ここでは、炎症について考えてみます。
一般に「炎症」という言葉は、悪いものということで使われます。けれども、炎症には「生理的炎症」と「病理的炎症」があります。言ってみれば、「良い炎症」と「悪い炎症」があるということです。
体の中に、排除すべき問題が起こると、免疫細胞が動員されて正常に戻す活動に当たります。そのため、傷や感染など、問題が起こった周辺に血流が流れ込み、腫れや赤み、痛み、発熱が起こります。これが炎症です。すなわち、炎症というのは、問題の排除・修復のプロセスの一部なのです。
病原体との闘い、組織の修復、体のメンテナンスにおいて、必要欠くべからざる役割を担っている炎症。これは「生理的炎症」と呼ぶべきものです。
一方、この「生理的炎症」が所定の段階で収まらないと「病理的炎症」に発展します。「病理的炎症」は慢性炎症といっても良いでしょう。この「病理的炎症」は、肥満や糖尿病や認知症など現代に蔓延している健康問題の元となります。
さて、厳密に言えば、炎症には「良い炎症」と「悪い炎症」があるにしても、一般的には「悪い炎症」の意味で「炎症」という言葉を使うようになっています。ほぼそれで日常会話は通じます。
ただし、「良い炎症」と「悪い炎症」を区別しないと、免疫について考え始めたときに混乱が生じます。「免疫が活性化しすぎると(悪い)炎症が起こるのではないか?」という疑問に突きあたってしまうのです。免疫が活性化されるということは、必要なときに速やかに「良い炎症」が起こり、仕事が終わると速やかに収束するということです。「悪い炎症」に発展するというのは、むしろ免疫が不活性になっていて、例えば抑制担当の免疫細胞が働かないとか、逆に抑制担当の免疫細胞が働きすぎて効果的な排除ができずにもたもたするとか、そういうことなのです。
イスラエルの脳神経学者であるミハル・シュワルツは著書「神経免疫学革命」の中で「抗炎症薬では脳疾患を治療できない。免疫応答全体を無差別に止めるような薬を使うと、治癒に欠かせない生理的炎症がなくなるのである。」と述べており、「生理的炎症=良い炎症」を誘導することが、認知症やうつ病といった脳疾患の治療に有効であることを示しています(*1)。
(*1)神経免疫学革命―脳医療の知られざる最前線―(ミハル・シュワルツ&アナット・ロンドン著、早川書房)
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