自然免疫応用技研株式会社

ひげ博士の最新免疫学講座

かげ

第62回

ゾンビ細胞の話
(2023年3月 No.62より)

皆さん、ひげ博士じゃ。WHOも巻き込んで、老化は病気とする考えが出てきており、老化の予防・治療が現実的になってきておるが、その中で老化細胞の存在が注目されておる。それは、種々の障害を負って、分裂もしないが死にもしない。そのうえ、老化関連タンパク質を分泌して、近隣の細胞を老化させるという、まるでゾンビみたいな細胞じゃ(1)。ゾンビ細胞の除去を目的とした薬剤(セノリティクス)の研究が話題になっておるのはご存知かな。東京大学のオプジーボ(抗PD-1抗体) (2)や、順天堂大学の老化抗原ワクチン(3)研究などじゃな。

ところでじゃ、体にできる不要なものの除去は主に食細胞のマクロファージが担っておるのだから、ゾンビ細胞もマクロファージが食べていると考えても不思議じゃないのう。実際、いくつかの論文では、老化細胞を体のあちこちの組織マクロファージが食べていることが示されているのじゃ。一方で、マクロファージが食べる力が弱ると逃れたゾンビ細胞が暴れまわってしまうのじゃな。マクロファージのゾンビ細胞を食べる力を高めることができれば、老化予防・治療の夜明けは近いのじゃがのう。

(1) Nature 550: 448–450 (2017)
(2) Nature 611: 358–364 (2022)
(3) Nature Aging 1: 1117-26 (2021)

ひげ博士

出典:特定非営利活動法人自然免疫ネットワーク発行ニュースレター

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