健康志向の高まりからか、スーパーや飲食店などで、手に取りやすくなった豆乳ですが、口にすると、口や喉に違和感を覚えたり、下痢や腹痛などアレルギー反応に似た症状があらわれたりする場合があります。
当記事では、この口腔内の違和感や嘔吐・下痢などの症状が起きる原因の一つである食物アレルギーに着目し、そのメカニズムや対処方法などについて詳しく解説していきます。
この記事の目次
食物アレルギーとは?昔より増えているって本当?
近年、食物アレルギーや花粉症、アトピー性皮膚炎などアレルギーに悩む人が急増しており、なんらかのアレルギー疾患にかかっている人は、人口の30%以上に及ぶとされています。
アレルギーの増加の理由は、まだ十分解明されていませんが、原因のひとつに、衛生状態が良くなって細菌に接する機会が減っていることがあげられています。つまり、衛生状態が良くなったことで感染症などは減少していますが、それと引き換えにアレルギー疾患の発症が増加したと考えられています。
ヨーロッパで行われた調査によると、土や動物に多く触れている農村部の子どもはそのような機会が少ない都市部の子どもに比べ、花粉症や喘息などアレルギー症状が出る頻度が低いという結果が出ています。
子どものころから土に多く触れているということは、土に含まれている細菌成分「LPS(リポポリサッカライド)」を自然に摂取しているということを表しています。このLPSに触れることが、アレルギー疾患の発症を抑えるポイントです。
こちらの記事ではアレルギーの詳しい説明をしています。見てみてください。
豆乳アレルギーのタイプと症状
豆乳アレルギーは、他の食物アレルギーと同様に、2タイプに分類され、それぞれに対処法が異なります。
食物アレルギーは2タイプに分類される
食物アレルギーは大きく分けて「クラス1」「クラス2」の2つに分類されます。
- クラス1
特定のアレルゲンに対してIgE 抗体*がつくられ、以降、同じアレルゲンを食べることで発症します。一般的なアレルゲンとして、卵、乳、小麦、大豆などがあります。主な症状は、蕁麻疹、嘔吐や下痢など
- クラス2
花粉症(特にカバノキ科)やラテックスアレルギーを持つ人が、類似したアレルゲンを持つ食物を食べることで引き起こされます。主な症状は口腔内や喉のかゆみやイガイガ感ですが、重症になると呼吸困難や顔全体のむくみなどが起きる場合もあります。原因となる食物として、果物や野菜、大豆や胡桃などが挙げられます。
*IgE 抗体:本来は体の中に侵入した異物を排除しようとする働きをもつたんぱく質の一種。IgE 抗体は、5種類ある抗体のうちの1つで、主に寄生虫を排除するのに役立っているが、時に体に害を与えない食物や花粉等に対して過剰に反応してしまうことがある。
豆乳アレルギーにも2タイプあるので要注意!
大豆は、クラス1の食物アレルギーを引き起こすことで知られているので、大豆が原材料の豆乳類や大豆飲料を飲むとアレルギー症状があらわれるのは、このメカニズムが背景にあると思うのは自然なことかもしれません。
ですが、その症状が口腔内に限定されていたり、豆乳以外の大豆製品を食べても症状がでない場合は、クラス2のタイプである可能性があります。
豆乳アレルギーの症状を引き起こさないための注意点2つ
豆腐は大丈夫でも豆乳でアレルギー症状が起きること
前章でお伝えしたとおり、豆乳アレルギーの中でもクラス2の場合は、豆乳以外の大豆製品を食べても症状がでない可能性があります。
花粉症やラテックスアレルギーを持っている方は、はじめて豆乳を口にする際、アレルギー反応がでないか慎重に観察すると良いでしょう。また、豆乳の中でも調製豆乳よりも無調整の濃い豆乳の方がアレルギーの発症率が高いとされているので、特に注意が必要です。
花粉症の予防が豆乳アレルギー予防につながる
シラカバなどカバノキ科の花粉は、大豆がもつ「Glym4」というアレルゲンと構造が似ているため、クラス2アレルギーを発症しやすい状態になります。
つまり、花粉症予防をすることは、豆乳アレルギーを予防することにつながる、とも言えるでしょう。
また、カバノキ科の花粉症を持つ人は豆乳以外にもバラ科の果物(りんご、もも、さくらんぼ、ビワなど)やセリ科のセロリや人参などでもアレルギー反応が起きる可能性が高いので、根本原因となる花粉症予防をすることが重要であると言えるでしょう。
豆乳アレルギーの人が日常的にできる対策
豆乳を飲んでアレルギー症状が起きた経験がある人は、以下の2点に注意しましょう。
豆乳の代替品を利用する
アレルギー症状の予防には、アレルゲンを含む食品を避けることが最も効果的です。豆乳の代わりに、アーモンドミルクやオーツミルク、牛乳などを使用してみましょう。味や風味は変わりますが、その違いをポジティブに捉え、色々な味わいを楽しめると良いですね。
低アレルゲンの豆乳を選ぶ
どうしても豆乳を使いたい場合は、アレルゲン性を抑えた「低アレルゲンの豆乳」を選ぶことがおすすめです。低アレルゲン大豆加工食品には、豆乳以外にも豆腐や煮豆、味噌などがあり、特殊な食品加工技術などによって、アレルゲン性を実質フリーにしたもので、さまざまな開発が進んでいます。
アレルギー反応を起こしにくいとはいえ、個人差があるため、自己判断せず医療機関へ相談することが望ましいでしょう。
LPSとは?
LPS(リポポリサッカライド)とは、土の中や食物、空気中に存在している「グラム陰性細菌」の一番外側にある外膜に埋め込まれている物質です。野菜や海藻などに多く含まれているLPS。これを摂取することでアレルギーの改善が期待できます。
- LPSは免疫のバランスをとる
アレルギー症状の予防には、免疫のバランスをとることが大事です。免疫細胞の一種であるTh1細胞とTh2細胞のバランスをとる際に重要な働きをするのが、身体に侵入してきた細菌やウイルスを直接攻撃するマクロファージやNK細胞です。LPSはマクロファージやNK細胞を活性化させる働きがあります。そのため、Th1細胞とTh2細胞の崩れたバランスをとるのに役立ち、アレルギー症状の予防が期待できます。
- 花粉症の予防
花粉症の予防が豆乳アレルギー予防につながる可能性があります。マウスにスギ花粉を与えて花粉症にする実験では、スギ花粉とともにLPSを与えられたマウスは花粉症の症状がほとんど出ないことがわかりました。花粉症をはじめアレルギー体質の人にとって、LPSは注目すべき成分といえるでしょう。
- LPSを摂取する方法
LPSが含まれた食品を普段の食事に取り入れたり、LPS配合のサプリメントで効率的に摂取したりするのもおすすめです。
▼LPSの含まれた食品は何?効率よく摂取するコツも解説
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。