─2010年3月24日 日本経済新聞─
事業家準備、進めやすく
微生物応用 中小食品と連携
香川大学発ベンチャーの自然免疫応用技研(高松市、河内千恵社長)は食品関連の中小などと共同研究を進める「技術研究組合」を立ち上げた。昨年できた制度を活用し、企業間の連携を強化する。共同研究の総事業費は10年で16億円の見通し。地域の食品会社や関連の研究機関にも幅広く参加を呼びかけ、応用技研が進めている微生物の研究を生かした新事業立ち上げを加速する。
自然免疫応用技研は香川大・徳島文理大学院教授の杣(そま)源一郎氏らの研究を事業化するため2006年に発足した。小麦に共生する「パントエア菌」と呼ぶ微生物に含まれる糖脂質が人や魚、鶏の免疫力を高める効果に着目。家畜用の飼料や化粧品、飲料などを開発している。
このほど設立した「自然免疫制御技術研究組合」には、食品企画のタカ企画(東京・台東、高松智社長)、食品加工などの東洋発酵(愛知県大府市、木村彰彦社長)のほか、非営利組織(NPO)の環瀬戸内自然免疫ネットワーク(高松市)も参加。前身の任意団体に加盟していた約60の企業や団体も順次組合に合流する。共同研究には香川大学も加わる予定。
組合の事業費は参加メンバーの賦課金などでまかない、2011年度までに2億円を集める計画。研究の成果は組合で管理し、外部企業との提携なども組合名義で行う。事業化に近づいた研究テーマは、組合から切り出して関連する企業の出資を募り、事業会社にすることを検討する。
パントエア菌の糖脂質を含む飼料には、養殖魚の生存率を高めたり、鶏の発育を促進したりする効果があるという。組合では、この効果を活用した新たな飼料や食品の開発を進めるほか、パントエア菌以外の微生物を使った製品の開発にも取り組む。
四国はしょうゆやみそなど発酵製品の生産地で、食品への微生物の活用に積極的な企業が多い。そうした企業にも参加を促し、地域の産業活性化につなげる。
技術研究組合は大学などの研究成果の事業化に役立つとされる新制度。これまでは大企業の利用が中心で中小の活用は珍しい。
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技術研究組合
大学発VBを活性化
研究開発型の大学発ベンチャー(VB)の多くが苦境に直面している。特定分野の技術には強くても、実際の製品に落とし込むノウハウや営業力が不足しているためだ。ノウハウを持つ企業と連携するのが課題克服の近道で、「技術研究組合」はそのためのツールとして活用が広がりそうだ。
まず組合名義で特許などの権利取得や商談を進められるため、将来のトラブルにつながりがちな共同研究の成果についての権利関係を明確にできる。大学発VBをバックアップする母体の大学や研究機関も組合に参加可能。特定の研究テーマを切り出して事業会社をつくるのも簡単だ。
大学発VBは2008年度だけで162社の廃業が明らかになった。この数は同年度の新規設立数の3倍に上り、研究に没頭しすぎて事業家による投資回収が遅れたケースが目立つ。技術研究組合は収益重視の一般企業と組合の中で役割を分担しながら成長を目指せるため、研究重視のVBでも使いやすい内容になっている。
▼技術研究組合 2009年6月の法改正で始まった制度。前身の「鉱工業技術研究組合」の設立条件などを大幅に緩和した。すべての産業技術を対象に、2以上の法人などが定款と研究の実施計画書を作り、主務大臣の認可を受ければ設立できる。法人格を持ち、契約締結や特許登録を組合名義でできるのが特徴。そのまま事業会社にも移行でき、事業家の準備組織に利用しやすい。
自然免疫応用技研株式会社
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