コロナウイルスとは、ウイルスのエンベロープ(表皮)に王冠(コロナ)のような突起(スパイク)があるウイルスです。新型コロナウイルスでは、このコロナ様スパイクが宿主細胞のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合してウイルスのRNAゲノムを宿主細胞内に注入します(*1)。
人に感染するコロナウイルスは7種類が知られており、うち4種類は、上気道(鼻、口、咽頭)に感染する普通の風邪ウイルスです。残りの3種(SARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2:2019年新型コロナウイルス)は、いずれもpostive-strand RNAをゲノムに持つβ-コロナウイルスですが、下気道(気管、気管支、肺)に感染して、極めて重篤な症状を起こす場合があります(*2、*3)。
さて、この3種のウイルス感染では、肺で過剰炎症が起こり、多臓器不全に至って死亡するケースが報告されています。このとき、免疫細胞がウイルスと戦うために作るサイトカインが、制御不能となって放出され続ける「サイトカインストーム」が起こり、自分の細胞まで傷づけてしまう現象が起こっています(*4)。
サイトカインストームは感染者全員に起こるわけではありません。今回の新型コロナウイルスでも、およそ8割は軽症で経過。感染したと気づかないうちに抗体ができている人も少なからずいます。
サイトカインストームが起こる人と起こらない人がいるのはなぜか、どういう人に起こるのか、なぜβ-コロナウイルスで起こるのか、残念ながらまだわかっていません。ただ、サイトカインストームは高齢者や基礎疾患のある人で起こりやすいことが経験的にわかっています。このことは、免疫力が健全であることが、サイトカインストームを起こさないために重要であることを示唆しています。
さらに、サイトカインストームが起こった際であっても、ステロイドで免疫を完全に抑えてしまうと、タイミングによってはウイルスの増殖を許し病状の悪化を招くことが報告されています(*5)。炎症の暴走は、サイトカインストームのリーディングサイトカインをブロックする等の方法で止めなければなりませんが、基本的な免疫力を弱めてはいけないのです。
基本的な免疫力を維持するために、乳酸菌やキノコやLPSといった食品は役立ちます。これらの食品成分は消化管粘膜の免疫細胞を活性化させますが、それによって炎症を悪化させる作用はなく、継続して摂取して問題はありません。
(*1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とサイトカインストーム-炎症病態からみた治療法の選択 医学のあゆみ 273(8): 680-690 (2020)
(*2)COVID-19, Cytokines and Immunosuppression: What Can We Learn From Severe Acute Respiratory Syndrome? Clin Exp Rheumatol 38(2):337-342 (2020).
(*3)Nervous System Involvement After Infection With COVID-19 and Other Coronaviruses. Brain Behav Immun doi: 10.1016/j.bbi.2020.03.031 (2020).
(*4)Pathogenic human coronavirus infections: causes and consequences of cytokine storm and immunopathology, Semin Immunopathol 39:529–539 (2017)
(*5)The use of corticosteroid as treatment in SARS was associated with adverse outcomes: a retrospective cohort study. J Infect 51(2):98–102 (2005)
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