「冷えは万病のもと」と言われるように、体温は、私たちの体調に大きな影響をおよぼします。体が冷えないよう、日常生活で気を付けている方も多いかもしれません。
実は体温は、体を病気から守ってくれる免疫力に関係しています。そこで今回は、体温と免疫力の関係や、体温を上げる方法などを詳しく解説しますので、ぜひご参考にしてみてください。
この記事の目次
免疫力は体温を上げることでアップする
免疫とは、体を病原体から守ったり傷ついた組織を修復したりして、体全体の調子を整える仕組みのことです。そのため、免疫力が低下すると、インフルエンザなどの感染症や風邪にかかりやすくなります。
一方で体温が上がると免疫力も上がると言われています。体温が上がることで血液の流れがよくなります。血液中では免疫細胞(白血球など)が、体に侵入したウイルスや細菌を退治するためにパトロールしています。血液の流れがよくなると白血球の動きも活性化されるため、免疫力が高まるのです。
風邪をひくと高熱が出ることがありますが、これは体が体温を上げて白血球を活性化させ、病原体をやっつけるように指示を出しているためです。
体温を上げて免疫力をアップさせる方法
免疫システムが正常に働く体温は、36.5℃~37.1℃だと言われています。一方で、現代人は、平熱が36℃以下という低体温の人も増えています。そこでここからは、現代人が体温を上げて免疫力をアップさせる具体的な方法をご紹介します。
適度な運動
低体温の原因の多くは、筋肉量の低下です。筋肉がないということは、基礎代謝(じっとしていても熱を生み出してくれるエネルギー)も下がっているため、体温が低くなります。低体温の人は、血液の流れがよくなく、免疫力も低い傾向にあります。そのため、適度な運動で、基礎代謝を上げることが大切です。
体の筋肉の約7割は下半身にあると言われています。そのため、ウォーキングやジョギング、スクワットなどの、下半身を鍛える運動がおすすめです。短時間でも毎日続ければ、基礎代謝が徐々にアップし、免疫力が高まるでしょう。
入浴
忙しかったりお風呂が面倒だと感じたりして、ついシャワーで済ませてしまうこともあるかもしれませんが、体温を上げるには、湯舟にしっかりつかることが大切です。
理想の入浴方法は、40℃前後のお湯に毎日10分程度つかること。それだけで体温は1℃上がると言われています。ただし、42℃以上の熱いお湯と、長時間の入浴は避けたほうがよいです。熱いお湯は血圧が上昇するとともに体力を消耗してしまうほか、お湯に長時間つかることで保湿成分が流れて肌が乾燥したり、大量の汗をかくことで血流が悪くなることがあります。
また半身浴にはデトックス効果があると言われるものの、体温を上げることには向きません。全身浴のほうが体温も上がりやすく、浮力によるリラックス効果でストレスが緩和され、免疫力が高まります。
ストレス解消
免疫システムが正常に働く条件のひとつは、自立神経のバランスが整っていること。自立神経には、交感神経と副交感神経の2つがあり、ストレスが過剰にかかると、これらの働きが乱れます。交感神経は白血球、副交感神経はリンパ球といった免疫細胞の動きに関係しているため、過剰なストレスは免疫力を下げてしまいます。
また、ストレスから身を守るために分泌されるホルモンは、筋肉を分解する特徴をもっているため、強いストレスがかかると筋肉量が低下。基礎代謝が落ちて、低体温になります。そのため、体温を下げないためにも、ストレスを溜めないことが大切です。
ストレスを解消するには、上記でご紹介した運動や入浴のほか、声を出して笑う機会を増やすことが大事。たとえ作り笑いだったとしても、笑うことで細菌やウイルスを退治してくれる「ナチュラルキラー細胞」という免疫細胞が活性化され、体を病気にかかりにくい状態にしてくれます。
白湯を飲む
50℃前後の白湯を飲むと胃が温まり、基礎代謝が促されて体温が上昇します。白湯をそのまま飲んでもかまいませんが、生姜を入れるのもおすすめです。生姜に含まれる「ジンロゲン」という辛味成分には、血行を促進して基礎代謝を高めてくれる効果が期待できます。
物理的に体をあたためる
カイロを貼ったり厚着をしたりして物理的に体を温めるのもよいでしょう。カイロをお腹に貼るだけで内臓が温まり、基礎代謝がアップします。また、靴下やタイツ、ももひきなどを履いて下半身を温めるのもおすすめ。とくに足には、血液を心臓に送り返すポンプのような役割をする筋肉があるため、足を温めることで体全体の血流がよくなり、免疫力が上がります。
バランスの良い食事
体温を上げて免疫力を高めるためには、一日3食、バランスのよい食事を心がけましょう。食べることで胃が消化・吸収をよくしようと働くため、基礎代謝が上がり、自然と体温も上昇します。
しかし、ひとくちに食事と言っても体を冷やす食材と温める食材があります。体を冷やすのは、きゅうりやなす、トマトなど、一般的に「夏野菜」と呼ばれるもの。反対に体を温めるものは、生姜やにんにく、ねぎのような辛味のある食材のほか、羊肉や鶏肉、もち米、黒糖などが挙げられます。
また、免疫細胞は、約7割が腸にいると言われています。そのため、食事で腸内環境を整えることも大切です。ヨーグルトやチーズのような発酵食品や、キノコや海藻などの食物繊維を食事に取り入れることで、腸内環境は理想の状態に近づきます。
免疫力を高める「LPS」
免疫力を上げる食材といえば、近年、LPS(リポポリサッカライド)という成分が注目されているのをご存知でしょうか?LPSは、土の中などに生息する細菌を構成する成分のひとつで、私たちの体を細菌やウイルスから守る「マクロファージ」という免疫細胞を活性化する働きがあります。
とくに、ほうれん草やレンコンなどの畑で育つ野菜や、海藻、玄米にはLPSが多く含まれています。ぜひ、体を温める食材とともに、毎日の食事に取り入れてみましょう。
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。