りんごを食べた時に口や喉に違和感を覚えたり、下痢や腹痛などの不調が起きたりする「りんごアレルギー」と診断される方が増えていると言われています。
大人になってから発症するケースも多いため、突然、不調を感じるようになる可能性もあり、その背景には花粉症との深い関係があるのだとか!?
当記事では、りんごアレルギーが引き起こるメカニズムや主な症状、対処法などを詳しく解説。「もしかして?」と思う方は、ご一読ください!
この記事の目次
食物アレルギーは急に発症するので注意
食物アレルギーとは、摂取した食物が原因となり免疫学的メカニズムを介して、じん麻疹・湿疹・下痢・咳・ゼーゼーなどの症状が起こること。(参照:厚生労働省)
一般的に、食物アレルギーの多くは、食べた直後から約1時間以内(多くは15分以内)に、じん麻疹やかゆみなどの皮膚症状、下痢・嘔吐などの消化器症状、ゼーゼーや咳などの呼吸器症状が起きます。(これを即時型アレルギーと呼びます。)
りんごアレルギーは、りんごに含まれるアレルゲンが体内に入ることがきっかけで発症する即時型アレルギーで、口の中や喉など口腔内に違和感を覚えることがほとんどです。症状の持続時間には、個人差がありますが軽症の場合、15〜30程度でおさまることが多いようです。
昔はなかった食物アレルギーが大人になってから発症することはあるの?
食物アレルギーというと、子どもの小麦や卵などのアレルギーが多い印象がありますが、近年、大人になってから突然、発症する人が急増しています。
食物アレルギーが発症するメカニズムには、本来、私たちの身体を守るための「免疫」が大きく関係しています。
免疫は、大きく「自然免疫」と「獲得免疫」に分類されますが、そのうちの「獲得免疫」に異常が起こると、普段は身体にとって無害な物質(食物など)に対しても異物と判断して攻撃してしまうことがあり、これを食物アレルギーと呼びます。
食物アレルギーが増えている背景には、衛生状態が良くなって細菌に接する機会が減っていることがあげられています。
ヨーロッパで行われた調査によると、土や動物に多く触れている農村部の子どもはそのような機会が少ない都市部の子どもに比べ、花粉症や喘息などアレルギー症状が出る頻度が低いという結果が出ているのです。
土に多く触れているということは、土に含まれている細菌成分・LPSを自然に摂取しているということを表しています。この調査から、子どものころに土などにいる細菌に含まれるLPSに触れることが、アレルギー疾患の発症を抑えるポイントであると判明しました。
りんごアレルギーの代表的な症状と対処法
りんごを食べた後に、口の中や喉のかゆみや腫れ、ピリピリとした違和感などの症状が現れたら、バラ科のアレルギーを疑いましょう。
リンゴを含むバラ科アレルギーの主な症状は、口腔アレルギー症候群と呼ばれ、口の中や喉の粘膜に現れます。他にも、じんましんが出ることもあります。また、症状が進行するとアナフィラキシーや呼吸困難を引き起こす場合があるので、注意が必要です。
もし、症状が出てしまったら、かゆみや腫れが強くなければ、注意深く経過観察し、症状が進行するようなら受診をしましょう。もし、かゆみや腫れがひどい場合はすぐに受診、さらに重症(広範囲で強いかゆみ、腫れがある)の場合は、救急車を呼ぶなど緊急な受診が必要です。
加熱をすればアレルギー症状を抑えられるって本当?
りんごなど果物のアレルゲンは、熱に弱く、加熱により一部の抗原が低下します。実際に、様々な加熱方法(焼き、蒸し、電子レンジ、オーブン)の全ての加熱方法でアレルギーの低減が見られた調査結果*が報告されました。特にオーブン加熱と蒸し加熱でその傾向が高く見られたようです。
実際に、加熱処理をされたりんごや、ジャムやソース、ジュースなど加熱工程のある加工品なら食べてもアレルギー症状がでないこともありますが、個人差があるため、自己判断せず医療機関へ相談することが望ましいでしょう。
*リンゴの低アレルゲン化と抗酸化性に及ぼす調理条件の影響(赤石 記子, 織部 真由, 畔上 ほのか, 長尾 慶子)、(一社)日本調理科学会 2019年大会における発表
りんごアレルギーの症状を引き起こさないためのポイントは?
りんごアレルギーの症状を防ぐための1番の対処方法は、アレルゲンとなるリンゴを食べないことですが、他にも気をつけるべきポイントがあります。
りんごアレルギーの人が他に避けるべき食べ物
りんご以外のバラ科の食物もアレルギー症状を引き起こす可能性が高いので、過去にりんごアレルギーの症状が出た場合は、以下の食物も合わせて避けることが望ましいでしょう。
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- バラ科に属する食物
リンゴ、モモ、サクランボ、ビワ、洋ナシ、ナシ、スモモ、アンズ、イチゴ、など
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花粉症の人はりんごアレルギーになりやすい?
花粉症(花粉アレルギー)の人が、その花粉と似たアレルゲンをもつ食物を食べると「交差反応*」が起きてしまい、口腔アレルギー症候群と同じような症状が現れることがあります。
*交差反応:異なるアレルゲン(主にたんぱく質)であっても、似た形をした部位があるとアレルギー反応を引き起こしてしまうこと。
リンゴなどのバラ科の果物は、カバノキ科の植物と交差反応を起こしやすいことが認められています。シラカバ、ハンノキ、オオバヤシャブシなどをアレルゲンとする花粉症を持っている人は、リンゴを食べる際に注意が必要です。
つまり、花粉症予防をすることも、りんごアレルギーを予防することにつながる、とも言えるでしょう。
LPSとは?
LPS(リポポリサッカライド)とは、土の中や食物、空気中に存在している「グラム陰性細菌」の一番外側にある外膜に埋め込まれている物質です。野菜や海藻などに多く含まれているLPS。これを摂取することでアレルギーの改善が期待できます。
- LPSは免疫のバランスをとる
Th1細胞とTh2細胞のバランスをとる際に重要な働きをするのが、身体に侵入してきた細菌やウイルスを直接攻撃するマクロファージやNK細胞です。LPSはマクロファージやNK細胞を活性化させる働きがあります。そのため、Th1細胞とTh2細胞の崩れたバランスをとるのに役立ち、アレルギー症状の予防が期待できます。
- 花粉症の予防
大人の食物アレルギーは花粉症が深く関わっていることがわかってきました。マウスにスギ花粉を与えて花粉症にする実験では、スギ花粉とともにLPSを与えられたマウスは花粉症の症状がほとんど出ないことがわかりました。花粉症をはじめアレルギー体質の人にとって、LPSは注目すべき成分といえるでしょう。
- LPSを摂取する方法
LPSが含まれた食品を普段の食事に取り入れたり、LPS配合のサプリメントで効率的に摂取したりするのもおすすめです。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。