LPS細胞実験
現在のスキンケア領域における一つの課題は、「敏感肌」すなわち、化粧品使用時に「ヒリヒリ」する、「かゆみを感じる」などの感覚を持つ人が増えていることです。「敏感肌」には多様なタイプがありますが、一つの要因として、皮膚のバリア機能の低下があげられます。
そこでここでは、LPSがケラチノサイトのバリア機能改善に及ぼす効果を調べました。
ヒトケラチノサイト細胞株HaCaTの培養液中に1μg/mLのLPSpv(Pantoea vagans由来LPS)を添加した結果、4日目において、コントロール群に比べ細胞数が有意に増加しました(図1)。このことから、LPSpvはケラチノサイトの増殖を促進することで、表皮組織の構造をタイトにし、表皮のバリア機能を高めることが考えられます。
図1:HaCaTでの増殖促進
WST-1 細胞計測試薬使用。 データは独立した3回の試験の平均値と標準偏差(SD)を示す。統計解析はt検定で行った。**:P<0.01
次に、HaCaTを100および1000ng/mLのLPSpvで4時間または24時間刺激したのち、バリア機能に関する因子の遺伝子発現をRT-PCRで解析しました。
LPSpv刺激後24時間後に、角質層のバリア機能に関連する遺伝子であるフィラグリン(Filaggrim)およびフィブロネクチン(Fibronectin)の遺伝子が有意に増加しました。また、顆粒層でのタイトジャンクションに関連する、クラウディン(Claudin1)、オクルディン(Occldin)、ゾヌラオクルデン(Zonula occludens1:ZO-1)の遺伝子発現を解析したところ、刺激後4時間後にクラウディンの遺伝子発現が有意に高まることが示されました。ただしオクルディンとZO-1の変化は刺激4時間後でも24時間後でも見られませんでした(図2)。
図2:HaCaTでの遺伝子発現
HaCaT 細胞をLPSpv (100 or 1000 ng/mL) で 4 または 24 時間刺激し、相対的な mRNA 発現量を解析した。データはβグルクロニダーゼ (GUSB)の発現量で補正した。データは独立した3回の試験の平均値と標準偏差(SD)を示す。統計解析はTukey’s /ANOVA で行った。**:P<0.01
遺伝子発現解析の結果から、LPSが、過剰な炎症を起こすことなくフィラグリンやフィブロネクチンによる角質層バリアと顆粒層でのタイトジャンクションバリアの二つのバリア機能を高め、敏感肌を改善させる可能性が示唆されました。尚、敏感肌の方がLPS配合ローションを使用した場合の改善効果についても確認されています(研究レポート:敏感肌の改善)。
以上の結果は、2020年開催のIFSCC(国際化粧品技術者会連盟)大会で発表されています。
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