自然免疫応用技研株式会社

ひげ博士の最新免疫学講座

かげ

第61回

好中球の話
(2022年12月 No.61より)

皆さん、ひげ博士じゃ。細菌やウイルスの感染は自然免疫が最初に防いでいるのはご存知だと思う。自然免疫でこれらの病原体を排除している重要な細胞として、マクロファージとならび、好中球(多形核白血球)がよく知られておる。好中球は血液中の白血球の半分以上を占める細胞で、細菌の侵入時には活性酸素や殺菌タンパク質を出したり、自分のDNAを網状の糸にして放出して細菌をトラップ(Neutrophil extracellular traps: NETs)したり、激しい抵抗で体を守る最前線の部隊じゃな。

さて、我々は齢をとると感染症に罹りやすくなるが、その一つの理由として好中球の働きの低下があげられておる。今回、高齢マウスで好中球のどの能力が低下しているか詳しく解析した論文があるので、紹介しよう(1)。

生後2ヶ月の若齢マウス(人で10歳相当)と24ヶ月の老齢マウス(人で70歳相当)の好中球を比較すると、細菌(大腸菌)に対する殺傷力が低下しておるが、①C5a(炎症部位に生じる好中球を集積させるタンパク質)に対応する活性酸素種(ROS)の産生低下、②オプソニン化(抗体処理によって貪食されやすくなっている)ザイモザンや大腸菌に対する貪食細胞率の低下、③黄色ブドウ球菌に対するNETsの減少が起こっているようじゃ。一方で、FMLP (細菌由来の好中球遊走ペプチド)への遊走能や、大腸菌に対するNETs量は変化していないなど老化による影響が見られないこともあるのじゃ。まあ、感染時には、好中球も自然免疫の大事な担い手の一つなので、その若返りも必要なようじゃな。

(1) Front. Immunol., 24 August 2022. “Age-related decline in the resistance of mice to bacterial infection and in LPS/TLR4 pathway-dependent neutrophil responses”.

ひげ博士

出典:特定非営利活動法人自然免疫ネットワーク発行ニュースレター

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