第32回
皆さん。ひげ博士じゃ。御存知のように、LPSは教科書を見ても、論文を見ても、激しく炎症を誘導すると書かれておるのう。ところが、実際には、LPSを炎症部位に使い炎症を鎮めているのは御存知の通りじゃ。このLPSの効果に首をかしげる研究者は多い。そこで、LPSの抗炎症の仕組みについて全貌はわかっていないが、大いに参考になる研究を紹介しよう。
LPSの炎症抑制には、制御性T細胞 (Treg)という免疫寛容を誘導する細胞が関わっておる。このTregは炎症抑制作用が強いことが知られているのじゃが、他のヘルパーT細胞と異なり、トル様受容体(TLR)-4を持っていてLPSと反応する(文献1)。そうなると、Tregは、実は自然免疫細胞として働いておるのじゃ。TregはLPS刺激によって活性化・増殖し、IL-10という炎症を抑制するサイトカインを産生し、好中球やマクロファージを抗炎症型に変えるというのじゃ(文献2)。
教科書に書かれているLPSが炎症をおこすのは、細菌の侵入の初期の応答の事なのじゃ。一方で、起こった炎症を消火して修復に向かう引き金もLPSの重要な役割ということじゃ。教科書では、LPSについて炎症の引き金しか目を向けておらんのじゃのう。
文献1: I. Caramalho, et al., J. Exp. Med., 197: 403-411 (2003).
文献2: N. Lewkowicz, et al. Mucosal Immunology, July 2015. Doi:10.1038/mi.2015.66
出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター
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