睡眠は体や脳を休めて疲れをとり、成長ホルモンを分泌して細胞の修復や再生をはかるために大切です。睡眠は自然免疫にも影響するもの。睡眠不足によって免疫力が落ちることは、実験でも証明されています。
この記事では自然免疫と睡眠との関係や、免疫力を高めるための睡眠方法について紹介しましょう。
この記事の目次
自然免疫は生まれつき体に備わった防御機能
自然免疫は生まれつき体に備わっている防御機能です。体に侵入しようとする病原菌やウイルスなどの異物を排除したり、病気や怪我からの回復を早めたりして、私たちの健康を守っています。
免疫には自然免疫と獲得免疫がある
免疫には自然免疫と獲得免疫の2種類があり、それぞれ次のような役割を担っています。
自然免疫 | ・生まれつき体に備わっている仕組み ・マクロファージやNK(ナチュラルキラー)細胞という免疫細胞が主役 |
獲得免疫 | ・自然免疫だけで排除できない病原菌やウイルスなどの異物を排除する仕組み ・侵入してきた異物を記憶し、それに応じた攻撃方法を記憶する |
自然免疫の中心を担うのはマクロファージ
自然免疫の中でも中心を担うのはマクロファージです。マクロファージは体の組織、臓器、血液中など体のあらゆる部分に存在しています。常に、病原菌やウイルスなどの異物が体に侵入しないかをパトロールしており、侵入してきたら受容体で異物を捕らえて食べてしまいます。
マクロファージは他の免疫細胞に異物の情報を伝えたり、異物排除に適した抗体を作らせたりするなど、獲得免疫の働きをサポートする役割も果たします。
睡眠は自然免疫と密接に関係する
ウイルスの感染を予防して健康を保つには、自然免疫の力を高めることが必要です。そのために重要なのが毎日の睡眠。睡眠不足や不規則な生活で睡眠のリズムが乱れていると、自然免疫も衰えてしまいます。
睡眠が自然免疫にどのような影響を及ぼすのか紹介しましょう。
睡眠時間が短いと風邪をひきやすくなる
研究では、平均的な睡眠時間が7時間未満の場合、睡眠時間が8時間以上の人と比べ約3倍も風邪の発症率が上がるというデータがあります。睡眠時間が短いと風邪にかかりやすいというわけです。
細菌やウィルスに対する免疫力は睡眠中に保たれ、強化されるため、睡眠不足が続くと免疫力が落ちてしまいます。そのため、風邪などの感染症にかかりやすくなってしまうのです。
質の良い睡眠も大切
眠りの質が良い人ほど風邪の発症率が低いというデータもあり、睡眠時間だけでなく眠りの質も免疫力に影響します。十分な時間眠っていても、眠りが浅くて夜中に何回も起きるなど睡眠の質が悪いと免疫力の低下を招いてしまうのです。
睡眠中に傷んだ細胞が修復される
睡眠中は成長ホルモンが多く分泌され、昼間の活動で傷んだ細胞を修復しています。睡眠不足や質の悪い睡眠ではこの成長ホルモンが十分に分泌されず、免疫細胞の減少などにつながることに。自然免疫の働きが低下してしまいます。
免疫細胞が侵入してきた異物の情報を長く記憶するためにも、睡眠が必要とされています。
自然免疫を高める質の良い睡眠をとる方法
自然免疫を高めるためには7時間以上の睡眠を確保するだけでなく、質の良い睡眠をとることが大切です。夜なかなか寝つけない、眠りが浅くてよく眠れていないと感じる人は、次のような方法を試してみましょう。
体内時計を整える
人には体内時計があり、24時間よりも若干長いと言われています。1日の24時間と微妙なズレがあり、このズレを修正してリズムを整えることが質の良い睡眠につながります。
体内時計のリセットには、太陽の光を浴びることが有効。朝起きたらカーテンを開いて太陽の光を浴びることで、生活のリズムが整います。夜更かしせず、早寝早起きをすることが大切になります。
朝の太陽の光を浴びるとセロトニンというホルモンが分泌され、これが夜になるとメラトニンという睡眠を促すホルモンに変わります。メラトニンの作用で、質の良い睡眠に入れるのです。
食事は3時間前に済ませる
食事はベットに入る2〜3時間前に済ませるのが理想です。寝る直前に食事を摂ると寝ている間も消化活動が続き、眠りが浅くなってしまいます。食事を十分消化して、胃腸が休まった状態で眠るようにしましょう。
夕食では体を温める食事や飲み物を摂るのがおすすめです。内臓から体温を高めることで、体温が下がり始めるときに自然な眠気が促されます。深い眠りに入りやすくなるでしょう。
寝る前にスマホやパソコンを見ない
寝る前にスマホやパソコンを見るのはNGです。スマホやパソコンから出るブルーライトは脳を覚醒させるため、眠りに入るのを妨げてしまいます。睡眠の質を下げてしまうので、寝る前は読書する、静かな音楽を聴くなどリラックスして過ごすようにしましょう。
ぬるめのお風呂に入る
入浴では、ぬるめのお湯にゆっくり入ることが安眠につながります。熱めのお湯は体が覚醒してしまい、睡眠の妨げになるので避けましょう。40度ほどのお湯に10~20分ほど浸かるのがおすすめです。じっくり温まることで体がリラックスし、質の良い睡眠に入れます。
自然免疫の活性化にはLPSの摂取も有効
睡眠とともに免疫力を高めるのがLPSの摂取です。LPSは細菌由来の成分で土の中に存在しており、畑で育つ野菜や穀類、海で採れる海藻類に含まれています。
私たちはこれら野菜やお米、海藻類を食べることで、LPSを摂取することができるのです。
LPSはどうして免疫力を高めるのか、そのメカニズムを紹介しましょう。
LPSはマクロファージを活性化する
LPSは自然免疫の中心を担うマクロファージを活性化させることで、自然免疫の力を高めます。
マクロファージの表面には、さまざまな物質を受け止めるレセプター(受容体)が存在。マクロファージはそのレセプターでウイルスを捕獲したり、いろいろな物質と結びついて自らを活性化させています。
その中にはLPSと結びつく「TLR4」というレセプターもあります。
LPSがTLR4と結びつくと、マクロファージの細胞の核にシグナルを送ります。核の中にある遺伝子がそれに反応し、マクロファージが活性化するわけです。
自然免疫は病原菌やウイルスの感染から体を守り、健康で元気な体を保つもの。自然免疫の働きを高めるには、毎日規則正しく質の良い睡眠をとり、野菜や穀物、海藻類をバランス良く食べることが大切です。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。