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LPSの基礎知識

(11)LPSは、体内投与と経口・経皮投与で作用が異なる

食品や化粧品で粘性やゲル化のために使われているキサンタンガムをご存じでしょうか。これはキサントモナス・カンペストリスというグラム陰性細菌が作る天然多糖です。ドレッシングやソースのとろみ付けにも使われるし、化粧品や歯磨にも使われています。

ところで、グラム陰性細菌であるキサントモナスが作るキサンタンガムにはLPSが含まれています。LPSと聞けば炎症と結びつける人がまだ多いのですが、長い経験によってキサンタンガムの安全性が裏付けられていることは、キサンタンガムに含まれるLPSの安全性の証拠でもあります。

キサントモナスLPSだって、血液に直接注入すると炎症反応を起こします。ではなぜLPSを含むキサンタンガムは安全と言えるのでしょうか?それは、食べる、塗るにおいて、LPSに毒性も炎症誘導性もないからです。そのことについてご説明しましょう。

体内の細胞と、皮膚や消化管の細胞はLPSに対する応答性が違う

上表は、血中モノサイト(体内のマクロファージ)と腸管マクロファージ(消化管のマクロファージ)の性格を比較したものです(*1)。腸管マクロファージは、LPSに反応するレセプターTLR4を持っていますが、活性酸素やサイトカインの産生がありません。この表にはありませんが、皮膚のランゲルハンス細胞も、体内の樹状細胞と違って、LPSに応答したサイトカイン産生はありません(*2)。つまり、体内の細胞と皮膚や消化管の細胞はLPSに対する応答性が違うのです。消化管や皮膚は環境細菌や常在細菌が居るのが当たり前の場所ですから、細菌成分で炎症を起こしません。LPSの注射で起こる現象が、食べても起こると考えるのは間違いなのです。キサンタンガムがその最もわかりやすい例というわけです。

(*1)Intestinal macrophages and response to microbial encroachment, Mucosal Immunology 4 (1): 31-42 (2011)
(*2)Differential Expression and Function of Toll-like Receptors in Langerhans Cells: Comparison with Splenic Dendritic Cells, J Invest Dermatol 122: 95-102 (2004)

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