マクロファージを活性化して、免疫力を高めることで注目されているLPS。実は、「歯周病の原因になるのでは?」という噂があります。これは本当なのでしょうか?
この記事では、LPSと歯周病の関係について説明します。
歯周病菌はLPSだった?
LPSはグラム陰性菌という細菌の表面にある成分で、グラム陰性菌の外側に密集しています。
歯周病菌もこのグラム陰性菌の一種なので、歯周病菌にもLPSがあるわけです。
そのため、「歯周病の原因はLPSである」「歯周病を予防するためにLPSを取り除く」という説明がされることがあります。歯周病菌を除去する歯磨きの広告では、「歯の表面のLPSを除去する」という宣伝文句が使われていたりします。
しかし、これは特殊な例であって、この認識だけというのは間違いです。
確かに歯周病菌にはLPSが存在しますが、この歯周病菌のLPSは一般的にマクロファージを活性化するとされるLPSとは違う構造をしているのです。
歯周病菌のLPSはTLR2に結合する
ここで、LPSがマクロファージを活性化するメカニズムについて簡単に確認しておきましょう。免疫細胞であるマクロファージにはいろいろな物質をキャッチするレセプター(受容体)があり、LPSはそのうちの「TLR4」というレセプターと結びつきます。
しかし、歯周病菌のLPSは「TLR2」というレセプターに結びつくもので、通常のLPSとはまったく違うタイプなのです。TLR2と結びつくのはヨーグルトやキノコに含まれるペプチドグリカン、βグルカンという成分で、マクロファージの活性力はLPSよりはるかに劣るもの。歯周病菌のLPSは同じ名称ではあっても、別物ということです。
歯周病菌のLPSは免疫活性力が弱い
TLR2と結びつく歯周病菌のLPSの場合、免疫を司る細胞を活性化して体を守る力は通常のLPSよりもずっと弱いものです。そのため、歯周病菌は免疫のシステムが存在を察知しづらく、排除されにくいと考えられています。
このように考えると、歯周病の本当の原因は、歯周病菌のLPSそのものにあるわけではありません。歯周病菌が排除されずに元気に活動できる点にあるといえるでしょう。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。