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免疫について

(9)ミトコンドリアとマクロファージ

ミトコンドリアは、細胞の中にある小器官で、主たる機能がアデノシン三リン酸(ATP)の生産です。ATPは加水分解される際にエネルギーを放出するので、エネルギーの元であり、そのATPを生産するミトコンドリアは、細胞の生存や働きになくてはならないものです。特に脳や心臓などエネルギー消費が激しい組織の細胞では、常にミトコンドリアをフレッシュに維持することが重要です。

細胞内では、機能が低下したミトコンドリアは分解され、これを補って新しいミトコンドリアが作られます。近年、このミトコンドリアの代謝に、マクロファージが重要な役割を果たすことが明らかになっています。

Nicolas-Avilaらは、マウス心臓でマクロファージを欠損させると心室の収縮力が低下すること、このとき心筋内に、機能の低下した異常ミトコンドリアが増えていることを見出しました(*1)。つまり、マクロファージが居ないと、エネルギーを供給しているミトコンドリアに異常が起こることがわかったのです。

このメカニズムを探った所、心筋細胞内の古いミトコンドリアはオートファジー(細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つ)によってリサイクルされるか細胞外に排出されていること、そして細胞外に排出された古いミトコンドリアはマクロファージの貪食によって分解されていることが明らかとなりました。従って、マクロファージが居ないと、細胞外の古いミトコンドリアが分解されないままに溜まってしまうのです。

さらに古いミトコンドリアの細胞外蓄積が亢進すると、細胞内のオートファジーも抑制され、結果として細胞内の新しい正常なミトコンドリアが減ってしまうのです。このことが、心室の収縮力低下に関係していきます。

この研究から、マクロファージがミトコンドリアの代謝を調節する役割を担っていること、ひいてはエネルギーの供給にも係わっていることがわかりました。

(*1)A Network of Macrophages Supports Mitochondrial Homeostasis in the Heart. Cell 183: 1-16 (2020)

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