新型コロナの流行で、免疫力アップに関心が寄せられています。そんな中で注目を集めているのが、マクロファージを活性化する成分・LPSです。免疫力を高める食材としては納豆が有名ですが、LPSとはどのような関係があるのでしょうか?
この記事では、LPSと納豆について紹介します。
この記事の目次
LPSはマクロファージを活性化する細菌由来の成分
LPSはグラム陰性菌という細菌の成分で、体の大切な免疫力を支えるマクロファージを活性化する働きをします。
マクロファージとは体のあらゆる組織や臓器に存在し、外部から細菌やウイルスなどの異物が侵入するのを監視している免疫細胞。万が一病原菌やウイルスが体に侵入したときはすかさず攻撃し、感染から体を守っている頼もしい存在です。
LPSがマクロファージを活性化するのは、マクロファージにLPSと結びつくレセプター(受容体)があるから。LPSがマクロファージと合体することで、高い免疫力が発揮されます。
LPSが細菌由来の成分ということは、同じ細菌の一種である納豆菌にもそのような力があるのでしょうか?
次の項目で検証してみましょう。
納豆は腸内で免疫細胞を活性化
納豆菌について触れる前に、細菌一般について説明しましょう。
すべての細菌はグラム陰性菌とグラム陽性菌の2種類に分類されます。それぞれの違いを表にまとめました。
グラム陰性菌 | ・外膜があり、ペプチドグリカン層が薄い ・大腸菌、パントエア菌、酢酸菌など |
グラム陽性菌 | ・外膜がなく、ペプチドグリカン層が厚い
・乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌など |
納豆菌はグラム陽性菌に属し、グラム陰性菌のLPSとは異なる種類の細菌です。グラム陽性菌の納豆菌の成分にはLPSと同じような作用はありませんが、LPSとは違うアプローチで免疫力を活性化させます。
納豆菌は熱や酸に強い
納豆菌は熱や酸に強く、生きたまま腸に届きます。生きた納豆菌は腸の働きを高めたり、腸内の善玉菌を増やしたりして活躍。
活性化した腸内細菌は、免疫細胞とともに病原菌やウイルスから体を守るために働きます。
腸は最大の免疫器官
納豆菌が腸を活性化することで、どうして免疫力が高まるのでしょうか?
腸が体の免疫に果たしている役割を知れば、その疑問が解消されます。
体の免疫力の約70%は腸で作られており、腸は体の中で最大の免疫器官です。
腸内環境が整っていることが免疫力を発揮するために大切。その腸の中でも多くの免疫機能を担っているのが、小腸の下の方にある「パイエル板」という器官です。
パイエル板の中で免疫がどのように働いているのか、仕組みを見てみましょう。
パイエル板の中で働く免疫細胞
M細胞 | パイエル板の外側で病原菌やウイルスなどの異物を監視する |
樹状細胞 | M細胞から異物の情報を受け取る |
マクロファージ | M細胞から異物の情報を受け取る |
ヘルパーT細胞 | 樹状細胞やマクロファージから病原菌やウイルスの情報を受け取り、B細胞に抗体を作るよう指示する |
B細胞 | ヘルパーT細胞の指令を受けて抗体を作る |
① パイエル板の外側にはM細胞があり、病原菌やウイルスを監視しています。これら異物を発見すると樹状細胞やマクロファージに情報を伝えます。
② 情報を受け取った樹状細胞やマクロファージは、ヘルパーT細胞に異物を攻撃するよう指令を出します。
③ ヘルパーT細胞はB細胞に抗体を作るよう伝え、異物を排除する抗体がたくさん作られます。
これらの免疫機能が24時間休むことなく異物を監視していることで、健康が守られているというわけです。
納豆菌がパイエル板で免疫を活性化させている
研究では、納豆菌がM細胞によってパイエル板に取り込まれ、免疫機能を高めているという報告もあります。パイエル板に取り込まれた納豆菌は免疫細胞を活性化し、免疫力アップに一役買っているのです。
LPSも納豆菌も免疫力を高める仲間
LPSと納豆菌は、どちらも免疫力を高める働きをします。
ただし、LPSはTLR4を介してマクロファージほか免疫細胞を活性化し、納豆菌はそのペプチドグリカンがTLR2を通じて免疫細胞を活性化します。
アプローチの異なる二つの成分を摂取することで、病原菌やウイルスに負けない体づくりが可能です。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。