LPSは、口から入っても、皮膚についても毒性がなく安全な物質です。動物実験で調べると、LPSを1日に、体重1㎏あたり10μg程度与えると、病気の予防改善などの効果が見られますが、その数万倍を食べさせても毒性は見られません(*1)(*2)。土壌や野菜についているLPS。腸内にもあるLPS。腸内の細胞や皮膚の細胞にとって、LPSがあることが普通の状態で不足するとむしろ免疫が低下します。
ただし、LPSを血液中に注射すると、強い炎症が起こります。血液の中の免疫細胞は、LPSと出会うと、入るべからざるところに病原菌が居ると捉えて、排除のための炎症を起こすのです。LPS研究の歴史の中で、この血液中での炎症作用が先に知られたため、LPSにはエンドトキシン(内毒素)という別名があるくらいです。
ネットで検索してLPSが毒だという記載がある場合、それはLPSを注射した実験、あるいは感染で体内に持ち込まれた場合です。経口・経皮の自然摂取でLPSに毒性はありません。日常的に口にしている食品でも、注射すると危険な物質はたくさんありますが、LPSも注射する物質ではないのです。
近年、特に先進国でアレルギー疾患が増えていることについて、衛生環境が整うことにより細菌成分、とりわけLPSの自然摂取が減ったことが原因だということがわかってきました(*3)。このように、生活環境や食生活が変わることで知らないうち摂取量が減り、原因不明の病気が新たに生まれてくる場合があります。例えば、ヨーロッパの大航海時代には、長い船旅で野菜や果物由来のビタミンCの摂取が不足して壊血病という病気が生まれ、日本では玄米食から白米色になった江戸時代後期からビタミンB1が不足して脚気という病気が生まれました。当時、人々はビタミンという物質の存在を知らないため、原因の究明にはずいぶん時間がかかりました。LPSについては、物質としては1892年に発見されていたものの、その有用性が知られていませんでしたから、まさかこの物質の不足によってアレルギーが起こるなど思いもよらなかったことです。この点、LPSの有用性の認知はビタミンの発見とよく似た経緯を持っています。
さて、ビタミンには次のような定義があります。
①生物の生存・生育に必須な栄養素で、不足すると疾病や成長障害が起こる。
②体内で作ることができないので、外部から取り込む必要がある。
③炭水化物・タンパク質・脂質以外の有機化合物である。
LPSはこうしたビタミンの定義にも実はぴったりあてはまります。この点からも、LPSは「免疫のビタミン」とも言える物質なのです。
(*1)Utility and safety of LPS-based fermented flour extract as a macrophage activator, Anticancer Research 29: 859-864 (2009)
(*2)Subchronic (90-day) toxicity assessment of Somacy-FP100, a lipopolysaccharide-containing fermented wheat flour extract from Pantoea agglomerans, Journal of Applied toxicology DOI: 10.1002/jat.3987 (2020)
(*3) Environmental exposure to endotoxin and its relation to asthma in school-age children, The New England Journal of Medicine 347 (12): 869-877 (2002)
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