、長期に渡って薬を服用して、症状を制御しなくてはいけません。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。