病気になりにくい健康な身体を手に入れるためには免疫力アップが大切です。免疫力を高める栄養素といえばビタミンCがよく知られています。風邪にはビタミンCが良いと聞いたことがある人も多いでしょう。
どうしてビタミンCが免疫力アップに有効だと言われているのでしょうか。この記事ではビタミンCの効果や、免疫力を高めるその他の栄養素について紹介します。
この記事の目次
免疫のしくみ
免疫は私たちの身体を守るシステム
免疫とは、細菌やウイルス、毒素といった異物から私たちの身体を守るシステムのことを意味しています。身の回りには細菌やウイルスなど多くの種類の病原体がいますが、私たちが大部分の病原体に感染せずに済んでいるのは免疫のおかげです。
免疫には自然免疫と獲得免疫の2種類がある
免疫の種類 | 特徴 |
自然免疫 |
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獲得免疫 |
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免疫は、大きく自然免疫と獲得免疫との2つに分けられます。自然免疫は異物を食べてしまう等の方法により、幅広い種類の異物にすばやく反応するものです。一方、獲得免疫は体内に侵入した異物に対して抗体という武器を作って対抗します。獲得免疫は、初めて出会う異物に対しては反応に時間がかかるという欠点がありますが、異物に合わせてオーダーメイドの抗体を作るため優れた効果を発揮します。
「免疫力が落ちる」とは
「免疫力が落ちる」とは、免疫を担当する細胞のはたらきが弱まり異物を排除しにくくなる状態のことを言います。免疫力が落ちると風邪をひいたり病気にかかりやすくなるほか、肌荒れしやすくなったりアレルギー症状が出やすくなる等の症状が現れます。
ビタミンCが免疫力アップに効果的な理由
白血球の能力を高めて病原体を死滅させやすくする
ビタミンCは、抗酸化作用と酵素を助ける作用を持つ栄養素です。血液中の白血球の働きも助けます。白血球には体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体を死滅させるはたらきがあり、ビタミンCが豊富だと白血球は能力が高くなると考えられています。
その反対に、ビタミンCが不足していると免疫が低下し風邪をひきやすくなります。実際に、風邪をひいているときは白血球中のビタミンCが減少することが知られています。
特に喫煙者は白血球中のビタミンCが減少しやすいとされています。喫煙者は積極的にビタミンCを摂取すると良いでしょう。
インターフェロンを増やしてウイルスのはたらきを抑える
ビタミンCには白血球の一種であるリンパ球を元気にし、リンパ球がインターフェロンと呼ばれるタンパク質を作るのを促進する効果があります。インターフェロンにはウイルスを排除したりウイルスの増殖を抑えるはたらきがあるため、病気に感染しにくくなる効果が期待できます。
インターフェロンは高い能力を持っており、ウイルスのはたらきを抑える薬としても活用されているほどです。しっかりビタミンCを摂取して、十分な量のインターフェロンを作れるよう備えておきたいところです。
コラーゲンで丈夫な皮膚や粘膜を作り病原体の侵入を防ぐ
ビタミンCはコラーゲンを作るために欠かせない栄養素です。コラーゲンは皮膚や粘膜を構成する重要なタンパク質であり、ビタミンCを十分に摂取することで丈夫な皮膚や粘液が作られるようになることが期待できます。丈夫な皮膚や粘液は病原体が体内に侵入しないようガードする能力も高く、免疫力アップにつながります。
また、コラーゲンが豊富に作られることで細胞同士の結びつきが強化されるため、がん細胞の増殖を抑えるためにも有効であると言われています。
免疫力アップだけじゃない!ビタミンCの嬉しい効果
抗酸化作用
ビタミンCには、体内で作られ細胞や組織を傷つける活性酸素を除去する効果があります。これを抗酸化作用と言います。
体内の細胞や組織が活性酸素によって傷つけられると、そのはたらきが鈍くなり老化や疲労蓄積につながると考えられています。ビタミンCによって活性酸素を除去することで、疲労回復やアンチエイジング効果が期待できます。
ストレスから身体を守る
私たちが精神的・肉体的なストレスを感じると、アドレナリンというホルモンが大量に分泌されます。アドレナリンにはストレスから身体を守るはたらきがあり、脈が速くなったり血圧や血糖値が上昇するといった現象を引き起こします。
ビタミンCは体内でアドレナリンを作るために必要とされる栄養素です。ビタミンCを十分に摂取することで、ストレスに対抗可能な強い身体を手に入れることができるでしょう。
動脈硬化予防
動脈硬化とは、血管が柔軟性を失って硬くなり、血栓などにより詰まりやすくなっている状態を言います。動脈硬化の1つとされているのが悪玉コレステロールです。悪玉コレステロールは血液中に存在しており、これが血管の壁にくっつくことで動脈硬化を招きます。
ビタミンCにはコレステロールから胆汁酸への代謝を促進する作用があります。そのため、ビタミンCを十分に摂取することで血管内のコレステロールを減らす効果が期待できます。
花粉症の症状を抑える
花粉症の人の目や鼻から花粉が体内に侵入すると、体内では花粉を異物と認識して体外に排出しようとします。このときヒスタミンという物質が細胞から放出されます。ヒスタミンが粘膜を刺激することでくしゃみや鼻水、涙といった症状を引き起こすのです。
ビタミンCは花粉症にも有効です。ビタミンCにはヒスタミンが放出されるのを防いだり、粘膜を刺激する作用を抑える効果があります。花粉症の症状を和らげるために役立つでしょう。
貧血
女性がなりやすいと言われる貧血も、ビタミンCによって改善が期待できます。貧血とは血液中の赤血球のヘモグロビンが減少した状態になることを言います。貧血になると息切れやめまい、立ちくらみなどの症状が現れます。
多くの場合、貧血を改善するためには鉄分を十分に摂取することが大切です。しかし、鉄分はそのままでは体に吸収されにくいという性質があります。そのため、十分に摂取しているつもりでも必要量が足りていないということもあり得るのです。
ビタミンCには鉄分を体に吸収しやすい形に変える効果があります。ですから、鉄分とビタミンCとを一緒に摂取することで鉄分が体に吸収されやすくなり、貧血を改善する効果が期待できます。
美肌
ビタミンCは美容にも有効です。肌の重要な成分であるコラーゲンを作るためにはビタミンCが欠かせません。ビタミンCをしっかり摂取することでコラーゲンが十分に作られ、きめ細やかな肌になれることが期待できます。
また、ビタミンCの抗酸化作用によってシミやそばかすができるのを防ぐ効果も期待できます。ビタミンCが配合されているスキンケア用品も少なくありません。つややかで透明感のある肌になるためにもビタミンCは重要なのです。
食事でビタミンCを摂取しよう
ビタミンCはどれだけ摂るとよい?
人間は体内でビタミンCを作ることができないため、食品から摂取する必要があります。必要な摂取量は1日あたり100mgとされています。
ビタミンCは水溶性であり、摂り過ぎた分は尿に溶けて体外へ排出されます。そのため通常の食事でビタミンCの摂り過ぎを心配する必要はありません。
ただし、サプリメント等で通常の食事を大幅に上回る量のビタミンCを摂取した場合の影響はまだ明らかになっていません。サプリメントを活用する場合は適切な用量を守るよう心がけると良いでしょう。
ビタミンCが豊富な野菜
赤ピーマン | 170mg |
ブロッコリー | 140mg |
カリフラワー | 81mg |
ピーマン | 76mg |
ほうれんそう | 60mg |
※100gあたりのビタミンC含有量
ビタミンCはさまざまな野菜に含まれています。特に赤ピーマンやブロッコリーは100gで1日の摂取量を上回るビタミンCを摂れるためおすすめです。またピーマンやほうれんそうなど、身近な野菜にも十分な量のビタミンCが含まれています。
旬の野菜は特に栄養価が高く、ビタミンCも豊富です。旬のものを中心にバランスよく食べることで十分な栄養を摂取することが出来るでしょう。
ビタミンCが豊富な果物
アセロラ | 1,700mg |
ゆず | 160mg |
レモン | 100mg |
キウイフルーツ | 69mg |
※100gあたりのビタミンC含有量
果物にはビタミンCが多いと言われます。レモンにビタミンCが豊富なことは良く知られていますが、それ以外にもアセロラやゆず、キウイフルーツなど多くの果物でビタミンCを摂取することができます。
さらに、果物は野菜よりもビタミンC摂取に適しています。ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱い性質があり、食品を茹でたり炒めたりするとビタミンCが失われてしまうのです。調理することがほとんどである野菜と異なり果物は生のまま食べる機会が多いため、食品中のビタミンCを逃さずに摂取することができます。
ビタミンCと合わせてとりたい、免疫力アップに効果的な栄養素
ビタミンA
ビタミンAは皮膚や粘膜を正常に保つために必要な栄養素です。ビタミンAを十分に摂取することで、身体のバリア機能を高めて外から異物が侵入するのを防ぐことができます。
また、免疫細胞に直接作用して免疫反応を促進させるはたらきもあります。病原体が体内に侵入しても、免疫反応によって速やかに病原体を除去すれば病気に感染せずに済みます。
ビタミンAはレバーやウナギ、卵などに多く含まれています。またニンジンなど緑黄色野菜に多く含まれるβカロテンも体内でビタミンAとなるため、同様の効果が期待できます。
ビタミンB6
ビタミンB6は抗体を作るために必要な栄養素です。抗体とは体内に侵入した異物を攻撃する武器であり、正常な免疫機能を保つために欠かせません。予防接種などで利用されるワクチンも抗体が感染を防ぐ作用を利用して成り立っており、抗体が作られなければ十分な予防効果が得られない恐れがあります。
ビタミンB6はまぐろやかつおをはじめとする魚類や、赤身肉やヒレ肉、ささみといった肉類に多く含まれています。
ビタミンE
ビタミンEにはビタミンCと同様の高い抗酸化作用があります。細胞や組織を傷つける活性酸素を除去することから、免疫細胞の機能低下を抑える効果があると考えられています。
ビタミンCが水に溶けやすく油に溶けにくいのとは反対に、ビタミンEには油に溶けやすく水に溶けにくい性質があります。脂肪など、体内のあぶらの部分を活性酸素から守るにはビタミンEが適していいるのです。
ビタミンEはナッツ類や植物油などに多く含まれています。
LPS
LPSはあまり聞き慣れない栄養素ですが、「免疫ビタミン」と言われるほど免疫力アップに欠かせないものです。
LPSは白血球の一種であるマクロファージを活性化させることが知られています。マクロファージは体内に侵入した病原体などを食べて除去したり、病原体の情報を他の免疫細胞に伝える重要な細胞です。マクロファージが活性化することで免疫機能が向上することが期待できます。
LPSは土壌中などに存在するグラム陰性細菌という最近の細胞壁外膜を構成する成分です。細菌が付着しやすい根菜や葉野菜、穀物、海藻などにはLPSが豊富に含まれています。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。