LPS細胞実験
ヒアルロン酸は、N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸の二糖が交互に結合した高分子多糖で, 哺乳動物の結合組織に広く存在するグリコサミノグリカンのひとつです。分子量が107Daにも及ぶ高分子物質で、皮膚、血管、関節、眼球硝子体などに広く分布し、その高い水和能から、生体内で細胞間の水分保持や潤滑・緩衝作用を担っています。
皮膚のヒアルロン酸は生体内ヒアルロン酸の50%を占めますが、加齢により減少し、このことが皮膚の乾燥、弾力の低下、シワの発生につながります。皮膚のヒアルロン酸を補う目的で、ヒアルロン酸の外用や経口投与がなされますが、高分子のヒアルロン酸はほとんど経皮吸収されず、消化管では分解されてしまうため、十分な効果は期待できません。ヒアルロン酸を増やすためには、生体内でヒアルロン酸を作らせることが必要なのです。
LPSで刺激したマクロファージから分泌される因子が
線維芽細胞の増殖・ヒアルロン酸合成を高める
皮膚のヒアルロン酸は、真皮の線維芽細胞や表皮のケラチノサイトで作られます。ところで、皮膚の免疫担当細胞であるランゲルハンス細胞やマクロファージ細胞はLPSで刺激を受けると、線維芽細胞の増殖を促進する因子を分泌し、ヒアルロン酸の合成も促進する可能性があります。そこで、本試験では、LPSで刺激したマクロファージ細胞の培養液を線維芽細胞に加えたときの、線維芽細胞でのヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現と、産生されたヒアルロン酸の量を調べました。尚、ヒアルロン酸合成酵素には3種類(HAS1、HAS2、HAS3)あることが知られていますが、線維芽細胞では主にHAS2が発現することがわかっているため、ここではHAS2遺伝子の発現を調べています。
LPSで刺激したマクロファージから分泌される因子が
線維芽細胞のヒアルロン酸合成を3倍高める
THP-1細胞(ヒトマクロファージ細胞株)をLPS(LPS濃度:1μg/ml、LPSとしてRiB-CL001を使用)で10時間刺激した後、その培養上澄をNB1RGB(ヒト線維芽細胞株)に加えました。4時間後に、NB1RGBを回収し、HAS2遺伝子の発現をRT-PCR法にて調べました。
その結果、通常の培養を行ったNB1RGB(コントロール)に比較し、LPSで刺激したTHP-1の培養上澄を加えたNB1RGBでのHAS2発現量は3.6倍となりました。尚、NB1RGBに、LPS刺激をしないTHP-1の培養液を加えた場合には、全く影響はありませんでした。一方、NB1RGBに直接LPSを加えた場合には、1.6倍となり、わずかながら、LPSが直接的にNB1RGBに作用してHAS2遺伝子の発現を高めることも示されました。このことから、LPSが、主にマクロファージの活性化を解して、線維芽細胞のヒアルロン酸合成能力を高めることが示されました。
LPSで刺激したマクロファージから分泌される因子が
線維芽細胞のヒアルロン酸合成を高める
続いて、LPSが実際に線維芽細胞のヒアルロン酸合成を高めるかどうかを調べました。先の実験と同様に、THP-1細胞をLPS(LPS濃度:1μg/ml、LPSとしてSomacy-CL001WSを使用)で10時間刺激した後、その培養上澄をNB1RGBに加えました。12時間後に、NB1RGBの培養液中のヒアルロン酸量をELISA法で調べました。その結果、通常の培養を行ったNB1RGB(コントロール)に比較し、LPSで刺激したTHP-1の培養上澄を加えたNB1RGBでは、培養液中のヒアルロン酸量は約2倍となりました。尚、NB1RGBに、LPS刺激をしないTHP-1の培養液を加えた場合には、ほとんど差はありませんでした。また、この実験では、比較としてNB1RGBにブタプラセンタ1%を加えた場合、およびブタプラセンタ1%で刺激したTHP-1の培養液を加えた場合についても調べましたが、統計的な差はありませんでした。このことから、LPSが、マクロファージの活性化を介して、線維芽細胞のヒアルロン酸合成量を高めること、またプラセンタではこの作用がないことが示されました。
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