アトピー性皮膚炎は、遺伝的要因、環境的要因が複雑に関係して発症する疾患です。皮膚科医の指導のもとに、適切な治療をすることが基本となりますが、日常的なスキンケアの中で、試してみて頂きたいのがリポポリサッカライド(LPS)です。
アトピー性皮膚炎のヒトの中には、遺伝的に「フィラグリン」というバリアタンパク質を作る遺伝子に変異があり、そのため肌のバリア機能が低い場合があります(*1)。LPSは、肌の細胞のフィラグリンの発現量を高める効果が知られているので、アトピー性皮膚炎の改善につながる可能性があります(*2)。
また、アトピー性皮膚炎の患部では、黄色ブドウ球菌が繁殖しており、このことが症状を悪化させる原因の一つであることが報告されています(*3)。LPSは肌の細胞から抗菌物質を誘導することがわかっているので、病原性細菌の繁殖をコントロールすることに役立ちます(*4)。
実際に、LPSを配合した保湿クリームによって、軽度アトピー性皮膚炎のかゆみと皮膚の状態が改善された試験結果が報告されています(*5)。
LPSを配合したスキンケア製品はいくつか販売されていますが、LPS以外の原材料に刺激性の高いものが含まれていないことを確認して選ぶと良いでしょう。
(*1)Atopic dermatitis and filaggrin, Current Opinion in Immunology 42: 1-8 (2016)
(*2)敏感肌に対するリポポリサッカライドの有効性~バリア機能の改善~ J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 55(4): 338-345 (2021)
(*3)Dysbiosis and Staphylococcus aureus Colonization Drives Inflammation in Atopic Dermatitis, Immunity 42: 756-766 (2015)
(*4)Expressions of β-defensins in human keratinocyte cell lines. Journal of Dermatological Science 27: 183–191 (2001)
(*5)The Effect of Lipopolysaccharide-containing Moisturizing Cream on Skin Care in Patients With Mild Atopic Dermatitis. In Vivo. 33 (1):109-114 (2019)
LPSは土の中などに存在するため、野菜や穀物、海藻類などに豊富に含まれています。しかし、農薬などによって細菌が取り除かれるとLPSも少なくなってしまうため、近年食事から取り入れられるLPSはどんどん低下していると言われています。そのため、サプリメントを利用したり、肌への効果を期待する場合は化粧品などを利用したりするのがおすすめです。