ウイルスなどの異物から身体を守り、正常な状態に保つ機能「免疫力」。免疫力が低下すると、病気にかかりやすくなるだけでなく、病気が悪化するリスクを高めてしまうため、常に免疫力アップを心がける必要があります。
実は、 腸内環境の改善は免疫力アップの重要なポイントであり、発酵食品の味噌を使った味噌汁は、免疫力アップが期待できる嬉しい食べ物なんです。
そこでここでは、味噌汁が免疫力アップにいい理由や味噌の選び方などを、免疫力アップにおすすめの味噌汁の定番具材と合わせてご説明します。
この記事の目次
味噌汁が免疫力アップにいい理由
免疫機能を担う免疫細胞は、約70%が腸内に存在しているため、腸内環境が乱れていると免疫力も低下してしまいます。つまり、免疫細胞の働きを良くして免疫力を高めるためには、腸内環境を整えることが重要なポイントとなるのです。
発酵食品の味噌には、体に良い影響をもたらす有用菌(いわゆる善玉菌)のエサとなって有用菌を増やし、腸の働きを活発にする成分が豊富に含まれています。さらに、味噌汁に使用する野菜やきのこ類、海藻などの具材は、免疫細胞の強化に大切なビタミン類やミネラル、さらに、整腸作用がある食物繊維などが豊富に含まれています。
味噌の原料・成分と免疫力アップの関係
味噌には免疫力アップに役立つ原料や成分が豊富に含まれています。それぞれの原料や成分の効果をご紹介します。
大豆
味噌の主原料である大豆には、細胞の主成分となり、免疫細胞を活性化する働きがある良質なたんぱく質「大豆たんぱく質」が豊富に含まれています。
その他、腸のぜん動運動を活発にして消化を良くし、腸内環境を整える不溶性食物繊維、細胞分裂や新陳代謝を促して免疫細胞を活性化させる亜鉛、細胞の酸化を防ぐ大豆イソフラボンなども含まれています。
麹菌
麹菌は、麹を作るためのカビの一種。たんぱく質をアミノ酸に分解するプロテアーゼなどの多くの酵素を生成し、消化や吸収が効率良くできるようにサポートをします。
さらに、酵素によって生み出されたオリゴ糖がエサとなり、腸内の有用菌が活性化されます。
酵母菌
酵母菌は、糖をアルコールと炭酸ガスに分解する菌のこと。体内で分解されずに腸内の免疫機能を整えるβグルカン(不溶性食物繊維の一種)が含まれています。腸内の働きが活性化されて免疫力アップにつながります。
乳酸菌
乳酸菌は、糖類を分解して乳酸を生成する細菌の総称で、ビフィズス菌、ガセリ菌など、実に多くの種類があります。乳酸菌は有用菌の代表的な存在で、体に悪影響を及ぼす菌(いわゆる悪玉菌)の増殖を抑えて腸内細菌のバランスを保ち、免疫力アップにつながります。
免疫力アップのための味噌の選び方
免疫力アップを考えるなら味噌の選び方も大切です。白味噌や赤味噌、黒味噌などさまざまな種類の味噌がありますが、免疫力アップにおすすめなのは、赤味噌や黒味噌などの色が濃い味噌です。
味噌は、麹によって発酵する際に、原料の大豆などのアミノ酸と糖が反応して「メイラード反応」が起こり、色が褐色に変化します。この反応は高温で長時間熟成されるほど強く、濃い色の味噌になるのです。
メイラード反応が起こると、味噌の抗酸化作用が高まり、腸内の有用菌を増やすメラノイジンという成分が増加します。つまり、長期熟成された赤味噌や黒味噌などでは強いメイラード反応が起こっており、身体に良い物質が多く含まれているため、より免疫力アップに期待できるのです。
免疫力がアップする!味噌汁の定番具材
味噌汁は、味噌と一緒に、栄養豊富な野菜やきのこ類、海藻類なども摂取できる、バランスが良いメニューです。最後に、免疫力アップにおすすめの、定番具材の成分や効果について見ていきましょう。
ねぎ
ねぎには抗酸化作用があるカロテン、免疫細胞である白血球の働きを強化するビタミンC、抗菌作用や抗ウイルス作用があるネギオールが含まれています。
さらに、ねぎの白い部分に含まれている辛味成分の硫化アリルには、血行を良くして身体を温める作用があります。血行がよくなると血液中の免疫細胞の働きも活性化されるため、免疫力アップにつながります。
豆腐
豆腐には、細胞の主成分であるたんぱく質、抗酸化作用がある大豆サポニンや大豆イソフラボン、腸内の有用菌を増やすオリゴ糖、皮膚や粘膜を健康に保って異物の侵入を防ぐビタミンB群などが豊富に含まれています。そのため、免疫細胞の活性化や腸内環境の改善などによって、免疫力アップにつながります。
わかめ
わかめには、免疫細胞を強化するヌメリ成分のフコイダン、整腸作用がある食物繊維のアルギン酸、免疫細胞を活性化するマグネシウムや亜鉛、抗酸化作用があるクロロフィルなどが豊富に含まれています。
また、免疫力アップで近年注目されている物質に、LPSがあります。LPSは免疫細胞のマクロファージを活性化して免疫力を高める働きがあります。LPSはグラム陰性細菌という種類の細菌の外側にくっついている物質なので、細菌がたくさん存在する土の中で育つ食物にもLPSが豊富に含まれます。海藻もLPSの含有量が多い食材の代表格であり、わかめにも豊富なLPSが含まれています。
なめこ
なめこは、免疫細胞を活性化するβグルカン(不溶性食物繊維の一種)が豊富な食材です。不溶性食物繊維と水溶性食物繊維には、腸内での糖質の吸収を防いだり、有用菌を増やしたりする働きもあり、腸内環境を整えることで免疫力アップにつながります。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。