頭痛を引き起こす原因は実にさまざまで、病院を受診してもなかなか改善の糸口が見つからないこともしばしば。当記事では、頭痛を引き起こすとされる原因のうち、アレルギーによる頭痛について詳しく解説します。
この記事の目次
頭痛を引き起こすアレルギー2つとその症状
そもそも頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛のように繰り返し起こる慢性頭痛(一次性頭痛)と、他の疾患が原因となり起こる頭痛(二次性頭痛)に分けられます。以下では、二次性頭痛があらわれる代表的な疾患を紹介します。
食物アレルギー
アレルゲンとなる食物を食べることで頭痛を誘発するのでは?という説がありますが、まだ、はっきりとした因果関係は明らかにされていません。しかし、片頭痛と遅延型食物アレルギーとの関係を調べた研究(*1)があり、以下のようなことが明らかになっています。
56人の片頭痛を持っている人と片頭痛を持たない56人で遅延型食物アレルギーを調べたところ片頭痛を持っている人では100%、持っていない人では21%に何らかの食物にアレルゲンとしての反応がみられ、6ヶ月間の陽性食物の除去によって56人中43人で片頭痛発作が消失、4人が改善、9人が変化なしでした。
また別の研究でもアレルゲン除去食で片頭痛持ちの人の半数で頭痛の起こる回数が少なくとも30%は減少したとの報告(*2)がみられます。アレルゲンが直接の原因かどうかははっきりしていませんが、可能性のある食物を除去することで片頭痛の予防に効果的であると言えるのではないでしょうか。
<参考文献>
*1:Food allergy mediated by IgG antibodies associated with migraine in adults. Rev Alerg Mex. 2007 Sep-Oct;54(5):162-8.
*2:Diet restriction in migraine, based on IgG against foods: a clinical double-blind, randomised, cross-over trial. Cephalalgia. 2010 Jul;30(7):829-37.
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎とは、アレルゲンが鼻粘膜から侵入し、鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状が引き起こされる病気のことです。
アレルギー性鼻炎の悪化による鼻づまりで、頭痛を引き起こすことがあります。また、鼻炎の症状そのものが頭痛を引き起こすのではなく、鼻がつまって口呼吸になったり、息苦しくて眠りにくく睡眠不足になったり、普段とは違う状況に置かれることによって生じる精神的ストレスが頭痛の原因となる場合もあります。
アレルギー性鼻炎を引き起こす代表的なアレルゲンは、ハウスダストや花粉などがあります。
●ハウスダストアレルギー
ハウスダストとは、家の中のチリやホコリの中でも、1mm以下の目に見えにくいものを指します。そこには、ダニの死がい・フンのほか、カビ、細菌、花粉、衣類などの繊維クズ、人間の体から落ちた皮膚片やフケ、ペットの毛など、さまざまなものを含むのです。
ハウスダストは非常に小さいため空気中に舞い上がりやすく、吸い込むことで、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみや痛み、皮膚の炎症・かゆみ、肌の乾燥、喘息やせきなどの症状を引き起こします。
●花粉によるアレルギー
スギやヒノキなどの植物の花粉が原因で生じるアレルギー症状を「花粉症」と呼びます。季節性アレルギー性鼻炎と呼ばれることもあり、主にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、充血などが起こるのです。また、のどや皮膚のかゆみ、下痢、倦怠感などの症状が現れる人もいます。
寒暖差アレルギー
温度差が刺激となって、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどが生じる「寒暖差アレルギー」は、アレルゲンによるものではないため、正確にはアレルギーではなく医学的には「血管運動性鼻炎」と呼ばれます。
寒暖差による刺激を受け続けることにより自律神経のバランスが乱れ、鼻の粘膜の血管の収縮・拡張の調節ができなくなることが原因のようですが、そのメカニズムは未だ解明されていません。このようにアレルギー性鼻炎に似た粘膜症状のほか、頭痛やだるさなどが現れることもあります。
アレルギー症状が出やすい人・出にくい人の違い
アレルギーの原因となるアレルゲンの基準量は人それぞれ決まっており、その量を超えてしまうとアレルギー症状が起きます。アレルギーは誰もがなるわけではなく、アレルギー症状が出やすい人、出にくい人の違いはあるようです。
・遺伝
アレルギーは遺伝的な影響が大きいとされています。家族などにアレルギー体質の人がいる場合は、アレルギーを起こす可能性があります。
・環境要因
食生活の乱れ、睡眠不足、ストレスなどもアレルギーを起こす可能性があります。体を守る免疫細胞の約70%は腸内に存在しています。腸は身体の中で最も大きな免疫機能を担っている器官であり、免疫力を高めるためには、腸内環境を整えるのがポイントです。
・抵抗力の低下
病気などで抵抗力が低下している場合には、アレルギーを起こしやすくなる可能性があるため注意が必要です。
・細菌成分「LPS」の不足
近年、アレルギーに悩む人が増えた原因のひとつに、衛生状態が良くなって細菌に接する機会が減っていることがあげられています。事実、ヨーロッパでの調査結果では、動物や土壌に触れる機会が多い子どもは、そうではない都市部の子どもと比較して、花粉症や喘息の症状が少ないという結果が出ています。この調査から、幼少期に細菌成分であるLPS(リポポリサッカライド)の自然摂取の低さが、アレルギー体質の増加と相関関係にあることが示されています。
LPSとは
LPS(リポポリサッカライド)とは、土の中や食物、空気中に存在している「グラム陰性細菌」の一番外側にある外膜に埋め込まれている物質です。
LPSには、病原菌などの異物を排除するために役立つ細胞「マクロファージ」を活性化させる働きがあり、免疫力の向上に役立つことから、別名「免疫ビタミン」とも呼びます。アレルギー症状をはじめ、アトピー、肌荒れ、糖尿病などの予防にも有効とされており、簡単に言えば、LPSは病気やウイルスに負けない体の基本要素と言えるでしょう。
▼詳しくはこちらの記事もご覧ください。
アレルギーによる頭痛を予防する方法
このような頭痛が起きないようにする予防法には、どんなものがあるのでしょうか?
食物アレルギー
直接的な原因かどうかは明らかではないものの、前述の通り、アレルゲンを食べないようにすることで片頭痛の症状が消滅・改善する可能性があります。試してみたい方は、まず検査を受けてアレルゲンを特定することからはじめてください。食品衛生法によりアレルギー表示が義務づけられていますので食べないようにしてください。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎を予防する方法として、アレルゲンを除去することが効果的とされます。ハウスダストと花粉、それぞれの対処法について簡単に紹介します。
●ハウスダストアレルギー
目に見えないハウスダストを除去するには、こまめに掃除機をかけることが一番です。人間の手で掃除機をかけるより、掃除ロボットを使用する方がハウスダストを減らす点では効果的とされています。
布団やソファなども忘れずに。掃除機をかけるだけでなく、ソファや布団のカバーをこまめに洗濯することも効果的です。
また、適度に換気を行い、湿度が高くならないよう工夫することで、カビや細菌の増殖を抑えることもできます。
●花粉によるアレルギー
花粉症の症状を抑える3原則は「吸わない」「つけない」「持ち込まない」です。
⚪︎吸わない
マスクを着用し、口や鼻から花粉を吸い込まないようにしましょう。症状が重い方は、花粉が多い日の外出を控えることも方法の一つです。
⚪︎付けない
手洗い、うがい、洗顔をして、手や顔についた花粉を洗い流しましょう。
ウール製の衣服はコットンや化学繊維よりも花粉が付着しやすいため、ウール製のアウターは避け、ツルツルした素材のものを選びましょう。
また、洗濯物に花粉がつかないよう部屋干しがおすすめです。
⚪︎持ち込まない
帰宅時、服についた花粉をはたいて、室内に持ち込まないようにしましょう。また、帰宅後すぐに着替えてシャワーやお風呂で体や髪についている花粉を洗い流すことで室内に入る花粉を減らすことができます。
寒暖差アレルギー
体に感じる温度差をなるべく小さくすることが大切です。外出時にさっと体温調整できるように、カーディガンやジャケット、膝掛けなどを持ち歩くと良いでしょう。
太い血管が通っている首まわりをスカーフやマフラーで温めることも効果的。手首・足首も手袋や靴下で守っておくことも忘れないようにしましょう。
LPSでアレルギー体質改善
LPSを摂取することで、アレルギーを抑えることに繋がる可能性があります。
・アレルギーの原因は「免疫バランス」の乱れ
免疫細胞のヘルパーT細胞には「Th1細胞」と「Th2細胞」の2つがあり、それぞれアレルギーの原因である「抗原」によって使い分けられます。
現代社会は、清潔な環境が増えたことから細菌やウイルス感染の機会が減っています。そのため、細菌やウイルスを排除する「Th1細胞」の数が減少しています。しかし、花粉や埃などを排除する「Th2細胞」は活躍する場面が多いことから数が増加しているため、2つの細胞がアンバランスな状態になっています。
Th2細胞が増えすぎると、本来味方であるべき細胞にも攻撃するようになるため、アレルギー症状が起こります。そのためTh1細胞とTh2細胞のバランスをとることがとても大切なのです。このバランスをとるために重要な働きをするのが、「マクロファージ」や「NK細胞」です。
・LPSはTh1細胞とTh2細胞のバランスをとる
LPSはマクロファージやNK細胞を活性化させる働きがあります。そのため、Th1細胞とTh2細胞の崩れたバランスをとるのに役立ち、アレルギー症状の予防が期待できます。
実際に、マウスにスギ花粉を与えて花粉症にする実験では、スギ花粉とともにLPSを与えると、そうでないマウスと比較して花粉症の症状が少ないことが明らかになりました。
・LPSを摂取する方法
LPSが含まれた食品を普段の食事に取り入れたり、LPS配合のサプリメントで効率的に摂取したりするのもおすすめです。
▼LPSの含まれた食品は何?効率よく摂取するコツも解説
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。