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かげ

─1987年12月21日 毎日新聞記事─

重要な免疫ホルモン「サイモシンβ4」大量生産に成功

詳しい働きがナゾに包まれていた重要な免疫ホルモンの遺伝子を、帝京大生物工学センターの杣(そま)源一郎助教授、辻良明助手らのグループが分離、遺伝子工学の手法を用いてホルモンの大量生産に成功した。このホルモンはウイルスなどの感染から体を守る免疫細胞の生産に関係しており、免疫細胞をターゲットにしているエイズウイルスや、がんに対する効果も期待される。

がんやエイズに効果期待

遺伝子工学の手法で

帝京大グループ

ウイルスなどの外敵が人間の体の中に入ってくると、マクロファージ(大食細胞)や、Tリンパ球、Bリンパ球などの免疫系が協力し合って外敵をやっつける。この時、インターフェロンやインターロイキンをはじめ、さまざまな免疫ホルモンが分泌され、免疫細胞を成熟させたり、増殖させたりするのに重要な役割を果たしている。

研究グループが分離したのは、このようなホルモンの仲間で、サイモシンβ4と呼ばれるものの遺伝子。未熟な免疫担当細胞の分化、つまり成熟して特定の働きを持つようになる過程に関係する遺伝子として見つけ出した。

サイモシンは、胸腺と呼ばれる器官が分泌する一群のホルモンで、未熟なTリンパ球を成熟させる働きがあると考えられている。β4以外にもα1など数種類あり、免疫疾患の治療薬としての期待も大きい。しかし、胸腺からこのホルモンを取り出すのは難しく、純粋なものを大量に生産することが困難だった。このため、治療薬として実用化できず、細かい機能も分かっていない。

そこで研究グループは、サイモシンβ4の遺伝子を大腸菌に組み込んでホルモンを生産させてみた。この結果、非常に生産効率がよく、簡単な精製で純粋なホルモンを得ることができた。サイモシンβ4は分子量約五千で、インターフェロンなどに比べ小さいペプチドだ。

さらに、サイモシンβ4と、抗ガン作用のあるTNF(腫瘍壊死因子)の遺伝子をつなぐという新しい試みを実施、二つがつながった全く新しいたんぱく質を作ることに成功した。このたんぱく質は、簡単に切り離してサイモシンとTNFに分けることもできる。

研究グループは「分化に関係のあるサイモシンβ4とがん細胞を殺すTNFをくっつけたたんぱく質は、さらに強い抗がん作用があるかも知れない」と期待する。また、サイモシンは、Tリンパ球をねらいうちにして免疫力を低めるエイズにも効果があると期待されており、「今後は実際の機能を確かめたい」という。

今週のことば Tリンパ球

体の中に外敵が侵入してくると、免疫系が協力し合って追い出しにかかる。このとき、さまざまな免疫担当細胞が働くが、ウイルス感染から体を守るのに重要な役割を果たしているのがTリンパ球。その種類もいくつかある。

例えばインフルエンザウイルスに感染すると、まずマクロファージ(大食細胞)がこれをパクッと食べ、細胞表面にウイルスのたんぱく質の一部(抗原)を出す。すると、ヘルパーT細胞がこの抗原を見分け、その情報をBリンパ球やキラーT細胞に教える。情報を受け取ったBリンパ球は、問題のウイルスだけを抑え込む抗体を大量に生産するようになる一方、キラーT細胞もどんどん増えてこのウイルスを攻撃する---という仕組みだ。

Tリンパ球のTは胸腺(Thymus)中で分化することから名づけられた。最近では、Tリンパ球がどうやって「自分」と「自分でない外敵」を見分けているのかが注目されている。

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