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LPSの基礎知識

(8)インフルエンザウイルスとLPSの相互作用

LPSは、インフルエンザAウイルスに物理的に結合し、ウイルスを不活化することがわかっています。(*1)

共生細菌が宿主の免疫系と相互作用して、ウイルスを排除していることが以前から報告されていました(*2)。擬人的な表現になりますが、宿主の健康を脅かすウイルス感染は、宿主と生死を共にしている腸内細菌等にとって、有難くない侵入者なので、宿主と協力して戦うというわけです。しかし、共生細菌がウイルスに直接作用するかどうかはわかっていませんでした。

これについて、Bandoroらは、腸内細菌がインフルエンザAウイルスの安定性を大幅に低下させるということを報告しました。さらに、その効果は、生きた細菌でなくても、グラム陰性細菌由来のLPSで得られることがわかったのです(*1)。

LPSがインフルエンザウイルスを不活化する効果は、37℃以上で顕著になります。これは温度が高くなることによって、LPS結合部位が露出されるようにウイルスの構造が変わるからではないかと著者らは言っています。この論文では、LPSとインフルエンザH1N1 PR8ウイルスを37℃でインキュベートすると、ウイルスの形態が顕著に変わることが示されています。

LPSはウイルス外膜に結合し変形させる


※*1のオープンジャーナル文献のFig5から抜粋
水(コントロール)またはLPSのいずれかを、37°Cで1時間インキュベートした後のH1N1 PR8の透過型電子顕微鏡写真。4,800および49,000の倍率で撮影。黒矢印はLPS、白枠で囲んだ黒矢印はウイルス外膜。黒バー:1 mm、白バー:100 nm。

著者らは、本知見が呼吸器系感染の予防や治療の開発につながるのではないかとし、また家禽や豚養殖で抗生物質を使いすぎることは、抗生物質耐性菌を増やすだけでなく、ウイルス感染のリスクをも上げると警鐘をならしています。

(*1)Bacterial Lipopolysaccharide Destabilizes Influenza Viruses
American Society for Microbiology, September/October 2017 Volume 2 Issue 5 e00267-17 (2017)
https://msphere.asm.org/content/2/5/e00267-17

(*2)Transkingdom Control of Microbiota Diurnal Oscillations Promotes Metabolic Homeostasis Cell, 159: 514–529 (2014)

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