第63回
皆さん、ひげ博士じゃ。イスラエルの脳神経学者であるミハル・シュワルツ先生は著書「神経免疫学革命」の中で脊椎損傷に対する治療法として、マクロファージを移入し、再生を促す治療法が紹介されているのはご存知かと思う。現在では骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)を自己移植する再生医療の臨床研究が行われておるようじゃ。この脊椎損傷の治療研究にLPSが応用されている報告があるので紹介しようかのう。
Hashemizadehらはラット脊椎損傷モデルにLPSを腹腔内注射すると、損傷部にマクロファージ浸潤増加、炎症抑制、神経保護作用の亢進によりBM-MSC移植の治療効果が高まることを報告している1)。我々の研究でも報告しているが、LPSは使い方によっては抗炎症、創傷治癒作用が得られるのじゃな。
ところで、この論文である興味深い一文に、『脊椎損傷後の幹細胞移植による神経保護および修復効果は、細胞置換よりもむしろ栄養因子やサイトカインの放出による効果』と記述されておる。つまり、幹細胞の神経再生作用というより、抗炎症や神経保護作用が重要なのじゃな。そうならばじゃ、認知症モデルでLPSの経口摂取での抗炎症、神経保護作用があるのじゃから2)、脊椎損傷に対しても安全で、簡単に治療するにもLPSの経口摂取が良さそうじゃのう。
1): Front. Cell. Neurosci., 2022 https://doi.org/10.3389/fncel.2022.993019
2): Front. Immunol., 2021 https://doi.org/10.3389/fimmu.2021.650176
出典:特定非営利活動法人自然免疫ネットワーク発行ニュースレター
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