LPSは、ケラチノサイトのオートファジーと、それによって制御されるターンオーバーを活発化します。
「皮膚の構造」の項で述べたように、表皮では、最下部で生まれた新しいケラチノサイトが、形態を変えつつ上に押し上げられていき、最上部で古くなると「垢」となって剥がれ落ちます。表皮の細胞が全て入れ替わることをターンオーバーと呼び、健康な肌では、1カ月程度で入れ替わります。ターンオーバーが正常に行われるためには、ケラチノサイトが正しく形態を変えていくこと、すなわち分化していくことが重要です。このケラチノサイトの分化には「オートファジー(Autophagy)」という仕組みが深くかかわっています。オートファジーの研究は、2016年のノーベル医学・生理学賞に輝きましたが、オートファジーとは、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つです。ケラチノサイトでは、細胞の内部をオートファジーしながら、変化させていくのです。ケラチノサイトでのオートファジーは、ターンオーバーのほか、メラニンの分解や感染防御にも関与します(*1)。
ところで、LPSはマクロファージやケラチノサイトのオートファジーを促進することがわかっています(*2, 3)。下図では、ヒトのケラチノサイト細胞株に、ある種のLPSを作用させると、オートファジーのマーカーであるLC3の発現量が上がることが示されています。このことから、肌にLPSを作用させることが、表皮のターンオーバー促進にも寄与すると考えられます。
ケラチノサイト(HaCaT)を、無処理(左)、または、LPS(Porphyromonas gingivalis 由来、10μg/ml)で24時間処理して(右)、細胞の核とオートファジーマーカーであるLC3に対するそれぞれの蛍光抗体で染めた結果。
LPSで処理することにより、オートファジーが起こっていることがわかる。 青の蛍光:核、緑の蛍光:LC3
写真は、BMC Cell Biology 19:18 (2018)から抜粋
(*1)The signaling involved in autophagy machinery in keratinocytes and therapeutic approaches for skin diseases, Oncotarget 7 (31): 50682-50697 (2016)
(*2)Toll-like Receptor 4 Is a Sensor for Autophagy Associated with Innate Immunity, Immunity 27: 135-144 (2007)
(*3)Lipopolysaccharide induces bacterial autophagy in epithelial keratinocytes of the gingival sulcus, BMC Cell Biology 19:18 (2018)
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