私たちが食事をすると、一過性に血糖値があがります。これを元に戻しているのがインスリンです。すい臓の膵ランゲルハンス島に存在する膵β細胞から分泌されます。
インスリンの役割は、筋肉細胞や脂肪細胞に作用して、それらの細胞が糖を取り込むようにすることです。つまりインスリンは、食事によって摂取され、一旦血液の中に入った糖を、細胞に取り込ませ、エネルギーとして使わせる、ことを促すホルモンです。またインスリンは肝細胞での糖新生を抑制し、逆に糖をグリコーゲンとして保存することを促進することで、血糖値が高くなり過ぎないように調節します。こうして、食後しばらくすると、血糖値は通常レベルに戻るのです。
しかし、すい臓からのインスリンの出が悪くなったり、インスリンの作用を受ける細胞側でインスリン受容体の感受性が落ちたりすると、糖が細胞に移行せず、血糖値がずっと高いままになります。血糖値が高いと、色々なたんぱく質に糖が結びついて変性・劣化します。これが糖尿病で、糖尿病がさらに様々な病気につながっていくことが知られています。従って血糖値の調節が、私たちの健康にとても重要であることがわかります。
さて、近年、血糖値を制御しているのはインスリンだけではないことがわかってきました(*1)。食事によって糖が腸内に送り込まれると、腸内細菌の分布が変わります。具体的には、小腸内で腸内細菌科のグラム陰性細菌が一過性に増加します。その結果、生理的な現象としてグラム陰性細菌由来のLPSが、微量に腸管から出て門脈(消化管等から肝臓につながる静脈)に入ります。こうして体内に入るLPSは炎症を起こすと言われてきましたが、実は門脈の免疫細胞や、脂肪組織マクロファージから炎症を抑制するIL-10を誘導します。そしてこのIL-10はインスリンと協働して、肝細胞での糖新生を抑制します。このように、腸内細菌由来のLPSが血糖値(糖の代謝)を正常に保つ事に深く関わっているのです。
(*1)Insulin- and Lipopolysaccharide-Mediated Signaling in Adipose Tissue Macrophages Regulates Postprandial Glycemia through Akt-mTOR Activation.
Molecular Cell 79: 1–11 (2020)
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