免疫力アップや健康維持のためにLPSが注目されています。LPSが身体を刺激することで、さまざまな嬉しい効果が期待できます。この記事ではLPSの刺激によって得られる効果を紹介します。
この記事の目次
免疫力を向上させる
病原体を食べるマクロファージを活性化
LPSは、口から食べたり皮膚に塗ったりすることでマクロファージという細胞を刺激し活性化させることが知られています。
マクロファージとは、人間の身体をウイルスや細菌といった異物から守る免疫のはたらきにおいて需要な役割を果たす細胞です。異物を食べてしまうことによって死滅させるほか、他の免疫細胞に食べた異物の情報を伝えてさらなる免疫反応を引き起こす役割も担っています。
マクロファージの表面には、レセプター(受容体)と呼ばれる手のようなものが何種類も存在しています。このうちTLR4というレセプターがLPSをキャッチすると、マクロファージの細胞核にシグナルが伝達されます。これが刺激となってマクロファージが活性化されるのです。
マクロファージが活性化されると、異物を食べる能力が向上して異物を排除しやすくなります。体内に侵入したウイルスや細菌が増殖して身体に害を及ぼすのを防げる可能性も高くなり、免疫力アップにつながります。
がん細胞やウイルスを死滅させるNK細胞を元気にする
LPSの刺激によって活性化されたマクロファージは、他の免疫細胞を活性化させてさらなる免疫反応を引き起こします。
活性化されたマクロファージは、サイトカインIL-12というタンパク質を多く作るようになります。そして、IL-12には免疫細胞の一種であるNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化させる作用があります。
NK細胞は名前の通り「生まれつきの殺し屋」であり、全身をパトロールして体内のがん細胞やウイルスを見つけては攻撃し、死滅させるはたらきがあります。そのため、ナチュラルキラー細胞が活性化されることによって免疫力をアップさせる効果が期待できます。
乳酸菌の刺激と組み合わせるとさらに効果アップ
LPSによるマクロファージの刺激効果は、乳酸菌と組み合わせることでさらに向上します。
LPSはマクロファージのレセプターのうちTLR4という種類のものと結合しますが、乳酸菌に含まれるペプチドグリカンという物質は、LPSとは異なるTLR2という種類のレセプターと結合します。さらに、病原性細菌やウイルスが感染したときには、その成分がまた別のTLR9というレセプターと結合します。このように複数のレセプターからマクロファージを刺激することで、相乗効果によりマクロファージの能力がさらに上がります。
具体的には、複数のレセプターから刺激したマクロファージはNK細胞を活性化させるサイトカインIL-12をより多く作り出せるようになることが明らかになっています。IL-12の量が増えればNK細胞のはたらきをより向上させ、がん細胞やウイルスを死滅させる能力を高められます。
このほか、LPSと乳酸菌とを組み合わせることで、体内に侵入した異物を攻撃するための武器である抗体の量や質を高められるという研究結果も出ています。
血流を改善する
血管を拡張して血液を流れやすくする
LPSには血流を改善する効果もあると考えられています。
この要因の1つとして、血管が拡張されることがあげられます。LPSの刺激によりマクロファージが活性化されると、マクロファージによって一酸化窒素が作られます。一酸化窒素は免疫反応において、細菌などの異物を探し出して破壊する役割を担っています。それと同時に、一酸化窒素には血管を拡張する効果もあります。血液の通り道が広がることで、血液の流れが良くなる効果が得られます。
血液中の不要物を減らして血流を滞りにくくする
また、血液中の不要物を減らすためにもLPSは効果的です。
マクロファージには、血液中に存在する悪玉コレステロールや寿命を迎えたヘモグロビンなどの不要物を食べて排除するはたらきがあります。LPSの刺激によってマクロファージが活性化すると、マクロファージはより多くの不要物を食べるようになります。血液中の不要物が減少することで血液の流れが滞りにくくなり、血流を改善すると考えられています。
毛細血管を増やして身体のすみずみへ血液を行き届かせる
さらに、LPSの刺激によって毛細血管が増えることも血流改善に役立っています。
マクロファージはLPSの刺激を受けて血管新生因子と呼ばれる物質を作ります。血管新生因子とは、傷を治す過程で新たに血管を作る場合などに必要とされる物質です。既存の血管から枝分かれする毛細血管を作りあげ、身体のすみずみにまで血液が行き届くようにする効果があります。
肌の状態を整える
肌荒れを治す
LPSが刺激するのはマクロファージだけではありません。肌のケラチノサイト(表皮細胞)にも刺激を与え、良い影響をもたらします。
ケラチノサイトはLPSの刺激を受けると一酸化窒素を放出します。そして、一酸化窒素には表皮細胞が傷口へ移動してくるのを促進する効果があります。移動してきた表皮細胞は傷口で増殖し、急速に傷を治します。つまり、LPSによって肌荒れや傷の治りが早まる効果があると言えます。
そのほか、ケラチノサイトから放出される一酸化窒素には、紫外線による細胞死を抑制する効果や接触性過敏症を抑制する効果があることも明らかになっています。
炎症を抑える
LPSは表皮にある2種類の免疫細胞にも刺激を与えます。
1つはランゲルハンス細胞です。ランゲルハンス細胞は炎症の原因になるケモカインという物質を分泌することが知られています。炎症は体内に侵入した異物から身を守るための正常な防御反応ですが、痛みやかゆみといった不快な症状を引き起こすのもまた事実です。
LPSが表皮のランゲルハンス細胞を刺激すると、ケモカインの発生が抑制されます。それによって炎症を抑える効果が期待できます。
もうひとつはTreg細胞への作用です。Treg細胞は、炎症をやわらげる役割の細胞です。LPSで刺激を受けたTreg細胞は、活性酸素を出す好中球の活動を抑えるように働くので、炎症が静まってきます。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。