カレーやハンバーグ、肉じゃがなど、さまざまな家庭料理に使われる万能食材、玉ねぎ。煮ても焼いても生でも食べられる玉ねぎですが、アレルギー症状を引き起こす可能性があること、ご存知ですか? まだ症例数が多くなく、知られていない玉ねぎアレルギーについて、その原因や対処法などについて詳しくご紹介します。
この記事の目次
食べ物アレルギーとは
厚生労働省によると食物アレルギーは「摂取した食物が原因となり免疫学的メカニズムを介して、じん麻疹・湿疹・下痢・咳・ゼーゼーなどの症状が起こること」と定義づけられています。
アレルギーは免疫反応の一つであり、人体にとっての異物を排出するためのメカニズムなので、通常は体の栄養源となる食物には反応しません。しかし、免疫機能や消化吸収機能に何らかの問題があると、食べ物を異物だとみなして免疫機能が過剰に反応してしまい、諸症状が起きてしまうのです。
アレルギーは、大きく分けて即時型と非即時型(遅延型)の2つに分けられます。
⚫︎即時型:食物を摂取した直後から2時間以内ぐらいにアレルギー反応を認めることがほとんど。免疫グロブリンE(lgE抗体)とよばれるたんぱく質が介在して起きることがわかっています。
⚫︎非即時型:免疫グロブリンE(lgE抗体)に依存しない非即時型は、食物を摂取してから数時間後に湿疹・掻痒などの皮膚症状が主に認められますが、詳しいメカニズムは未だ明らかにされていないようです。
▼アレルギーの分類やメカニズムについての詳細はこちらの記事も参照してください。
玉ねぎを食べると具合が悪くなるのは食べ過ぎ?アレルギー症状?
玉ねぎを食べると、鼻水や喉の違和感などの粘膜症状、腫れや発赤などの皮膚症状、吐き気や頭痛などの症状が見られることがありますが、この原因は一体何なのでしょうか?
生玉ねぎの過剰摂取によるアリシン中毒
上記のような症状は、玉ねぎ特有の匂いの元である硫化アリル(主にアリシン)という物質によって引き起こされるとされています。
玉ねぎを切っていると涙が出てくることがありますよね?これは、アリシンの強い刺激が原因です。このアリシンの刺激が胃の中で起こると、胃酸が多量に分泌されるため、吐き気、嘔吐を引き起こすことがあるのです。また、腸にまで届くと、ぜん動運動が活発になりすぎて腹痛や下痢を引き起こす可能性があります。
他にも、アリシンがもつ強い殺菌作用が、腸内の善玉菌まで殺してしまい、腸内環境が悪化し、腹痛や下痢・便秘などを引き起こしてしまうこともあるようです。
ここまでの解説で、厄介モノのように思われるかもしれませんが、アリシンにはビタミンB1の吸収を高めたり、血液をサラサラにしたりする働きもあるため、少量を摂取する分には、体へのポジティブな影響もあることを補足しておきます。
玉ねぎがアレルゲンとなっておこるアレルギー反応
玉ねぎは食品表示基準に定められた品目ではないため、あまり馴染みがないかもしれませんが、食物アレルギーを起こす可能性があります。主な症状は、他の食物アレルギーと同様、以下が挙げられます。
⚫︎喉がイガイガ
喉がイガイガするなど、口や喉の違和感は、アレルギーの粘膜症状の1つです。玉ねぎを触った手で目を触ると、目が腫れたり充血したりすることもあります。
軽度の症状は時間とともにおさまっていきますが、進行すると顔全体が腫れてしまうことがありますので、その場合は、手元に緊急時薬があれば内服して受診をしましょう。
⚫︎吐き気
玉ねぎを食べた後に起こる胃の不快感は、軽度の消化器症状である可能性があります。我慢ができる程度であれば経過観察しながらおさまるのを待ちます。もし、症状が進行し、嘔吐を繰り返したり、激しい腹痛が続いたりする場合は、病院受診をした方がよいでしょう。
⚫︎下痢
下痢も同様に、アレルギー反応の1つです。1〜2回の軟便や下痢という軽症でおさまる場合もあれば、進行して何度も下痢を繰り返す場合もあるので病院受診をしましょう。
⚫︎玉ねぎの1日の摂取量を知っておこう!
1日に摂取して良い玉ねぎの量は、生食の場合50g程度(中サイズ1/4相当)が適量とされています。子どもの場合は、その半量の25gが適量ですが、辛味成分があり、刺激が強いので加熱してあげるほうが安全でしょう。
加熱した玉ねぎであれば、1日200g程度まで食べても問題ないようですが、1日の野菜摂取目標350gは、さまざまな野菜をバランスよく食べることで、色々な栄養素を摂ることができるため、偏りがない食事を心がけてみてください。
玉ねぎアレルギーが心配な場合は検査をしよう
玉ねぎを食べるたびに不調が起こる場合は、医療機関でのアレルギー検査を受けたいところですが、玉ねぎアレルギーの症例数が多くなく、重篤度も低いことが多いため、一般的な検査の対象でない可能性があります。検査可否についての詳細は、お近くの病院等へ相談してみてください。
玉ねぎアレルギーは花粉症とも関係がある?
花粉症の方が特定の果物や野菜などを食べると、唇、舌、口の中や喉にかゆみやしびれ、むくみなどのアレルギー症状を引き起こす病気を「口腔アレルギー症候群」といいます。
イネ科の花粉症(カモガヤやオオアワガエリ)を患っている方が玉ねぎを食べると、この口腔アレルギー症候群になる可能性が高いとされているため、注意が必要です。
免疫機能を高める成分LPSでアレルギー体質を改善
アレルギー対策として、まず原因となるアレルゲンを回避することが大事ですが、アレルギー反応には身体の免疫機能が関わっているため、規則正しい生活や適度な運動、バランスのよい食事など、免疫力を高める生活も心がけましょう。
免疫力を高めるために役立つとされているのがLPS(リポポリサッカライド)。「免疫ビタミン」とも呼ばれている、土の中にも存在するグラム陰性細菌の成分です。根菜などの野菜や玄米などに多く含まれています。
LPSは、免疫細胞「マクロファージ」の働きをサポートすることで免疫力を高めることに貢献しています。マクロファージは私たちの体内のあらゆる場所に存在しており、病原菌やウイルスなどの異物が侵入してきたらこれを捕獲し、食べて排除します。体の健康を維持するためには、マクロファージが元気に活躍することが大切です。免疫力を高めるためにはLPSを積極的に取り入れるとよいでしょう。
▼LPSの含まれた食品は何?効率よく摂取するコツも解説
また、LPSには花粉症予防の効果も期待できるため、イネ科の花粉症と玉ねぎの交差反応で起きる口腔アレルギー症候群の抑制にもつながるでしょう。
▼LPSで花粉症を予防できる?そのメカニズムとLPSの取り入れ方とは?
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。